【F1 2020新車レビュー】レッドブル新型マシンRB16を徹底考察
2020年チャンピオン奪回を目指すレッドブルの新型マシンが例年より速くベールアウト。正常進化のコンサバ仕様なのか?それとも王者を目指して攻めるのか。最も注目していたマシン。さて一体どんなマシンに仕上げたのか。
■チームデータ
運営企業 :RED BULL RACING LIMITED
チーム名 :アストンマーチン・レッドブル・レーシング
シャシー :レッドブル
エンジン :ホンダ
■背景
空力の天才(鬼才?)エイドリアン・ニューウェイを擁し、圧倒的な空力によって2010~2013シーズン4連続の優勝を果たしたものの、パワーユニット規定変更の14シーズンからメルセデス、フェラーリの後塵を配するレッドブル。原因だったルノーと決別し19シーズンからホンダとのタッグを組んでの2シーズン目。昨年はホンダを搭載したことで逆に車体側の課題が明らかに。今年は王者を奪還すべく、空力モンスターレッドブルが復活の狼煙を挙げる?
■進化と変化の融合
レッドブル・レーシングのチーム代表クリスチャン・ホーナーは、20年シーズンにはメルセデスと互角に戦うことを目指しており、そのためにチームはこれまでのアプローチを変更したと明かした。
■新車(RB16)
■ファーストインプレッション
マシン後方はレッドブルがこれまで追求していた空力マシンを更に進化させ、これまで発表されたチームとは1段階違う次元に到達した印象。
そしてマシン前方は、メルセデスのコンセプトを吸収しながらも、それをも進化させてしまおうという意志を感じる。
RB16の製作にニューウェイがどれだけ関わったのかは不明ながら「メルセデスを倒す。チャンピオンを取る」そんな、強い意志と挑戦の結晶のように見える。
1、細型ノーズ採用
まず、大きな変更がノーズ全体の細さ。これまで、メルセデスだけが採用していた細いノーズを採用。ノーズを細くすることで、空気を取り込む空間を大きく出来るメリットがある。ただ、するにはするで「剛性を高めないといけない(クラッシュテストに通らないといけない)。」「取り入れた空気をきちんと整流しないといけない」と言う別の制約にさらされる。
RB16は思い切りメルセデスタイプの細型ノーズを採用。なので当然ノーズの横には、メルセデス同様に整流フィンが追加されている。
驚いたのは、細型ノーズを採用していながら、先端には複雑なエアインテークを採用している点。写真で見る限り、マウント下部を除いて穴が5つ。
昨年からある先端のインテーク・・・A
フェラーリ型のサイドトンネル型・・・B
そしてセンターには2つに分割されたインテーク・・・C
表面からはうかがい知ることはできないが、ノーズの中では相当複雑に空気を流していると思われる。細くして、さらにこれだけ複雑なことをやって剛性が保たれているのが凄い。
2、フロントウィング
フロントウィングはダミー(?)と思うほど昨年モデルのまま。これだけ見ると、フェラーリよりアウトウォッシュを弱めたように見える。きっとテストには別バージョンを持ち込むと思われます。
3、フロントサス
サスペンションに関しては…構造や形について考察するほど知識がありません。。
ノーズの変更による影響なのか、別の効果を狙ったのか。マウント位置が後ろに移動。タイヤを後ろから支える形に。
写真で見ると、昨年のサスの位置(黄色)はV字でタイヤを両サイドから支えているけれど、今年の仕様では綺麗なVではなくて後方から支える形になっていることがわかる。
バージボードあたりは昨年の最終形態とほぼ同じで、若干の修正が加えられている程度なので思想は継承。
4、サイド~後方にかけては他マシンとは攻め方が別次元
今回のRB16を見て、「エグイ!」と思ったポイントはここ。
まずは、フェラーリの19シーズンマシンSF90、20シーズンマシンSF1000、そしてレッドブルの19シーズンマシンRB15の比較。
フェラーリもその前に発表されたハースも、同様にインテーク直後を縦方向に潰してコンパクトにする思想。それはこれまでレッドブルがずっと実現していた思想だった。
そして、今年のRB16はというと
逆に、つぶれてない。
一瞬騙されそうになったけど、よく見てみると凄い。
つぶれていた部分が丸みを復活した代わりに、その他の部分が異常にタイトになっている。
まず、黄色で囲った部分。縦方向につぶれていた分を少し縦に伸ばしたことで膨らんでいる部分が極端に前後に短くなっている事に気付く。
そしてそのうえ赤で囲った部分。
まずは Ⓔ の部分から見て欲しいんだけど、文字がはっきり見える。ということは壁が垂直に立っている=上から見るとつぶれている。
そして、その後方。大きくなったHONDAの文字の「DA」くらいもはっきり見える。垂直に立っている。=上から見るとつぶれている。
これによって何を起こしたかったのか・・・水色の空間が拡大させたかったということ。
前面から大量の空気を取り入れて、しっかりとサイドに流し、ここから後ろに引き抜く。それによって大量のダウンフォースを生み出す。
他のチームとは一線を画する絞り具合で、それを実現している。
おまけ、HONDA製パワーユニット
ここまで、コンパクトに、絞り込んだマシンを作れた理由。それはひとえに設計の思想と昨年から搭載しているHONDA製パワーユニットがコンパクトかつ冷却に優れているからこそ。
昨年はHONDA製パワーユニット初搭載ということである程度のマージンをもって設計されていた部分があったが、性能を理解して極限まで攻めてきた。攻められるスペックだっということ。
■総括
20年はレギュレーションが変わらないので、どのチームも昨年の思想を踏襲しながら進歩するのが大方の予想。その中でレッドブルもそうなのか?チャレンジするのか?どちらに振るのか相当期待している部分が多かったけれど
期待通り、チャレンジしてきた。
やられました。
最悪このチャレンジが失敗に終わったとしても、レッドブルというブランドにとってチャレンジしなかったという事実は、ブランドを棄損すること以外の何物でもない。
なぜレッドブルというブランドが大金をはたいてF1にスポンサーではなくコンストラクターとして出場しているのか?
その答えは「翼を授ける」。挑戦する人に翼を授ける。というブランドを体現すること以外にないのだから。
ブランドで働く人間として、ほんとに頭が下がる。
自ら掲げたひとつのコンセプトを徹底的にやり続ける。
コンセプトからずれたことは一切やらない。
この意思こそが本当のブランドを作っていくんだ。
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