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エネルギーテックにしかできない社会解決はたくさんある

2019年8月6日、dock-Toranomonにて第2回エネルギーテック勉強会が開催されました。株式会社シェアリングエネルギー株式会社エナーバンク(SEB, Sharing Energy Bank)が共同主催する「エネルギーテック勉強会」は、20兆円という巨大なエネルギー市場を、クリエイティビティとテクノロジーを駆使して、イノベーションの創出にチャレンジすることに関心の持つ人達のコミュニティです。業界の基礎知識、国内外のユースケース紹介、最新技術など、エネルギーテックの全体像の理解と最前線の情報の共有に重きを置き、お互いの知見をシェアしあう双方向的なコミュニティを志向しています。第2回は「オーストラリアのエネルギーテックの取り組みと日本への社会実装」と題して、前半はEnergyLabのファウンダーのPiersさんよりエネルギーテックのユースケース紹介、後半はエネルギーアナリストの大場さんをお招きしエネルギーテックの国内への実装に関するパネルディスカッションの様子をお送りします。

[前半パート]
豪州エネルギーテック・エネルギーマーケットの紹介と日本市場への期待
Piersさんの動画とQ&Aセッションはこちら

後半:エネルギーテックの国内への実装について

モデレーター(井口 和宏さん) それでは始めさせていただきます。まずはお二方の自己紹介をお願いします。

大場 紀章さん エネルギーアナリストの大場と申します。今日はよろしくお願いします。

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私、ちょっと変わったバックグランドでして、元々、自動車業界の中でガソリン車から電気自動車にどのように変わっていくかということを調べるために、石油セクターと電力セクターの両方を調査するという仕事を長年やってました。そして数年前に「エネルギーアナリスト」と名乗って独立したんですが、そういった背景から、石油と電力の両方のマーケットを見ながら自動車マーケットも見るという結構欲張りなことをやっています。この3つを総合した仕事に名前をつけるとすると、エネルギーアナリストかなと思ったので。

あと、今日のイベントのポスターにある私のプロフィールに、日本データサイエンス研究所(JDSC)って書いてあるんですが、こちらはIT系のスタートアップで、実はエネルギー関連の事業を結構やっています。EnergyLabのピアーズさんが仰っていたように、エネルギーの世界は技術的な問題に加えて複雑な規制など非常に専門性の高い分野で、難しい事が沢山あるんですけど、JDSCではそこをサポートする形で活動をやっております。今日はよろしくお願いします。

モデレーター(井口さん) 大場さんのことはNewsPicksでもしかしたらご存じの方いらっしゃるかもしれませんが、ぜひエネルギーテックマーケットの面白い面とか難しい面とか技術の部分とかもお伺いできればと思っています。では、村中さん、エナーバンクの代表されてます。自己紹介お願いします。

村中 健一さん はい。宜しくおねがいします。

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井口さんと三か月ほど前にちょっとエネルギーテックで仲間ほしいよねってところから始まりまして、僕たちが発信する内容ってどれだけ価値があるんだろうね、でも僕たちも学びたいよねっていうノリから、いろんな方たちの知見を皆と共有しながら壁打ちして、新しい組み合わせで面白いことできたらいいんじゃないかと始めたエネルギーテック勉強会で、今回、第2回なのにけっこう大掛かりでやらしていただいているんですけども、ほんとにこの領域がいま世界同時に動いてるなーというところを感じていまして。

僕が昨年7月に起業してエナーバンクという会社の代表をやっているんですけども、エネルギーテックの盛り上げの1つの要素、コンテンツに自分たち自身もなりながら、みんながひとつの中心に向かっていくような形で日本のエネルギー問題を楽しく解決に向かっていければいいなというモチベーションで今これをやっております。さっきNewsPicksの話にありましたが、僕も何回かエネルギー周りをNewsPicksでコメントしてたんですが、まったく「いいね」集まらないんですよ。笑 それで、見てた時にあれーすごい「いいね」もらってる人がいる。大場さんがピックするとみんな集まってくるんですよね。

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観客 笑

村中さん  なんだこの文脈はというところから、まあ、ひょんな機会で大場さんの主催するイベントにお声がけいただいて、そのあと飲んで意気投合しまして、今回来ていただき誠にありがとうございます。僕もエネオクという業界初のエネルギーオークションというところをやりながら需要家さんの法人側と、電力小売の事業者側のオークションのマッチングサービスを今年1月から展開してまして、それを全国共通フォーマットで進められるのでまさにこれエネルギーテックというクラウドベースにデータが集まっていく。そのエネルギーのデータがつぎの資産になってレバレッジの効くようなビジネスモデルとなり、横とのアライアンスが広がっていく、こんな世界が実現していくだろうと試行錯誤しながら頑張っておりますので、今日はそういった内容、トークをしながら皆さんと知見を共有できたらなと思っています。どうぞよろしくお願いします。

モデレーター(井口さん) 村中さん、まさに経営者としてエネルギーテックの難しさであったり、あるいは経営の面白さみたいなところをぜひお伺いしたいと思ってます。では、早速なんですけれどもそもそもエネルギーテックと先ほどからテーマとしてあるんですけどもエネルギーテックとはなにか簡単に整理をしてみたいと思うんですけども、大場さんこちらのスライドご用意していただいてますので説明お願いできますでしょうか?

