ビニールハウスの環境モニタリング装置を自作した話 SwitchBotでシステム組んでみた編
ビニールハウスの環境モニタリングに、以前は「あぐりログ」を使用していました。観測機本体も安く、サービス利用料(ネットワーク接続費用含む)も安く、基本的に不満は有りませんでした。今回、経年劣化によりモニタリング機器に不具合が発生した為、モニタリング機器を修理もしくは更新する必要ができました。
しかし、ここでどうせなら、モニタリングのシステムを自作してみたいという謎の思いに駆られたため、環境モニタリングのシステムを自作を始めました。とりあえず、ベースとなる機器の検討です。選択肢としては、大枠としてはRaspberry PiかM5Stack。ちょっと外してSwitchBotの中から選ぶ形になると思います。当初はCO2センサーがSwitchBotには存在しなかった為、M5Stackで作成を始めとりあえずの運用をしていましたが、2024年11月にSwitchBotでCO2センサーが販売された為、導入しやすいSwitchBotによる環境モニタリングシステムを説明したいと思います。(注 SwitchBotCO2センサーは農業用センサーでは無い為、計測範囲が400ppm~となっているので、大気よりCO2が薄くなる可能性がある農業ビニールハウスには適さないのですが、システムの構築が簡単であるため今回は使用します。)個人的には高精度のセンサーを一つ置くより、複数のセンサーで分布を見たいので私の使い方にSwitchBotは向いているのかもしれません。
使用する機器・設備
コンセント:理想としては基幹となるセンサーを置くビニールハウス中央とハウス端の2か所に有ると理想的です。
Wi-Fiルーター:電源ボタンのないコンセント、USBに接続すると即電源の入るタイプのルーター(ホームルーターや車載用ルーター)
Wi-Fiルーターの設置
ホームルーターや車載用ルーターを推奨。ポケットWi-Fiなどのバッテリー内蔵のタイプは電源が一度切れた場合、復帰に電源入れ直しが必要となるので非推奨。
車載用ルーターは高温対策がされているので、ビニールハウス環境に向いているかもしれない。カシムラ(Kashimura) SIMフリー 無線ルーター USB電源タイプ NKD-249など。
ホームルーターは5G対応のものを使用すると、モニタリング以外の利用にも高速回線を利用できる。モニタリングの為だけであれば4G回線で十分。見守りカメラもとりあえずは4Gで対応可能。注意が必要なのはホームルーターはSIMの差し替えに対応していない機種があるので、SIMを差し替えて使用する予定の方は機種の情報を確認してから購入のこと。
モニタリングには速度、通信量の両面を見てもあまり必要としない。見守りカメラのモニタリングを使用するのであれば、ある程度の速度が必要なので通常速度のプランを使用頻度に合わせて契約するべき。AmazonのRingなどデータをクラウド保存するタイプのカメラは常時通信を行うため、5G無制限タイプのホームルーターを使用する方が良いでしょう。ビニールハウスの所在地によっては、通信キャリアの電波がそもそも入らなかったりするので、事前確認はしっかり。
筆者お勧めのプラン(各プラン詳細は確認下さい)
割り切った低速使い放題プラン(速度的に見守りカメラ使用不可)
ロケットモバイル 神プラン(月額328円 200kbps 使い放題)
多少の通信はするプラン
y.u mobile シングルプラン(月額1070円 月5GB ギガ永久繰り越し スマホ修理保険付帯)
計測ケースの作成・設置
SwitchBotの温度計はマグネットが付いているのでパイプに手軽に設置ができますが、直射日光、熱伝導で正確な温度が取れません。ですので、最低限正確なデータを常にとれるように、直射日光が当たらず通風されたところで計測をするため、計測ケースを作成し設置します。筆者は以前使っていた「あぐりログ」のケースを再利用していますが、下記の書籍を参考に作成してください(ICT農業の環境制御システム製作: 自分でできる「ハウスの見える化」、ラズパイ・Arduino農業実験集)。ただし、今回は要求される部材が書籍よりも簡単なものなので、ケースの加工にしか苦労はしないと思います。
余談ですが「あぐりログ」は出来合いのものの中では比較的安いシステムなので(現在の価格は分かりませんが多少値上がりしてもそこまで高くないと思う)、お金を払ってもいい方は検討の価値あると思います。
計測ケースに必要なものは
ケース(ケース内で仕切るか別ケースで通風エリアを確保)
