投票のためだけに片道250km!?【海外での選挙、ハードモードすぎ】
こんにちは。ニュージーランドでワーホリ中のさめです。
先日、在外選挙(海外にいながらでも日本の国政選挙に投票できる制度)の申請を済ませ在外選挙人証を受け取りました。そして、石破新首相のもと衆議院が解散されたので投票してきました。
しかし、あまりの煩雑さやかかった時間の長さに嫌気さしまくり。今回は私自身の在外選挙の体験談をお話したいと思います。
1. そもそも在外選挙制度とは?
昔、海外に住む日本人は国政選挙に投票できませんでした。しかし、1998年に公職選挙法が改正され、2000年から海外に住んでいながら投票できるようになったのです!(参考)
しかし、残念ながら在外選挙は手続きの煩雑さや使い勝手の悪さ、知名度など様々な要因からあまり有効活用されていないのが現実。2022年に行われた参議院選挙では投票率はわずか22.04%(比例区選挙)及び21.91%(選挙区選挙)だったそうです。(総務省速報値)
なお、この数値は在外選挙人名簿登録者数(当時は100,090人)の中での投票率でしかないため、実際の在留者数を元に計算すると投票率はさらに低くなります。
2. 申請・投票するには?
申請は国外に出るタイミング(出国時申請)/海外に住んだあと(在外公館申請)の2通りあります。
前者は国内の最終住所地の選挙人名簿に登録されていること、後者は申請先の在外公館の管轄区域に3ヶ月以上継続して住んでいることが必要です。
投票できるのは国政選挙(衆議院選挙、参議院選挙、補欠選含む)、最高裁判所裁判官の国民審査、憲法改正案の国民投票。地方選挙は対象外です。
投票方法は①在外公館(大使館/総領事館/領事事務所)に出向いて投票②郵便投票③帰国して投票の3つです。郵便投票の場合は自分の選挙区の選挙管理委員会に対して投票用紙を請求する必要があり、更にそこから郵送で送るという作業が必要となります。
3. 実際の申請体験談(私の場合)
では、ここからは実際の私の体験談をご紹介します。申請だけでも嫌気が差して本当に大変でした。
出国前
私は出国2ヶ月前に一人暮らし先から実家に住民票を移しています。(ワーホリ準備のため一人暮らし先を退去し、完全に実家に移ったためです。)しかし、選挙人名簿への登録には3ヶ月続けて住むことが必要。そのため、出国時点で私は(おそらく)一人暮らし先の選挙人名簿に登録されている状態でした。
選挙人名簿に登録されていれば出国時に住んでいた自治体で選挙人名簿への登録申請ができる(出国時申請)のですが、私の場合は最終住所地の選挙人名簿に登録されていないのでできないと判断し、申請を行いませんでした。
(この時点で本当にできなかったのか確認しなかったのはミスでした……というのも、在外選挙で選挙権を持つのは日本での最終住所地であって、その前に住んでいた一人暮らし先にはなり得ないためです。また、根拠の無い噂レベルですが最終住所地の選挙人名簿に登録見込みの人でも申請を行えるという説もあります。)
渡航後
渡航後すぐ「在留届」を提出しました。日本の制度上これを元に海外での住所や連絡先、いつから住んでいるかなどを確認されるためです。こちらはオンラインで提出できるので楽でした。
ワーホリビザで渡航してちょうど3ヶ月のタイミングで在クライストチャーチ領事事務所に出向き申請を行いました。先述した通り最終住所地に3ヶ月住んでおらず、出国時点で選挙人名簿に登録されていなかったため本当に最終住所地に対する申請で良いか確認しましたが、それで問題ないとのことでした。
なお、申請自体は住所を定めてから3ヶ月経っていなくても可能ですが、要件確認のため3ヶ月経ったタイミングで電話が来るらしいです。(私が3ヶ月経過前に申請を行わなかったのは病みすぎてニュージーランド脱出説があったからです)
受け取り方法どうする?
