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その後Ubieでみたもの~       事業開発における組織アライメント

Ubie株式会社の"SAM"こと大原聡です。
長年の戦略コンサルティングファームの勤務を経て、今年からヘルステックベンチャーのUbieに参画しました。(参考:前回投稿

今回は、入社以降の体験を踏まえ、成長過程のスタートアップにおける実際の組織運営の一面を紹介しようと思います。

#事業環境

Ubieは、AI問診を起点にしたHealthyな医療エコシステムの構築を目指しています。

患者、医療機関、製薬・保険、海外向けの領域で、垂直的に事業を立上げ、複数の事業群を同時多発的に推進『超』アジャイル型の組織運営を極めて、壮大な構想を3年間で実現するという野心的な計画を持っています。

事業開発は、まずまず順調に進んでいます。
現在は、事業毎にプロダクトの基礎が出来上がり、継続的に開発を続けながら、顧客層の開拓と拡大に取り組んでいます。

事業のステージを、0→1→10→100で分けると、初期設定したスコープは、開発後期~スケール化準備(1→10)の段階に当たります。
プロダクトを幅広い顧客層に当てて、高い満足を獲得できるよう評価・調整する。そして、顧客基盤を開発して高効率に事業拡張していくための土台を築くことが目的となります。

一方で、個別事業の成長に加え、これらを融合したエコシステム全体の変革を目指しているため、次スコープの新規開発にも継続的に着手。こちらは、まだ開発早期(0→1)の段階にあります。

全体の組織規模も拡大し、既に120名ほどの体制になりました。

#経験した難しさ

事業ステージの幅が広がり、市場での成功に必要な様々な要素が見え始めています。また、ビジネスとしては、プロダクトと顧客アセットを蓄積するとともに、収益の確保への意識も高まります。

事業が複雑化することで、当然『歪み』も出てきます。
私は、最近ある事業での顧客へのサービスデリバリーに多くの時間を使っていますが、難しさを感じることも多い。

プロダクト開発視点とマーケット開発視点

PMF(Product Market Fit)の段階では、プロダクトの方針とマーケットからの要望が本格的にぶつかります。
メンバーの役割や責任により目標や関心がぶれやすくなります。

・一定のスコープでプロダクトを開発してきたが、顧客に購買してもらうために派生した要望に対応してしまう
・サービス中にプロダクトの開発方針が変化して、顧客が期待してきたことと齟齬が生じる
・エラーやトラブルが発生すると、解消対応に追われて手が回らなくなり、業務の標準化も進まない…

顧客の要望に応え過ぎるとプロダクト開発の優先順位がずれたり、将来に向けたリソース投下が出来なくなります。
これを理解しつつも、現実では安定的な顧客基盤とマネタイズの実績作りが要求されます。

事業間における特性や成功要件の違い

同じプロダクト基盤を利用するプラットフォーム型のモデルでは、複数の事業間で市場・顧客の構造やニーズが異なる状況が発生します。
一方で、各々の事業は相互に連関しながら全体成果に繋がっています。

・顧客数と単価水準が異なり、個客の獲得やチャーンの影響度も異なる。求められる機敏性と着実性の重みが違う(例:to-C 対 to-B)
・事業毎に顧客が求める提供価値やソリューション/サービス化の度合いが異なる。事業開発で優先すべきアジェンダやメトリクスが違ってくる
・事業により市場ポテンシャルや収益貢献度が異なる。一方で、各事業の将来の成長は、他事業の成長に依存している…

各々の事業がPMFを迎えて、対面する市場・顧客に適合させ、ビジネスとして成功させることは必須条件です。
他方、シナジーを含めた中長期的な収益とROIの最大化のために、多面的な角度から全体最適を目指すことが改めて重要になります。

様々な要件が発生して複数の潮同士がばらばらにぶつかりあうことで、澱みが出て来る。それぞれの潮を上手く交わらせて、ひとつの大きな力強い渦を作り、推進のスピードを維持しなければなりません。

ここが抑え処のひとつなのでしょう。

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#組織的な解決への取組み

Ubieは、事業開発における不確実性や複雑性を、アジャイル型の組織運営を極めることで、解決しようとしています。

上記のような方針のアライメントの課題も、OKRやホラクラシーなどの仕組みを進化させて対応を図っています。

(1)全社的OKRによるゴールの整合化

OKRの効用の一つは、組織やメンバー間の達成目標や方針を整合化し、重要な施策にフォーカスすることで全体の成果を最大化させることです。

自律型組織のために、基本的にはボトムアップでOKRで運営してきました。事業の複雑化が進む局面では、トップダウンの色彩も取り入れています。

全社横断的な重要課題の解決を全社OKRとして設定し、それを起点に関連する各組織のOKRを調整
・全社OKRレベルの達成に必要となる展開活動量(ストーリーポイント)を設定して、それを基に各組織のリソース量を調整
全社OKRのメトリクスと組織OKRのメトリクスを連携させ、進捗認識と重点強化のポイントを合意

