投影機の製作 〜自作プラネタリウムのススメ〜
こんばんは。芝学園天文気象部のプラネタリウム班担当者です。この記事では、地球儀を使用したピンホール式プラネタリウム投影機の製作手順について解説します。前回の記事では素材と形状について説明しましたので、まだご覧になっていない方はこちらをご覧下さい。
1、プロット作業
❶投影範囲の決定
プロット作業は、穴を開ける位置を投影機上に書き込む作業です。穴の位置は、星の位置を示した赤経赤緯という座標系を使います。春分の日、ちょうど太陽の赤緯が0になった瞬間の天球上での太陽の位置を、赤経0度と定めることで各星の位置関係を表しています。
ここで、何等星まで投影するかを考える必要があります。有名な星座の形をはっきりさせるためには、最低限3等星までは投影する必要があります。3等星までで285個あります。急いでいる場合は3等星まででいいと思いますが、時間に余裕があるなら4等星まで行うのが無難です。4等星までだと909個あります。所要時間で言えば、プロット作業だけなら3等星までで半日、4等星までだと2日弱くらいです。
❷プロット作業
プロット作業に必要な赤経赤緯のデータ、いわゆる星図データは、NASAがこちらで公開しているヒッパルコス星表というのを活用しましょう。下記リンクから芝学園天文気象部がNASAの公開しているヒッパルコス星表を活用した、4等星までを抽出したファイルや南半球から見た星を再現する場合のプラネタリウムの座標をダウンロード可能ですので活用してみて下さい。
地球儀以外の球体で製作をする場合は、座標をひたすらプロットしていくだけです。この時、視等級によって色を分けるのを忘れないようにしましょう。
2、穴あけ
❶穴の大きさ
星の明るさ、つまり視等級の違いはピンホールの穴の大きさで表現します。見かけの明るさと星の等級の関係を示した式であるポグソンの式より、1等星の穴の大きさを2mmとして、以下の関係が導出できます。
1等星と6等星で明るさの差は100倍ありますから、穴の大きさで言えば10倍あるわけです。例えば直径4mほどのドームに直径30cmの投影機を使い投影する時、一等星の穴の大きさは、2mm程度にするのが妥当ですので、星の明るさを忠実に再現しようとすると4等星は0.5mmとなりますが、あまりに細いと作業に負担がかかります。
そこで、上記の表では、その比率を変更したもの掲載しています。実感としては、比率は2〜2.25が作業がしやすく星も綺麗に写ります。それよりも低いと星が歪んだり霞んだりして変な感じがします。なるべく2以上に設定しましょう。
❷穴あけ
上記の比率に合わせたドリル刃またはキリを用意して、穴を開けていきましょう。プラスチック製の素材の場合は、電動ドリルの方が圧倒的に効率的です。電動ドリルはバッテリー式よりもコード式の方が軽くて連続使用ができお勧めです。
穴あけの時に注意することとしては、光源の中心方向にまっすぐ穴を開けることです。ずれてしまうと星が楕円形になったり映らなくなってしまうので注意しましょう。
3、遮光塗装
光源の光が投影機で反射しないように、内側か外側を遮光用に黒い塗料で塗る必要があります。地球儀などは、内部に塗料を塗ることは至難の技なので、外部にぬります。
黒い塗料であれば基本的に構いませんが、塗装をすると小さい穴は潰れることがあるので、ぬり終わったら穴が埋まっていないかを確認しましょう。
4、土台作成
プラネタリウムを回転させるための土台をつくります。赤道儀を活用することが簡単で理想ですが、値段が張るので、イレクターを活用して作るのが私のお勧めです。上の画像の土台の設計図を以下に貼っておきますので参考にしてみてください。
5、光源配線
これは各素材によって異なりますので詳しい説明は割愛します。
注意することとしては、光源は必ず投影機の中心に来るようにすることと点光源を利用することです。特殊だ電球を扱っている電気屋と変圧器を扱っているお店を紹介しておきます。
6、試験投影・修正
投影機が出来上がったら試験投影をしましょう。穴が潰れていたり、位置がおかしかったりして不自然な形になっている星座などを一つ一つ丁寧に修正していきましょう。
また、全体の明るさも確認して、光源が暗い場合は電球を変えるかトランスの接続を変えましょう。
7、完成
ここまでくるのに早くて1週間、長いと1ヶ月以上もかかる、大変根気のいる作業です。楽しんで製作を行いましょう。
まとめ
以上で、「自作プラネタリウムのススメ」は最後になります。色々と創意工夫をして、自分だけのお手製のプラネタリウムを作りましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。