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夏の冒険(上巻)

夏は心のカギを甘くするわ ご用心♪
なんてフレーズに心を燃やし「この夏はなにかあるぞ」と思って
数十回の夏を過ごしてきた。そして気づいた。
「自分から動かなきゃなにも起こらないぞ」と。

この夏、東京でお勉強会があった。しかも一泊二日。さらに家族公認。
これはありがたい。スケジュールを確認すると、夜は数時間完全フリーな時間がある。ここだ!ここで決めるんだ!

北海の荒鷲

幸いにもホテルは各自で取ることとなった。
同僚たちは研修会場に近いホテルを確保したらしい。
私は研修会場に地下鉄乗り換えなし、かつ繁華街に近いところを取った。
研修会場からは若干距離があるが大した問題ではない。

1日目の研修を終え、懇親会が開催された。私は終始そわそわしていただろう。確かに懇親会も楽しいが、さくっと切り上げ、【完全なる私の時間】が欲しかった。
ほどなくして懇親会もお開きになった。同僚たちはそれぞれのホテルへと戻っていく。ここで「私は〇〇ホテルの●号室だよ」とカードキーを渡す者がいれば、それはそれとして楽しんだだろうが、杞憂であった。
名残惜しそうな表情を作り、私もホテルに戻った。

…そこからはダッシュだった。時間は有限。明日の研修会への出席を考慮すると、今夜の夜遊びタイムリミットは24時。シンデレラタイム。この時すでに20時を過ぎている。
ホテルの浴場で一日の疲労と汗を流し、ナニが起こるかわからないので念入りに股間を洗った。シトラスだかミントだかが香る意識高い系股間。そして歯磨き、フロス。制汗スプレー(無臭)。バッグに隠してきた新しい着替えでいざ出陣。誰もホラ貝は吹いてくれない。

てくてくと歩いて(行ける距離にホテルを取った)いざ降り立つは新宿の大地。テレレーン♪ サメジマ 新宿に勃つ。

俺のビームサーベルはビンビンさ

とはいうものの、どこに行けばいいのだろうか。
事前にスマホに穴が開くほど、データ通信料に制限かけられるほど検索してきたが、迷う。選択肢が多いと、迷いも多くなるということだな。
私のような非都会在住者は、コンビニなら〇〇、ファミレスなら〇〇、スーパーなら〇〇と選択の余地がない。悩まなくてよくて幸せだな。涙。

そして3丁目に足を踏み入れた。人、ネオン、喧噪、アルコールの匂い、コロンの匂い、きわどい下着、人、人、キス、音楽、おしゃべり、人。

私をどこへ連れて行こうというのだね

音楽に合わせてなんとなく酔っぱらうのも楽しい。
そう思って、1件目を選んだ。だ、大丈夫、万札は靴下の中に隠した。
が、Googleマップで検索したお店が見つからない。お店の入り口が見つからない。ここかと思えば、通り過ぎてるし、参った。これ、特定のアイテムがないと入れないパターンか? Google万能なんじゃないのかよー。
と、若干半べそになりながら、「違ったら全力で逃げる」と覚悟を決めて入った場所が大当たり。無事エレベーターに乗り込み、目的の階層ボタンを押す。そして到着、エレベーターが開く。そしてお店の扉の前。この時、心臓かなりドキドキ。無いとは思うけど、開けた瞬間「ヤバい」と思ったら、ジャンピング土下座して帰らせてもらおう。いざ!

扉を開けると、まったりとした空間が広がっていた。店員さん2名、お客さん2名。みんなカウンターで談笑している。雰囲気はよい。
「おひとり?どうぞ~」とうながされ、カウンターへ。先客の間くらいに誘導された。歩いてきたので少し喉の渇きもあった。ハイボールを頼んだ。
このお店が初めてなこと。DJブースを期待していたこと。地方在住でめったにこっちに来れないこと。夜遊びもタイムリミットがあることなどを話した。たくさん話をしてくれたし、明朗会計だったし、2件目の提案もしてくれた。とてもいいお店だった。
そしてなによりここが新宿3丁目だと強く意識したのが、自分の性嗜好を言ってもヒかれなかったことだった。ヒかれるどころか「それならこの店かな」と提案までしてもらえたことだった。ハイボールがしょっぺぇや。

下巻へ続く

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