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エネルギー業界のデジタル革命

大場さん この図なんですが、実は「エネルギーテック」ではなく「エネルギー業界のデジタル革命」として整理したものです。そもそも「エネルギー」と「テック」とは何か。「エネルギー」と一口にいっても色々ありますよね。先ほど申し上げたように、石油・ガス業界もエネルギーですし、もちろん電力もあります。また、「クリーンテック」というと再エネが中心なのでやはり電力のイメージが強いですよね。新しい技術を導入した火力発電所も広い意味では「エネルギーテック」かもしれないですけども、皆さんのイメージの「エネルギーテック」って、スタートアップでやられているような再エネへのエネルギーシフトを加速するテクノロジーという意味で、比較的ITベンチャーに近い企業が多いイメージがあると思います。つまり、「エネルギーテック」というのは、ハードもやるんだけど、ソフトよりのところが重要になる。ということで、デジタルな付加価値を使っているところが多いだろうというのが私の整理になります。つまり、「エネルギーテック」というものは、結局のところ「エネルギー業界のデジタル革命」といえるのではないかという意味でこのように整理しています。

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ただ、デジタル革命にも色々あって、これで網羅しているというつもりはないのですが、ざっくり分類するとブロックチェーン使っている系と使っていない系のビジネスモデルに大きく分かれるだろうというのが大きなくくりです。さらに、ブロックチェーンをやっていてもその中でかなり激しく分かれています。一つは、ICOを含めビジネスに何らかの意味で暗号通貨を介在しているもので、もう一つはスマートコントラクトで通貨以外のP2P取引や台帳管理をやるアプローチなどもあり、また全然違う世界が広がっています。今日もPowerLedgerの話がありましたけど、そういうベンチャーが非常に沢山出てきていて、そしてたまに消えるものもあります。

一方で、必ずしもブロックチェーン関与せずに、様々なデータを自動的に処理することで付加価値を高める、というようなビジネスモデルも非常に沢山あります。大きく分けると、エネルギーの消費者の需要データを活用する「消費者データ型」タイプと、エネルギー事業者が中で抱え込んでいる事業データを活用していかに付加価値を高めるかという「事業者データ型」タイプに分かれていて、どのような社会的コスト・経営コストを下げるか、異なるデータをマッチさせることでどのような価値を創造するか、というような様々な取り組みが行われている、というのを整理したものがこちらです。村中さんこの図について何かご意見ありますか?

村中さん 僕たち実は最初起業するとき、ブロックチェーン、仮想通貨盛り上がりのタイミングの2016年〜2017年の後半ぐらいにかけてブロックチェーンで起業しようと思ったんですよね。ただ、仮想通貨でブロックチェーンにみんな集中したものが、雪崩のようにこけだしたタイミングにまだ僕は前職にいたので、ここで勝負すると、出てくるタイミングが5年後10年後になるかもと思って一気にシフトしました。

大場さん 興味はあるけど、タイミング的によくないと思った感じですか?

村中さん まさにですね。今でもここが来るとずっと頭ではイメージしているので、うちのエンジニアには調査をさせているんですが。でもやっぱり、今必要ないかもねという話は中では起きてます。

大場さん 「データの価値化」タイプのスタートアップには、これからブロックチェーンの事業もやりますと宣言しているところも非常に多いですよね。どこも結構似たような状況かもしれないですよね。

村中さん そうですね。エネルギーとブロックチェーンすごく相性いいなと思って、これだーと思ったんですけど、息の根は長いですよね。

大場さん そうですね。私は2013年くらいにブロックチェーンとエネルギーで何かできるなとツイッターで呟いたら、すごい問い合わせが来て、やたら人とあって講演依頼を受けたんですよね。ただその時は色々考えてすべて断りました。可能性は感じるんですけどね。いろいろ考えると他にもやり方ありそうなんですよね。

村中さん エネオクはこの図ではどこに入るんですか?

