「私は茨木童子、お前の親友だ。」
大江山の鬼王…酒呑童子はようやく目が覚めたが、
記憶を失ってしまったようだ。
お前は誰だと、彼は聞いた。
己がどれほど強い鬼王だったかを思い出してもらい、
あの頂点に立つあやかしにもう一度挑みたいと思った。
だから、「私はお前の親友だ」と、こう教えたのだ。
半信半疑ではあったものの、彼は何一つ反論しなかった。
なんてことだ…あやかしの世界を睥睨すべきやつが、
このまま舞台を降りられては困る。
昔の力を取り戻すまで、ちゃんと近くで待たねばならんようだ。
いつも足首の鈴の音で、俺がまた来たことに気づく。
酒を飲む頃に訪れてくることに、彼もだんだん慣れてきた。
一日中酒に明け暮れている酒呑童子には、
鬼王の面影の欠片もなく、最初は苛立った。
だが、よく考えれば…
これほど酒を愛でるということは、
彼が本物の酒呑童子で、何一つ変わっていない
ということではないか。
「何だ、また俺と戦いに来たのか。」
「いや…」
「戦いではなかれば、何をしに来た?」
「今日は、共に心ゆくまで飲もうではないか。わが友よ。」