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【短編小説】始まりの場所

「は?」
戸惑う少女をよそに、世界は光に包まれて――気がつくと少女は見知らぬ場所にいた。
そこは、薄暗い部屋だった。
壁には本棚が並び、そこにはぎっしりと本が詰まっている。
その光景からすると書庫か何かなのだろうか。
だが、それならば何故こんなにも暗くする必要があるのか。
窓には分厚いカーテンがかけられており、外の様子を窺い知ることはできない。
「ここは……」
周囲を見回していた少女は、ふとあることに気がつき目を見開く。
彼女の目の前には机があり、その上に置かれたランプの光がぼんやりとその顔を照らしていたのだ。
そこにあった顔は――自分と同じものだった。
「え……?」
自分の顔に見覚えはない。
そもそも自分は死んだはずだ。
なのにどうして自分の顔がある? 混乱する少女の前で、もう一人の自分が口を開く。
『はじめまして』
「あ……あなた誰!?」
『私はあなた。あなたの中の闇』
「私の中……?」
『そう、あなたの中にいるもうひとりの私。それが今の私の姿』
淡々とした口調で告げる彼女に、少女は困惑気味に問いかける。
「どういうこと……?何が起きてるの?」
『この空間はね、私が作ったの。だから私がいる。そしてこれから話すこともすべて真実だよ』
「真実って……」
『いい?よく聞いて。あなたが死んだあと、神様を名乗る人がやってきてあなたを生き返らせたの』
「神さま……?」
突拍子もない話だと思った。
しかし、目の前の少女が嘘を言っているようにも見えない。
それに彼女は言ったではないか。
自分は死んだのだと。ならこれは夢なのかとも思ったが、頬に触れる感触は確かに現実のもので。
どう考えてもこれが現実であるはずがないのだが……。
『うん、信じてもらえないかもしれないけど本当なんだ。それでね、あの人はあなたにお願いをしたの』
「おねがい……?」
『それはね……世界を救ってほしいということだったんだ』
「せかいをすくう……?」
あまりにスケールの大きな話に、少女の思考は追いつかない。
そんな彼女を落ち着かせるように、少女はゆっくりと言葉を続ける。
『そう、世界を救う。そのためにあなたは選ばれたの』
「でも……どうやって……」
『方法は簡単。魔王を倒してほしいんだって』
「まおう……?」
『そう、魔族の頂点に立つ存在。あいつさえ倒せば、きっと世界は救われる』
あまりにも荒唐無稽な話。
だが、なぜか彼女の言うことを疑うことはできなかった。
『詳しい話はまた今度。今日はここまでにしましょう?』
「あ……」
彼女が指差した先には、いつの間にか扉が現れていた。
それをくぐれば元の世界に戻れるだろうことは明白で。
「待って!まだ聞きたいことが!」
慌てて声を上げる少女だったが、扉の向こうから聞こえてきた声で口を閉ざしてしまう。
『ごめんなさい。時間切れみたい』
「え……?」
戸惑う少女の前で、再び光に包まれて――気がつくと少女は自分の部屋に立っていた。
あれほど暗かったはずの室内は明るくなり、机の上に置かれていたはずのランプも消えている。
まるで先ほどの出来事などなかったかのように元通りになった自室を見て、少女は呆然と呟いた。
「なんだったの……?」

あとがき

本文は「AIのべりすと」で作成、挿絵は「Stable Diffusion」の「ACertainThing」で作成しています。

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