9月初め、在クライストチャーチ領事事務所から以下のようなメールが届きました。
当時はPictonという町に滞在していたので、そちらの住所を伝えて郵送してもらうことも考えました。しかし、あと一週間ほどで離れるのが確定していたためそれに間に合うかは分からなかったこと、万一郵便事故があった際再申請となってまた何ヶ月も待たされかねないのはリスクが高いと感じたことから直接受け取ることにしました。
※なお、領事事務所の方に後日確認したところ、在留届提出の住所と異なっていてもメールで連絡すれば別住所に送付することは出来るそうですが、全ての在外公館でこのような措置が取られているとは限りません。
そんなこんなで10月〜11月にクライストチャーチに受け取りに行くつもりで動いていました。しかし、政治通の大学の友人に尋ねたところ「永田町では10/12告示、10/27投開票が最短スケジュールと見られている模様。勿論これより遅くなることはあるだろうけど、可能性はそれなりに高いのではないか。」という趣旨の回答をされました。そのため次の滞在先への移動を遅らせてまで急遽クライストチャーチに在外選挙人証を取りに行く判断をしました。
(結局告示日こそ違うものの投票日は本当にその通りになりました。友人、滞在開始の遅れを快く受け入れてくださった次の滞在先ホスト、車と荷物を置かせてくださった当時の滞在先のホスト、急遽私を泊めてくれたクライストチャーチの友人と友人宅のオーナーには感謝しかありません。)
受け取り
ということでクライストチャーチに戻り、領事事務所に在外選挙人証を受け取りに行きました。しかし、正しく申請したにも関わらず生年月日が間違っていることが発覚。選挙人証は回収され、再発行となりました。また何ヶ月も待たされるのかよ……選挙間に合わないじゃん……と絶望です。
ところが翌日、領事事務所閉館間際に修正版の在外選挙人証が発行された旨電話とメールがあり、無事受け取ることが出来ました。
実は、以前は在外公館と各選挙管理委員会の間で郵送で書類をやり取りしていたため在外選挙人証発行には平均で3ヶ月かかっていました。しかし、7月に「在外選挙人証のデータを各選挙管理委員会から在外公館に電子送付」→「各在外公館で印刷、申請者に渡す」という形に変更された(参考)ため、このようにスピーディーな発行が可能になったのです!ありがたい。
もし以前の形式のままだったらまた数ヶ月待たされて選挙に間に合っていなかったと思うと恐ろしいものがあります。
余談ですが、その時私は領事事務所から20分ほど離れたショッピングモールの前におり、メールを見て走り出し、ちょうどやってきたシティ行きのバスに飛び乗り、閉館5分前に文字通り滑り込み受け取りに成功しました。警備の人に言われるまでリュック全開になってることに気づかないレベルでした。何も盗まれていなかったので良かったですが……。
4. 投票のためだけに250kmドライブ
告示日(10/15)近辺、私はTe Pukeという町のキウイ農家で働いていました。最寄りの在外公館はオークランド、なんと250km先です。郵便投票にしたかったものの、届いたか確証がないこと、さらには住所変更申請が間に合わず投票用紙を受け取れる見込みが無かったことから在外公館に行って投票せざるを得ない状態でした。(住所変更の申請がオンラインで出来ればよかったものの、在外公館に出向かなければならないようで、わざわざ行く時間は取れませんでした……)
しかし、在外公館での投票日程は非常に限定的。オークランド総領事館の場合、10/16〜20の僅か5日間だけでした。(地域によってはさらに短く、同じニュージーランドでもクライストチャーチは10/19まででした。)
告示日が10/15なので、非常に短い期間での選択を迫られることになります。(投票前に選挙公報を見ようとしたら、まだ出てなくて頭を抱えました……)
キウイ農家の仕事は天気次第。しかし、投票期間に限って天気が良くて毎日仕事がある状態でした。結局、10/20に休みを取って(注)私は車を250km、3時間走らせてオークランドへ。(2月に免許取り立ての新米ドライバーなので、自分でも運転しててかなり怖かったです……泣)
無事投票することが出来ましたが、なんだかモヤモヤした思いが残る形になりました。
なお、実は在外公館での投票は「各選挙管理委員会宛の投票用紙が入った封筒を預かる」→「職員さんが日本へ運ぶ」→「速達郵便で各地に届ける」という形をとっています。郵便で配達中に郵便事故が起きないとは限らず、さらに追跡番号等が投票者側に伝わる状態では無いため、在外公館投票ですら本当に届いたか確認する方法は実は存在しないのです。
また、書かなければならない書類や説明も日本で投票するよりも多くて大変。投票用紙以外に、投票用紙を入れた封筒への署名や、選挙管理委員会への送付用封筒の宛名記入、投票用紙請求用紙への記入が求められました。また、投票方法の説明も一人一人しっかり受ける必要があるため混みがちで、職員さんはそういった説明に加え署名欄や確認欄などにチェック/サインをしなければいけないためますます時間がかかる状況でした。
私は事前に投票先を全て決めた上で行きましたが、それでも30分ほどかかりました。
5. さいごに
私は選挙は絶対棄権しない、という強い意志のもと、今回250km運転してまで投票に行きました。
しかし、同じ状況で投票に行く人は限りなくゼロに近いでしょう。
申請や郵便投票の簡便化、インターネット投票の導入など、使いやすい制度でなければ投票率が上がらないのも当然です。
今の制度では海外在住の日本人の選挙権を守っているとはとても言い難いのではないでしょうか。
難しい道のりであることは重々承知していますが、改善されることを期待しています。
(本当に余談ですが、選挙権を得て以来初めての衆議院選挙でした。初衆議院選挙の投票が海外って、少しエモいかも?)
おまけ 4での(注)について
厳密にはこの表現は正しくありません。
10/16-20に雨降らなかったら10/20に休み取るね!と伝えていたのですが、結局仕事自体に嫌気が差してしまい、10/19に仕事を辞め、10/20にオークランドに出てきてそのまましばらく滞在することにしてしまいました……。
もし仕事を続けていたら収入が失われた!と言って余計頭に来ていたと思いますが、仕事を抜け出す良い口実を作ってくれたと思うことにしようかな……。