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「コロナ禍で超多忙」池尻大橋のライブハウスの謎

ライブハウスが悲鳴を上げている…と耳にして久しいです。実際に潰れてしまうお店も少なくないと聞きます。新型コロナウィルスの感染拡大がエンタメに与えた影響は甚大です。

ぼくが運営の一旦としてかかわっているショートショート投稿サイト「ショートショートガーデン」もこの影響からは逃れられず。ユーザさんとのコミュニケーションのひとつとして、不定期ながらイベントを行ってきたのですが2020年は開催がままならず…さびしい限り。

トップに掲載している画像は、ショートショートガーデンが2019年の5月に行った田丸雅智さんと声優の大原さやかさんのトークイベント。会場は池尻大橋のライブハウス「#chord_(ハッシュコードと読みます)」でした。

2020年にはこのライブハウスで定期的ショートショートガーデンのイベントが行えればなあと。そんなふうに思っていたんです。

というのは、ここのオーナーである「ひよこ氏」は、ショートショートガーデンの運営メンバーでかつ、WEBの技術担当まで引き受けてくれてるからなんです。超強力な運営メンバーなんですよ、ひよこ氏。

しかしながら、このコロナ禍。そしてライブハウスの苦境が報じられると、さすがにちょっとひよこ氏と#chord_が心配になります。

ところが驚くことに、当のひよこ氏は「コロナ以降、めちゃくちゃ忙しくなった」と。連絡も微妙にままならないんですよね。何が起こったのでしょうか?

イベントの開催が以前と同じようできないのになぜ…? いろいろと気になったので、ライブハウス業界の現況と合わせて本人に聞いてみました。

ライブハウスでのイベントは減ったけれど…?

――ライブハウス業界は今どうなってる?

ひよこ「第3波の状況をうかがいいつつも、ひっそりと有観客とオンラインでイベントをやってる感じ。ライブハウス事業以外の売上が無いと基本的にはかなり厳しい状況だけど、エンタメ系以外の業種の売上がある会社(例えば不動産事業など)は耐えられそう」

――有観客のリアルイベントの代わりに、オンラインのライブ配信が多く開催されてるよね?

ひよこ「オンラインライブ配信だけでは売上が厳しいところが多いかも」

――やっぱりイベントの数は絶対的に減ってしまった?

ひよこ「10月くらいから徐々にイベント数が戻りつつある。周囲の状況や感覚的には7割くらいは回復している感触。ただ、入場できるお客さんの数が制限されている分、アーティストもイベントを打ちにくいし、店としてもドリンクの売上が少なくて1日あたりの売上は下がってる現実はある」

――なんとかライブハウスはやっていけそう?

ひよこ「毎日のようにレンタルが埋まっていたハコは、緊急事態宣言前後で開催できなかったイベントの延期や振り替え公演を2021年3月くらいまでの間で調整している。

一方でアーティスト側もキャンセル代を払うくらいなら多少赤字でもやる、という構えで今(2020年12月現在)はそれなりに回っているように見える。

例年11月12月は繁忙期だけど、1月2月は毎年イベントが少なくもともと厳しい時期。だから年明けでまた状況が厳しくなるライブハウスは出てくるかも…」

ライブ配信だけでなく、テレビ番組の収録まで…コロナ以降に急激に忙しくなってしまった理由

――難しい状況なのに、ひよこ氏はなぜ忙しいの?

ひよこ「有観客のイベントでもライブ配信を並行して行うことも多くて。そうすると準備も実施も手間がかかる。他で開催されるオンラインライブの手伝いなんかもあるし、いろんな相談が舞い込んでくる」
(※注 #chord_では独自のライブ配信システムを開発・運用している)

――そういえば、テレビの収録でも#chord_が使われていたと聞いたけど…

ひよこ「日本テレビ系列の『有吉反省会』の収録で。制作会社さんからオンラインライブが出来るライブハウスを探していると連絡があって。"カメラ台数や配信環境等が充実していた&コスパが良かったから"使いたい、と」

――収録ではどんな協力を?

ひよこ「#chord_から日テレと兵庫のアーティストの実家へ、そのバンドのオンラインライブを同時に届ける方法や、セッティング等の指導・協力と収録映像の提供をした」

――なるほど。ライブ配信システムを持っていたり、技術対応ができたりすることで、様々な相談がまいこんでくる…と

ひよこ「ハコとしての#chord_では、収録利用と無観客イベントやファンクラブ向けイベントが増えた。内々での少人数イベントをやって、オンライン物販で売上を確保するアーティストはコロナ以降で増えてるかも」

コロナ禍で生まれた「プログラマブル・アイドル」

――それ以外に#chord_からコロナ禍だから生まれた新しい動きはある?

ひよこ「12/19に#chord_が送り出す"リモート特化型プログラマブルアイドル"として、新しいグループのお披露目ライブがある。コロナ禍で生まれたエンタメ界の特効薬。オンラインライブの可能性を追求するアイドルグループとして活動していく予定」
(注:ライブ視聴は無料で、登録不要で視聴可能だそうです)

「音楽」にITがクロスする…DXを実現できるからこそ広がった守備範囲

これは音楽でも出版でも同じで、「デジタルの時代だ」と言われ続けた割には、パッケージを制作し、店頭で売って、メディアプロモーションを仕掛けて、イベントを打ってという伝統的な様式は未だ健在でした。

それがコロナ禍で否応なしにデジタルへの移行を急激に迫られたときに、それに対応できるITスキルや経験、知識、そして人材があるかないかで結果は見事に二分されてしまったのかなと。#chord_の今を見ているとそれをまざまざと痛感させられます。

「っぽい」言葉だけ振り回しても、実際に形にできなければ何も残りません。声の大きい人が制圧できる世界ではなくなってきたのかもしれません。力あるものこそが生きられる、力こそ正義…そんな時代は在野に眠るクリエイターにとって、とても良い時代になったのかもしれませんね。(さ)

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