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元イさんの占いは精神的健康に役立つよという話

占い1

占い2

占い3

占い4

【この文章から得られるもの】
占いをまったく信じていなかった筆者でも元イさん(@BeVi56174065)タロット占いの効果は大いに認めるところであった。

偏見心痛妄執まとめて灰と消えたので、とてもおすすめ


占いのレビューは3.から。それ以前は私の偏った心についてのそこそこどうでもいいお話。


1.秋深し 怨みぞ深し 非モテ道

秋深し、10月末である。
私と兄弟のように育ってきたミソジニー(女性嫌悪)思想がいよいよ大きく育ち、脳髄を圧迫しはじめていた。
このミソジニー思想というやつは小さいうちはまだ可愛げもあって、様々な活動のモチベーションになってくれる。怒りでも動けるのが人間である。しかしこの思想はうっかりすると急速に育つ。言論闘士の主張を見聞きしているうちにいつの間にか大きく育っている。
私のミソジニーはツイッター上で繰り広げられるフェミニズム論争を餌として育った。ツイッター上ではフェミニズムという思想にミサンドリー(男性嫌悪)を乗せてつぶやく人が一定数おり、しばしば男性のツイッタラーと衝突するのである。どちらの陣営も私の心中を語ってくれている気がして目が離せずにいたのである。
彼らが私の心中の何を語っていたかといえば、それは恨みであった。私はリベラル風味の家風で育ったため、フェミニズムめいた主張に理解を求められる時があった。確か兄が買ってきたゲーム雑誌の表紙を題材にしてジェンダー論が語られたこともあり、何とも言えない居心地の悪さを感じたのである。また、私は絵を描くのが好きな子どもであったから、せっかく描いた絵がフェミニズムめいた枠にはめられると、不愉快な感情が先に立った。私は家庭環境からフェミニズムへの反感を女性全体まで拡大していたのではないか。
家族の名誉のために言えば、私の女性への怨みは家庭内の方針だけが原因ではない。怨みつらみの8割は成長にしたがって獲得したものである。女性に悪口を言ったこともあれば、女性から面と向かって「死ね」と言われたことも確かあったと思う。何かの力に導かれるように私は女性との敵対関係を選んだのである。
女性たちへの名誉のためにこれも書いておくが、これまでの抗争の原因は多くの場合私にあった。思春期の特権か私は過去に恋愛方面に興味を持ち、望みの無い相手に言い寄ったこともあった。さらに言えば、友人関係にあった同級生に告白し、数少ない女友達を絶滅に追いやりもした。また、ありがたいことに女性から好意を持っていただいたこともあったが、私が無視するなり対応に下手を打つなりして関係性は絶えた。過ぎた話ではあるが、友好的であったはずの女性たちを落胆させなければ私の今の境遇も違っていたはずである。いずれにせよ、私は女性とのコミュニケーションがとれず、女性たちを逆恨みした。
かくしてネット空間の言論を追っているうちに、私の中のミソジニーはさらに大きくなっていた。

始末の悪いことに身勝手な怨みを持つ一方で、私は結婚を望んでもいた。アンビバレント。病理である。

33歳にもなれば周りから結婚を言われもするし、時には親からも話を振られる。私は正直周囲からの声をうっとうしく思っていたし、ひとたび結婚すればうるさく言われることもないだろうとも思った。かといって自分が恋愛に全く向いていないことはよくわかっている。ならばいっそ偽装結婚でもしてやろうかとも思う。もちろんこんな悪い考えは誰にも言えないし、実現する可能性が無いこともわかっている。しかし、もし実行できれば人生の大逆転である。お金を渡すなりフェアな取引ができるなら、相手の女性にとっても良い話ではないか。心のどこかで私は偽装結婚という手段に魅力を感じていた

2.タロットお願いします!