全社OKRに紐づく組織OKRが注視される形になり、テコ入れが必要な項目は組織内の開発活動でも重視される形です。
Ubieでは、全社/組織OKRを3ヵ月毎に設定しており(随時見直しも入る)、進捗を週次で全組織に共有しています。

事業や組織が複層化しており、収益結果などで一律に管理できないため、全社OKRはとても有効な手法だと思います。

全社OKRにより各組織での取組み順序の目線を合せ、全体最適化を促進
また、全社OKRで将来に向けたアセット形成の要件も明示することで、中長期的な成長への投資の必要性を意識させることも可能です。

私も全社KRの一つのプロモーターを担当しています。
カバーするスコープや関係組織が多いので、取り纏めに難しさを感じます。
しかし、この仕組みがあるため、コミュニケーションを円滑に行い、サポートを受けやすい環境にはあります。

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(2)柔軟なサークル構造による連携の強化

ホラクラシーの中では、事業や機能などによる固定的な単位ではなく、状況に合わせて編成可能なサークルによる組織運営が行われます。

全社的なOKRとともに、柔軟なサークル構造は組織間のアライメントを高めるために不可欠の要素となります。

・事業や全社レベルで重要となる組織連携が最も行いやすい形でサークルやロールを構成
・各サークルやロールの組織連携上の機能ミッション(アカウンタビリティ)を明確に設定
・メンバーも特定の事業や機能に縛ることなく、担当業務に照らして必要な連携がとれる形でアサイン

これにより、円滑なコミュニケーションや効果的なコラボレーションが実現され、組織としての生産性を高めることが可能になります。

入社以来の短期間で、いくつか大きなサークル構造の再編がありました。

以前は立上げを主眼にして顧客毎で分かれていた2つの事業サークルを、効率化と機能価値の高度化の追求のために統合。プロダクトとマーケット、さらにその中のゴールテーマによりチームとして再構成されています。
私が軸足をおく事業サークルでも、他のサークルとのリソース面の連携が行いやすいよう、プロダクトとマーケットで分割が起こっています。

私は顧客へのサービスデリバリーをメインで担当。そして、製品提供基盤および顧客基盤の開発の観点から、プロダクトとマーケットの両サークルに所属し、その間の連携を促進するロールにもアサインされています。

連携を重視した組織編成を行ううと、会議の時間が増えて負担も大きくなりますが、事業全般の方針を把握できるメリットがあります。

Ubieでは当たり前のことのように実行されていますが、通常の階層型運営の企業では考えられない、極めて合理的な仕組みだと思います。

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(3)日常活動での運営アプローチの徹底

事業課題の多様化が増大するカオスの状況下でも、組織としてアジャイル型の事業開発運営能力を高めることで、高速かつ秩序のある展開は実現可能だとUbieは考えています。

日常の活動レベルでも全社的に実践されるよう、組織運営手法の標準化とメンバーのラーニングの仕組みが整備されてきています。

開発ステージ毎のOKRの設定
・OKRに基づく開発作業要件(PBI)の設計
スクラムによる開発活動プロセスのマネジメント
・活動シーンに合わせたスクラムの適用
アジャイル型開発人財の育成 など

スクラムなどITのプロダクト開発の世界の話にきこえますが、マーケット開発活動にもアジャイル方式を取り入れる試みが進行しています。
テーマは違えど、取組みの複雑化や不確実性に対峙する観点では、本質的に同じだからです。

整合化したOKRに沿って、チームの取組みの絞り込みや優先順位付けがなされます。作業レベルで、メンバー間でゴールへのアライメントが取られることになります。

また、週次のスプリントを回すことで着実にやりきることが意識付けられ、新たな課題の発生に合せて取組最適化への見直しが起こります。

レビュー時に各メンバーの課題感が共有され、インプットを通じて最短で本質的な目的を達成するためのアイデアが生まれるメリットもあります。

最初は通常の活動の進捗管理かなと思いましたが、主旨が異なります。
状況により機動的に調整をかけ、担当リソースも融通することでボトルネックを早期に解消できるところも特徴的だと思います。

私も詳しい手法はまだ学習中なので、また改めて書いて見たいと思います。

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#さいごに

実務に就いてからそれほど経たないのですが、本当に展開のスピードが早い会社だと実感しています。

また、戦略コンサルや通常の事業会社の発想にないアプローチが取られており、驚くことが多々あります。
新たなラーニングが出来ていることは、本当に貴重だと思います。

ご関心を頂いた方は、是非話を聞いてみて下さい。

(お知らせ)
Ubie で働くことに興味がある方は、Ubie Dev採用サイト に詳しい情報を掲載していますのでご覧ください。


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