エアコンをencourageする
お客様との会話が好きだ。
スタッフチームとお客さんたちとの会話を聞くのも好きだ。
今日のこと。
村のようなホテルゆえ、それぞれの部屋にクセという名の個性がある。
7番の部屋のエアコンはちょっとだけ心を閉ざしやすい。
別の言い方をすると、キーカードを挿して、ピッという起動音がして、送風口が開くのに、動かない。室外機のFanが回らない。
でも、不思議なことに5分くらいすると、急にブーンと言って動き始める。
究極のスロースターター?納得してから始める派?
毎日そうか、と聞かれると、そうでない。調子がいい日もある。
設定の問題ではないらしい。修理屋さんに見てもらっても故障ではないそう。
今日も7番のエアコンはお昼過ぎに心を閉ざし、
外出から戻ったお客さまが「エアコンが動かないの」ときてくれた。
「それはすみません」と言いながら、スタッフの1人が駆けていく。
少し間を空けて様子を見にいくと、
リモコンは動く、ピッという動作音もする、送風口も開く。
でも動かない。いつものパターンだ。
スタッフがひとしきりいろいろ試している間に
「お部屋を変更してもいいですか?」とお客様と聞いてみる。
「このお部屋にもう落ち着いた感じがしているから、できるならこの部屋で」というお客様の声を聞いて、
「お客さんはあなたがいいって言っているよ!頑張って!」とスタッフと2人でエアコンにエールを送る。
でもダメ。諦めて15番のお部屋を用意しに行ったころ。
マネージャがちょっと見てくると言って7番のお部屋に向かい、
「大丈夫、動いたよ」と言いながら戻ってきた。お客さんも一緒に。
「えー!どうやってやったんですか?」
「何それ、どうやってエアコンの心を開いたの?」
同時に聞く、私とスタッフ。
「いや、何にも。」まったく何気なく応えるマネージャ。
するとお客さんが
「彼女の足音が聞こえてきたら、ブーンて言い始めたの!」と教えてくれる。
「なにー、見に行くだけでencourageすごくない?私らじゃダメだったか〜」
「まだ付き合いが短いからじゃない」
とか言い合ってひとしきりみんなで笑った後、
お客さんが外に向かって歩きながら
「え、ってことは朝から晩まであなたにエアコンの近くにいてもらわなきゃ、エアコン元気出ないんじゃない?!」と言ったのに合わせて、
「大丈夫、見えるところに写真貼っておきます」とマネージャが鮮やかに返し、また空間に笑いが咲いた。
文字にするとなんてこと無くなっちゃうんですが、
こういう瞬間がとても好き。
お客様とホテルスタッフという関係性を超えて、それぞれのキャラクターが瞬間その場に立ち現れる。
私たちは人生の一瞬を共有している。
たとえ、それが一晩の滞在だったとしても。
だから、お客様との会話が好きだ。
スタッフチームとお客さんたちとの会話を聞くのも好きだ。
そして7番のエアコン君、今日は写真なしでも頑張れてるかな。
2023.1.11
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