-オトナへの階段-
過去に一度だけ、浮気をしたことがある。
大学生になって一人暮らしを始めて、高校の時からのカレシと遠距離恋愛が始まって間もない頃だった。
バイト先で知り合った彼は、20代前半で高級車に乗っていて、オトナな魅力にコドモな私ははしゃいでた。
浮気と言っても、決して一線を越えたわけではない。
浮わついた心。
きっと、当時のカレシは気付いてた。
私の心が、自分ではない誰かに向いていることを。
出会ってから何回目かの逢瀬で彼から告げられた。
「あの車、売って違う車に乗ることになるんだよね。軽(自動車)になってもドライブしてくれる?」
彼もきっと気付いてた。
私が、彼自身ではないトコロに惹かれていることに。
私は、カレシと彼を裏切った。
私に幸あれ。