USBの電源
USBファン
SwitchBot ハブミニ
SwitchBot CO2センサー(通風エリアに設置)
車載ルーター(推奨)
計測ケースの配置
電源の位置に影響されると思うがハウス中央に配置するのがデータを取るうえで理想。SwitchBotハブミニと温湿度計はBluetoothで接続されているので、SwitchBotハブミニが中央にあるのは丁度良い。Bluetooth接続の到達距離は植物体の生育状況にもよるが、筆者のハウスだと茂っている状態だと25mがギリギリ。
計測ケース置かない場合
計測ケースを置かない場合は温湿度計は日陰・通風・熱が伝わらない状態のものをどこかに準備すると適正値を観測できると思いますが、そもそもSwitchBot使う時点でそこまで詳細な値を求めようともしていないので気にしなくても良いかも知れない。ただ、CO2濃度に関しては植物体の群体の中で調べないと意味がないので、おそらく電源コンセントがあるであろう比較的換気されている入り口側に置いても求めている値は得られないのでご注意下さい。
温湿度計の配置
SwitchBot温湿度計は温湿度データを本体に記録・蓄積しています。それをBluetooth接続でSwitchBotハブ(ハブミニ、ハブ2のこと)やスマホで読み取っています。各温湿度計をリアルタイムでインターネット上で確認したいのであればSwitchBotハブに接続する必要がありますが、後で過去の履歴を確認するだけであれば必ずしもSwitchBotハブに接続する必要はありません(翌朝、昨夜の温度はどこまで下がったのか見るなど)。
電源が失われた際は、SwitchBotハブが動きませんのでインターネット上ではリアルタイムの確認はできませんが(古いデータが更新されないまま残るか?未確認)、現場に行ってBluetooth接続で繋がれば温度が確認できます。
筆者のハウスでは外に外気計測用、ハウス内部入り口側に内張の中と外、奥川の内張の中と外に配置してあります。ハウス中央にSwitchBotハブミニ、ハウス入り口にSwitchBotハブ2が配置されています。50mのハウスでは上記の配置だと植物の生育状況によってはハブが2か所必要かもしれません。ただ、Bluetoothで通信できるうえ、そこまでセンサーが高くもないので置きたい場所にピンポイントにおける自由度が良い。
その他のSwitchBot機器
SwitchBot 見守りカメラ Plus 5MP
とりあえずアプリに連携して設置してみました。SDカードに録画するタイプで、読みだしたときのみ通信容量を消費します。人が映った時録画される機能があるので不審者録画も可能。夜間も撮影可。
SwitchBot 水漏れセンサー(コード付き)
貯水タンクの低水位感知に使用。コードのセンサー部分より下の推移になった場合通知が来るようにできる。意外にネット経由で通知できる低水位センサーを見たことがなかったので待っていた人が多いのではないかと思う重要アイテム。
SwitchBot スマートプラグ
水中ポンプのために使用。コンセントの抜き差しでなくボタンもしくはアプリから電源をオンにできるので便利。スケジュール稼働とタイマー稼働ができる。
SwitchBotアプリ
SwitchBotアプリで各種数値の確認や、機器の操作ができます。一元管理ができますので便利です。また、スマホの画面でウィジェットで温湿度数値やオンオフボタンなどが配置できますので、設定で使いやすくなると思います。とりあえずの確認はウィジェット、詳細はアプリでと段階的に使えるのが良い感じです。
最後に
とりあえず簡易に便利にデータを見れる様にはなったかと思います。SwitchBotはアプリがとにかく扱いやすいので便利ではあります。最低限の利用には何とかなると思います。
しかし、農業利用を前提としているものではありません。特にCO2センサーに関しては400ppm以下を見ることができませんので何となく底を打ったらCO2足りてないかなと想像するしかありません。また、他のCO2センサーでは見られる自動校正についても情報がないので、現状では作動しているのかどうかも分からないので数値じゃなくグラフで怪しい動きが無いか見るしかありません(農業ハウス内はCO2が消費され400ppmを切ることがあるが、自動校正機能が有効である場合、過去24時間の最低濃度を400ppmに設定してしまうので、計測数値がどんどん高くなっていってしまう)。
次回はデータをパソコン側で蓄積できるようにしたり、もう少しクラウドサービスを使用して便利な活用方法を検討したいと思います。