SCENE14:「裸」【メイキングオブ『ワンダーら』】
●シーン概略
世界一の博物館を裸で歩きたいとのたまう女。
◎裸の魂で話せよ
「命単体に歴史なんてない」このシーンはこのセリフが全てだ。そしてこれもまた”なにかのための、なにかなどない”の言い換えであると言える。
人間は途方もない歴史を作り上げてきたし、地球はさらに途方もない年月の上にある。学校でも習うし、DNAもそう言っている。が、しかし。今ここにある命単体は──命と呼べるものは──あくまで母の胎内で細胞が結合して以降の足跡しか持ち得ない。マクロとミクロの話。
「おばけ」に登場した「思考停止は社会人のたしなみだぜ?」の、あるいは対義語とも言える。お前が纏うそれ、有用だと思っているそれ、お前が借りパクしつつあるその虎の威、それら全てを剥ぎ取った時、お前は今と同じことを同じテンションで言えるのか?ということをよく自問自答する。私は裸の魂で話せているのか。思考停止してはいないだろうか。
◎ゼロ
いつだってゼロの地点に立ち返ること。世界一の博物館を裸で歩きたい、とは台本を書いた時思いついたので私自身の願望ではないが、考えると死ぬまでにやってみたいことかもしれない。私は私のゼロさを確かめたい。
学生時代に初めて自主的に立ち上げた舞台公演も、やはり裸になったその「ゼロさ」を表すタイトルをつけた。その時は自己紹介的な意味合いでもあったが、「私を私たらしめていると勘違いしているもの」を剥ぎ取ってみたいという願望だったかもしれない。
◎裸の幽霊
ところで「おばけ」に出てきた裸の幽霊は、ここに出てくるキャラクターなのか?
さあ?そうかもしれないし、違うかもしれない。
幽霊って服着てるのかなあ、そもそも。
◎参照作家なし
「石」以来の参照元なしとなったシーン。ここも経緯はほぼ同じで、直前で台本を大幅に書き換えたので即席的にネームをつくる必要があったからだ。強いて言えばここも阿部共実氏か。作中を通してマンガにおける会話劇のやり方にかなり影響を受けているが、ちょっと頼りすぎかもしんない……。
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