-イイオトコ-
昨日の夜から今朝にかけて、地元では今年の初雪を観測し、うっすらと雪が積もった。
雪を見て思い出すのは、人恋しい冬の時期の恋人でも、ロマンティックな雪山の恋愛でもなく、逆に暑い夏の日の出来事の方が多い。
暑い日に、室内でクーラーをガンガンにかけて、「寒い寒い」と言って布団にくるまるのが好きと言っていた人がいた。
今では私もそうだ。
ナンパをしてきた彼とは、一度も付き合うとかの話をすることもなく、私が大学生の頃から7~8年ほど関係が続いた。
最初は、完全に遊ばれたと思っていた。
遊び慣れたイケメンな社会人である彼にとって、私は都合のいい女の一人でしかなく、友人の結婚式の帰りに全身高級ブランドで来た彼に、違う世界を見せつけられているようでもあった。
それも、いつしか立場が変わる。
私に彼氏がいるときは、彼からの電話には出ない。
彼氏と別れたら彼に電話をする。
私にとっての都合のいい男というのが自然と定着し、お互いそれ以上干渉することはなかった。
その距離感が変わり始めたのは、私が上京してからだった。
私が大学の地に出張した時、私から彼に連絡をした。
宿泊しているホテルに迎えに来てもらい、外で食事をすることになった。
それまで彼と食事を共にすることなんて一度もなかったし、久し振りの再会で少し照れ臭くはあったかもしれない。
しかし、彼がそこまで優柔不断だったとは知らなかった。
私が問われたことに対して回答しているにも関わらず、中々行き先が決まらない。
苛立ちは隠せなかった。
そしてそれは、彼が仕事で来るからと東京で会った時もそうだった。
昔は、私が家にいれば来れば良く、私が迎えに来てと言う場所に行けば良かった。
だが、地元を離れると彼にはそれができなかった。
知っている地元でなければ思い通りにいかないことは当然ではあるけれど、男性からのエスコートを受けることに慣れていた私は、どうしようもなく彼が頼りなく見えてしまった。
彼に案内する私。
何度も連絡を取り合って、待ち合わせ場所や行く場所を決めたりすることが面倒になってしまった。
私にしがみつく彼。
Sキャラはどこに行ったの。
いつの間にか雪は融けて寒さだけが残った。
私に幸あれ。