元イさんという方がいる。この名前は略称で、正しくは「元(中年彼女いない歴=年齢の既婚のアラ)イさん」となかなかに長い。私が元イさんを知ったのは、怒り渦巻くフェミニズム論争のスレッド中で元イさんのツイートが時々リツイートされていたからである。


元イさんのツイートは人の道を守っていたので、私にとっては激論の中の清涼剤であった。
名前を目にすることが多くなるにつけ、私は元イさんに関心を持った。元イさんのツイートをちょいちょいさかのぼり、質問箱を読み、noteを読むようになったとき、私は目を見張った。なんと、元イさんがタロット占いを請けおってくださっている(1回1000円~)のである。私は強い興味を持った。
その一方で私は迷った。頼もうか。いや、このサービスは一般的な人に向けたものだろうから、私のようなアレが頼んでよいものか。もしも場違いなことを言って困らせればどうする。しかし、どんな人間が頼んでもお金はお金だ。元イさんの儲けにはなろう。

私はそう思って占いをお願いした。使い慣れないたどたどしいアライグマ語で依頼をする。こころよく引き受けていただいて、まずは一安心である。

3.悶える占い前夜


「占い開始時刻の明日9時半までに何を占うのか決めておくのだ!」
と元イさんは言ってくださった。
私は占いを全く受けたことがなかったので、前日のうちにテーマを伝えた方が良いのではないかと思った。占いというとすぐに答えが出るイメージがあったけど、現実の占い師の方は何か準備がいるかもしれないと余計な心配をしたのである。


私は思いつくままに、「恋愛でどういう相手が良いかわからないので、どういう相手が向いているか調べていただきたいです」と述べた。なんとなく頭に浮かんだことをそのまま言ったのである。
すると、「もう少し制限した方が納得のいく結果が得られる」と返信が来た。例えば、「結婚相手をどこで探すのがよいか、あるいはいくつかあるどんなタイプの人なのか」とテーマを絞ると占いやすいそうである。そして、候補となる選択肢をいくつか上げた方が答えも出やすいらしい。

私は「どこを探せばよいかでお願いします」と伝えようと思った。
さて、そう言うからにはどこを探せばよいかこちらから候補を挙げなければいけない。ところが、まったく浮かんでこないのである。それもそのはず、私は生まれてこの方彼女ができたことはなく、彼女を探す努力もしたことがなかったのだった。そのため、どこを探せばよいかわかろうはずもない。かといって、あまり元イさんを待たせるわけにもいかない。追い詰められた私は「海」「山」「街中」と3つほど挙げた。しかし、これは訂正を求められた。どうも世の人が彼女さんを探す場所としては一般的ではないようである。元イ氏が挙げた候補の例は「仕事場」「趣味の活動」「マッチングアプリ」など現実的なものであった。
そうだったのか、世の人はこういうところで探しているのかー。勉強になると同時に私の背中を冷や汗が流れた。もはやこの時点で私は素人丸出しである。もしかしたら私は相当アレな占いクライアントかもしれない。私は努めて冷静な態度を取り繕うと、「では趣味の活動で」とかろうじて答えた。

元イさんは了承してくださり、「そのほか何か思いつくことがあったら何でもいいから書くのだ!」と言っていただけた。それから私は結婚相手に求める条件などを書こうとしたと思う。浮かんでこない。驚くほど浮かんでこない。この時、時刻は午後10時を回っていた。特に締め切りは設定されていないが、なるべくなら元イさんがお休みになる前に伝えておいた方が向こうも助かるのではないか。私は頭を抱えた。それでも出てこないものは出てこない。 これまで都合のいい妄想に逃げ込んで、その実結婚という人生の一大イベントをまったく真剣に考えていなかったことが明らかになったのだ。

やがて元イさんは「明日の朝までに書いておいて欲しいのだ!」と優しいメッセージをくださった。以降、先方のメッセージが続く気配はない。どうやらお休みになったようである。ツイッターのメッセージラインには私が一人残った。一人きりでつぶやく場ができれば考えもまとまるかと思ったが全然そんなことはない。私は唸ってうめいてのたうち回りながら24時を迎えた。半ばヤケになって、私は流れの止まったメッセージ欄に「結婚なんてしたくもない」と愚痴をとうとう書き捨てた。「驚くほど考えがまとまらない」とも。すると、間髪をいれず元イさんから返信が来たではないか。元イさんはまだ起きていたのである。

「どうなるのが望みなのか」と元イさんは聞いてくださった。もうこうなったらつくろうことはできない、私はとうとう自分の誰にも言わなかった妄想を口にした。「偽装結婚したいと思ってる」と。元イ氏は「あー」と少し返事に迷ったあと、「偽装結婚に必要なものでも占ってみるのだ?」と言ってくださった。私はその言葉を聞いた時、救われた気がした。

