facebook親子

-デリヘル嬢-

今さらと思われるだろうが、Facebookを始めた。

Facebookが日本に進出した当時、私の周りではmixiが盛り上がりを見せていたが、それさえも利用したことはなかった。

友達はリアルで繋がっている人達で十分だと思っていたし、公開発信して誰かに「いいね」をもらえるほど、私の生活や居場所に興味がある人なんていないと思っていた。

それでもいつしか、結婚して子供ができたら育児日記としてFacebookを始めようと、ひそかに胸の内で決めていた。

しかしながら、その日はいつになっても訪れることはなく、この度、とあるサービスの利用開始時にfacebookの登録が必須とのことで、渋々アカウントを作成するに至った。

始めた途端に「知り合いかも?」に出てくる過去の友人・知人たちに驚いた。

お互いに保持する電話番号が一致するだけで、一瞬にして過去が現実となる。

並ぶ名前とアイコンを見て、懐かしさと共に恐怖心を覚えたのは決して気のせいではない。


facebookあるあるの内、ここでは恋愛の話をしよう。

友達かもしれない人と、友達ではない人、友達に戻りたい人を仕分けしながらスクロールをしていく中で、なんとなく見覚えのある名前の彼を覗いてみた。

彼との出会いまでは辿り着かなかったものの、少しずつ蘇る記憶。

彼は、留守番電話にきちんとメッセージを残すタイプの人だった。

不在着信だけを残す人が圧倒的に多い中、自分の名を名乗り用件を吹き込む律儀なところと、その華奢な体からは想像できない声の低さに、連絡がある度に鼓動の高鳴りを抑えることができなかった。

外資系の投資会社に勤めていた彼は、港区の高層マンションの一室を所有しており、シンプルにまとめられたインテリアと彼のスマートなエスコートに、私は舞い上がって仕方がなかったが、必死でそれを隠そうとしていた。

彼がホントのところ、私のことをどう見ていたのかはわからない。

最初から私が、「あなたの恋人になろうなんて、そんなおこがましいことは考えていないわ」というスタンスで、割り切った関係を作り上げようとしていたから。

彼の部屋に入るやいなや、無言で服を脱ぎ始めた私に、頭のいい彼は察したのだろう。

そして、行為後に泊まることを提案してくる彼の優しさに、胸が締め付けられる想いで立ち去った。


友達の申請ができないのは、彼が私のことを覚えているか自信がないから。

傷つくことから逃げることに慣れている。


私に幸あれ。





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