-フィーリング-

マッチングアプリを始めて一ヶ月が経った。

マッチは時々するも、会うに至ったのは現時点で2人。

最初はこれほど効率の良い出会いはないと興奮していたものだが、実際そうでもないことを数字は語る。

既婚者がそれを隠しもせず、干渉なしのセフレを大っぴらに募集するアプリで、次の結婚相手を見つけようとするのは至難の業かもしれない。

ただ、私の周りの友人らがアプリをきっかけに結婚まで至った事実も無視はできない。

だからこそ、数を打っていけば、その内当たるかもしれないという期待感は常に持ち続けているのだ。

マッチするのに、返事をしてこない女ってなに？

というような文句を時々見かけるが、私に言わせてみれば、返事が来るようなメッセージを送っているのかと問いたい。

「マッチありがとう！よろしくね。」

ただの挨拶だけで終わるメッセージに、同様に挨拶を返したところで、やりとりがまともに続かないことは目に見えている。

大した質問がなければ、私自身に興味はないものと私は判断する。

とりあえず会い、その日だけの関係を求めるヤリモクなら、中身のない挨拶から始めても問題ないのだろう。

いやむしろ、挨拶をしてくるのは律儀な印象を与えるのかもしれない。

だが私は、あくまで婚活目的である。

会う前に、少しでもお互いのことを知り合うことを望む。

それはきっと、自分の容姿に自信がないからに他ならない。

会う前にユーモアを交えた文字のやりとりで好感度を上げておき、外見だけで判断されることを避けようという健気な作戦なのだ。

マッチングアプリに登録しているからといって勘違いされて時間をお互い無駄にしないように、私はヤリモクを軽くディスるようなプロフに変えた。

そのおかげか、会話が成り立つマッチは確実に増えた。

会う人数が思ったほど伸びないのは、会話のやりとりの中で「なんか違うな」と思うこと思われることが発生するからだろう。

そんな中、近々飲もうよと話が進む男性がいた。

あまり盛り上がるわけではないけれど、数日のやりとりを経て、ある夜彼から一言のメッセージが届いた。

「こんばんわー」

後に続くものはない。

翌日もまた、前日同様に挨拶だけが送られてくる。

私は前日の挨拶に返事はしていない。

彼からのニ夜連続の「こんばんわ」。

多分彼は、私からのこんばんわ返しを待っていたのだろう。

挨拶の返事が来て、それから本題に入る。

社会人として至極真っ当な流れである。

わかっているが、きっと私は彼と合わない。

用件はなに？

そう思ってしまったから、そのまま文字になってしまった。

すぐに彼からマッチを解除される。

面倒くさいのは、きっと私の方だ。

私に幸あれ。