普通ならば「君そんなバカなことを考えるものではないよ。他の占いテーマでも考えなさい」と返ってくるところだ。もし偽装結婚以外のテーマを考えるよう言われたら私はその場では従うだろう。しかし、私の中の悪の心は発散されないまま残る。そして私は悪心を押し込めて、ずっと抱えたまま過ごすだろう。そこを元イさんは占いのテーマとして取り上げて、肯定して、発散の機会を与えてくださったのである。

この時点で私は占いをお願いして正解だったと心から思えた。 不思議なもので、誰にも言い出せなかった妄想は聞いてもらえた瞬間凶暴性を失ったのである。咎めるわけでもなく、無理に慰めるわけでもなく、ただ吠えるがままに任せてもらえて非常にありがたかった。
メッセージラインは進む。元イさんは「おすすめは心理の掘り下げなのだ。」と流れの中で勧めてくださった。おそらく、せっかくの有料の占いだから、より有意義なテーマを提案してくださったのだろう。確かに、元イさんの言う通り誤った考えについて理解を深めた方が今後のためには良いのだろう。

しかし、私は根深いアレな部分を初対面で語るのも正直いろいろ重たい気がした。

加えて、過去の私がせっかく考えたことは馬鹿げたものでも無駄にしたくはなかった。誤った考えとして扱うことは簡単だろうけれど、私は私の考えに最後まで付き合ってあげたかった。いわば、元イ氏に占ってもらうチャンスを誤った考えの供養に使おうと思ったのだ。そして、この時点で良い弔いが得られそうなことも予感できていた。

10月31日のやり取りはここで終わる。私が最後のメッセージを打ったのは午前1時だったから、申し訳ない話元イさんにけっこうな夜ふかしをさせたのではないか。


4.衝撃のお告げ、下る


11月1日は午前6時に目が覚めた。この日は休日だったので、特に用事はない。好きなだけ布団の中にいられる。しかし、私の頭は朝から過熱気味であった。なぜなら、偽装結婚に必要なものを占ってもらうにあたって、何が必要であるか挙げる必要があったからだ。

私は布団の中にノートを持ち込んで、あれこれ考えていた。

最終的に①経済力②社会的地位③社交力④人脈⑤外見の5要素に決定した。とりあえずここまでガールフレンドがいなかった身としては、この5要素のうちどれかが優れていれば結婚できそうな気がしたのである。この時点で午前8:30、そろそろ元イさんにお伝えした方が良いだろう。私は以上の5要素についてメッセージを送り、後は9時30分の占い開始を待つのみとなった。


9時28分、ツイッターのメッセージラインが動き始めた。元イさんのタロット占いはツイッター上で行われるため、ツイッターを見られる環境であれば利用できる。大変お手軽である。

タロット

5枚のカードが並べられた。この5枚のカードをめくれば私の考えに答えが出るという。ちょっと待って、とも思ったが流れるようにカードはめくられた。結果としては以下の通りだ。

タロット2

さっぱり訳がわからない。スーファミの「伝説のオウガバトル」ではそれなりに強そうな絵柄ばかりだから、なんとなくいい予感がしたのである。しかし、私を残酷な現実が襲う


元イさんが教えてくださったカードの意味は以下の通りであった。

経済力…カップの騎士
経済力はめちゃくちゃ必要。情熱をもってとにかく金を稼ぎまくるべし。

社会的地位…女教皇
普通にめちゃくちゃ高くないとだめ

社交力…愚者
何も考えずにとにかく進むカード。
おそらく、何も考えずにコミュニケーションをとってもなんの問題も起こらずストレスも感じないレベルじゃないと、と読める。

人脈…カップの8の逆位置
別の全く新しいものに目を向ける必要あり。

外見…カップのクイーンの逆
これを武器にしようと思うな


予想外の厳しい結果であった。

まとめると、偽装結婚を完遂させるためには並外れた経済力と社会的地位と社交力が必要で、外見や人脈は今のままでは役に立たなさそうである。端的に言ってこれは全く歯が立たない状況だ。私の心中には泣きたくなるような気持ちがまずやってきて、その感情はすぐに清々しいものに変わっていった。まるで夢から覚めた後のような心地よさだった。悪い考えは持つべきではない、という優しい答えを聞けたようで安らいだ気持ちになれた。


これだけでも非常に実りのある結果だったか、なんと元イさんはさらにそれぞれの答えを補足するカードを5枚ひいてくださった。(2020年11月1日時点での話なので、今はサービス内容が違っているかも)

タロット3

経済力…月の逆位置
一応稼ぎまくれば偽装結婚できる可能性は感じられるかも?

