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読書記録 『白夜行』東野圭吾
【あらすじ】 『白夜行』は、幼い頃に起きた事件をきっかけに、
運命に翻弄されながらも決して交わることのない男女の生涯を描いた
ミステリー作品です。
物語は、ある殺人事件から始まり、主人公の桐原亮司と唐沢雪穂の成長と、それに関わる人々の人生を描いていきます。
特徴的なのは、主要な二人の視点ではなく、彼らを取り巻く刑事や
周囲の人物の視点から物語が進行する点です。
事件の真相は明かされないまま、読者は登場人物たちの行動や
証言を通じて、二人の関係を推測することになります。
【感想】
物語全体を通じて、刑事・笹垣の視点が読者の案内役となります。
執念深く事件を追い続けるものの、核心にはなかなかたどり着けません。
読者もまた、彼の目を通して真実に迫ろうとするのですが、
決定的な証拠は見つからず、謎は深まるばかりです。
この構成が非常に巧妙で、笹垣の苦悩や執着が伝わるとともに、
主人公たちの本質に読者が直接触れられないもどかしさが、
物語の緊張感を生み出しています。
また、雪穂と亮司の関係があまりにも歪でありながらも、
切なく美しいものに感じられる点が印象的でした。
二人が直接的なやり取りをほとんどしないにもかかわらず、
互いを必要としていることが伝わってきます。
この独特の距離感と、事件を巡るサスペンスが絡み合い、
最後まで息をのむ展開が続きました。
東野圭吾作品の中でも屈指の名作と言われる『白夜行』ですが、
その魅力のひとつは、
読者自身が推理し、解釈する余地があることだと感じました。
読み終えたあとも余韻が残り、何度も考え直したくなるような作品です。
厚さ4cmほどある文庫本ですが、正月3が日で一気に読み終えるくらい
面白くて読む手が止まらない感覚になりました。
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