この星の君を探して【0.プロローグ】

 Ugly Duckling theorem(醜いアヒルの子の定理)というものがある。
 醜いアヒルの子とはアンデルセン童話の一つである。生まれてきたアヒルの兄弟のうち一匹だけ違う容姿の子が生まれ、自分が他と違うことに悩みを抱えるものの、成長すると白鳥であったことに気付き幸せに暮らすという話だ。
 この話は醜いアヒルの子が他と違うというところに焦点を当てているが、実際どれほどの違いがあるのだろうか。
 例えば、二本足で歩くか、これの答えはアヒルの子も醜いアヒルの子もTRUEとなる。
 犬ではない、これも両方TRUEだ。
 もちろんふざけている訳ではなく、これが醜いアヒルの子の定理なのだ。何らかの仮定に基づいて主観的に特徴量選択を行うことが本質的に必要であることを示している。
 この世には醜いアヒルの子がいくらでも存在している。それはもちろんあなただって例外でなはい。

 そんな話はいつまでも残されていくものだ。醜いアヒルの子の定理はAIを作るニューラルネットワークを考えるための要素になり、それは今でも人類の進歩の手助けになっていることだろう。今は果たして西暦何万年になったあたりか、膨大な年数を憶えている脳など持たずに私達は生きている。
 歴史の教科書を見れば、今の地球は変わったものだ。国の在り方も、生活のリズムも、人間の価値も何もかもが違う。大昔よりかはいい生活ができているのだろうが、正直幸せかと言ったらわからない。科学の発展が人の幸せ評価値と比例しないことが、今私の中で証明されてしまった。
 ふと辺りを見渡せば、そこには膨大な宇宙が広がっている。すぐ横からはスースーという寝息が聞こえ、それはまるで私を眠りにでも誘うかのように優しく規則的に語りかけてくる。
 宇宙浴、とでも言うのだろうか。今この宇宙は私の独り占め、いや私達の二人占めだ。
 この永久の空間に放り出されたような感覚は、独占欲と同時に不安が芽生える。いつまでも続いてほしいと思いながらも、心のどこかでは早く終わってほしいと願っていた。
 やがてその願いが叶ってしまうことを、知りもしないで。

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