社会的地位…ペンタクルのクイーン
食っていくのに全く困らなくて、先のことを考えても全然余裕なレベルで稼げて、しかもめちゃくちゃ人に慕われて、尊敬される地位が必要

社交力…ソードの2の逆位置
良い内容。今まで思うように行かなかった状況から解放されて、新たなスタート、新しいステージに進める。

人脈…ソードのクイーン
これも良い。偽装結婚できるかどうかは置いておいて、閉塞感とか、悩みは抜けて、今の自分の視野にはないものが見えてくる。
現状の突破口は人との交流。


外見…審判の逆位置
このルートに望みは無し


めった打ちである。

さっきの5枚から出た結果と大意は変わらない。

もしも偽装結婚にあくまでこだわるのであれば、ものすごくお金を稼げば、あるいは無意識に流暢なコミュニケーションが取れるほど社交力を磨けはなんとかなるかもしれない。

しかし、そこまでコストを払って叶えるべき夢だろうか。私は疑問を持った。

それだけの努力をして得られるものが既婚者という肩書きと心の存在しない結婚生活ならば、割に合わない。おそらく、経済力と社交力を得るべく血のにじむ努力を続ける中で私は確実に変わっていくし、その結果できる人格は今の私とはかけ離れているはずだ。

別の言い方をすれば、私の家族や友人は既婚者という肩書きのためだけに努力する私を好きでいてくれるだろうか。おそらく、私の好きな人々は努力の過程でいつしか遠ざかっていく。類は友を呼ぶという言葉が本当なら、代わって私の周りに集まる人々はだいたい予想できる。

私が今より金銭や社交力といった才覚にずっと恵まれていたなら、偽装結婚もできたかもしれない。しかし、今の私にはどちらもなく、小市民的なモラルを持つことで世の中での存在を許されているような人間である。


最後に、元イさんは一枚のカードを引いてくださった

タロット4

ソードの8の正位置。

偽装結婚に対して打つ手はない、という意味らしい。


もう誤った考えを持つ気にはなれなかった。過去の私が苦し紛れに固めた偏見を捨てるのは悲しかったが、この悲しみは新しい始まりのための変化なのだ。


私は感謝の意を元イさんに告げ、今回の占いは終わった。


5.悪念の挫折とこれから


タロット占いを終えると、私は軽やかな気分を感じていた。同時に、手放せなかった悪い考えがどれだけ自分を苦しめていたかも実感できた。
女性に対して無意識に感じていた警戒心や怒りはおさまっていた。私は私の人生の失敗を女性たちになすりつけていたし、その姿勢を直そうともしなかった。占いの結果が心にしみた以上は、間違った考えは捨ててしまおう。 


こうして私の内面は少しだけ変わり、行動にも変化があった。タロット占いを終えた11月1日の午前10時すぎ、現在の家に引っ越してから一度もやっていなかった家の前の掃除を不意にやりたくなり、竹ぼうきを手にして外に出た。雑念を取り除くと身の回りも綺麗にしたくなるのだろうか。
同じ日の午後に買い物に出かけた時は、スーパーで女性とすれ違うときや道の向こうから女学生のグループがやってくる時に身を固くし鋭い視線を送らずに済むようになった。これまで私は彼女たちのそばを通るたびに身構えていたわけで、どれだけ不審な人物に見えていたことだろうか。これまでは女性のことを人知の及ばない邪悪のように思っていたが、私と同じ一個の生命体くらいまでは認識を修正できた。

元イさんに占いを依頼しなければ、自らの手で人生をどれだけ恐ろしいものにしたかわからない。この占いで得られたものは料金として払った1,000円より間違いなく価値があった(2020年12月現在、リアルタイムでの占い価格は2,000円に変更)。



さて、ミソジニーを大きく減らした私がこれから恋愛方面に踏み出せるかは、自分でもよくわからない。

私はこれまでわずかな手間と傷つきを恐れて人と話すことを避けてきた。人付き合いの経験が足りていない中でガールフレンドを作ろうとすれば、また新しい地獄を作り上げてしまう。

だから、いったん恋愛から離れて人間をもっと広く知りたい。たぶん、かつての私が心配したように人付き合いで傷を負いもするはずだ。ただ、人に疲れたとしても、まあ何とかなるだろうと楽観できてもいる。

今回の占いで下されたような、なにか善い力がきっとまた助けてくれるだろうからだ。

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