大場さん お客さん需要家も事業者だと思うので、BtoBであれば「事業者データ型」かなと思ったんですけど、活用してるのは顧客の需要データなので「消費者データ型」かなって。

村中さん そうですね。モチベーションはそこにあります。

大場さん 顧客の需要データと電力会社の価格データをマッチングしているので、この分類だと「消費者データ型」かなと思いますが、正直エナーバンクさんのビジネスモデルは僕の分類では想定外でうまく当てはまらないかなと思いました。村中さんと出会う前にこれ作ったので、これ間違ってますね笑

観客 笑

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規制の中にチャンスはあるのか、しぶとさとスピードが大切

モデレーター(井口さん 電力業界の特徴って既存のインフラを所有されているジャイアントプレイヤーが各地にいらっしゃってそのプレイヤーとの何かしらの接触って避けられないと思うんですよね。その時にスタートアップができることですとか、スタートアップだからこそ提供できる価値だとか、そういうところでいろんなパターンがあると思いますが、どういうところがチャンスがあると思いますか?

大場さん まさに先ほどピアースさんがエネルギースタートアップの難しいところは規制とハードと既存事業者との協業と仰っていましたが、ほんとうにその通りです。

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ピアース・グルーブ Piers Grove|EnergyLab Co-Founder & Chair
新しいビジネスを創出することに情熱を注いでいる連続起業家。環境的にエシカルな退職基金であるFutureSuper、オーストラリアのオンラインエンターテイメント誌Betoota Advocate、テレビ・映画・コンテンツ制作会社であるRepublic Visionを含む多くのビジネスの立ち上げに従事。通信やコンテンツ制作などの経歴を経て、2017年に創業者がリソース、エコシステム、および専門知識にアクセスしてクリーンエネルギービジネスをいち早く立ち上げることが出来るよう、EnergyLabを共同創設者と共に立ち上げ、現在に至る。

特に規制、つまり政治なんですよね。規制を変えるには政治を動かさないといけないので。だから、エネルギーのスタートアップって、時として政治、政治ってなってしまって、スタートアップをやっているのか政治ロビイングをやっているのかわからないようになるぐらい、規制はきわめて重要。残念なことに新規参入者に必ずしも優しくない方向の規制もあります。そこを何とかこじ開けるにはどうしたらいいかというと、規制を変えたほうが社会にとってプラスだってことを示さないといけない。そうじゃない政治は単なる利益誘導になってしまいますし、単に新規参入にゲタを履かせるだけの規制緩和というのは正当化され得ない。それをすることによって社会にこれだけいいことがあるということを社会に示して、世間のコンセンサスを取ってもらうというのが、規制を変えるために必要な大きなことだと思います。

既存の電力事業者とどうコーポレートするかという意味では、実は既存の電力会社も新しいルールや自由化で新規のスタートアップがいっぱい入ってきて、どうすればいいのかわからなくなっている。ルールも新しくどんどん増えるし、今までのルーティーンワークで粛々と電気を送っているだけだったのが、どんどんビジネス環境が変わっている。既存の電力会社の社員って、元々そうした環境変化に対応するタイプじゃない人たちの集まりだったりするので、非常に困っている人は多いです。そこをうちだったらこう解決できますよみたいな形で手を差し伸べたりすると興味を持ってもらえるというのが、規制と既存産業との協業になるのかなと。一つのアプローチとしてですが、私はそんなふうに考えています。

村中さん 僕がなぜこの領域で戦えるかといったときに、先ほどのピアーズさんがエネルギーテックに必要な要件を3つ上げていて、1つ目は特に僕は当てはまるなと。「しぶとい」というポイント。

観客 笑

村中さん 好きなんですよね。政治を含めた、エネルギーのインフラっていう業界で戦っていくことが。前職がソフトバンクなので、ソフトバンクもやっぱりインフラを通信の自由化の中で攻めて、通信事業をしていなかったところから孫さんが開拓してきたという話とかはいろいろ聞く中で、「インフラはそう簡単じゃねぇよ」っていうのをちゃんと心に持ちながらそれでもやることに、風穴を空けにいくことにモチベーションがある。コアなところに情報を取りに行って、その人たちとちゃんと会話をして、お互いWin-Winになれるところってどこなんだろうというのを探しに行くアクション、これは私もだしうちのCOOで前職「エネがえる」というサービスを立てた佐藤丞吾もコンサルでエネルギー業界を20年ぐらいいますので、彼ともとことん議論して世の中こういうロジックが働いているからこそ、ここは手を出せないだろうというところにアクションするという思考をしています。

じゃあどうやって規制の中で取りに行くかというと、僕はそこは逆にスタートアップとして、スピードで勝ちに行きたいと思ってます。制度ができてそれに合わせたビジネスを作ってアクションしたら「ヨーイドン」なのでみんな同じアクションをする。そこでパイは取れないので、規制が検討されている中に良さそうなところを既存のルールの中で作ってマーケットに出して反応を見ちゃう。そのマーケットの反応が正しいか正しくないかによって今の規制の方向性がビジネスとして正しいかどうかを見定めながらちょっとずつノウハウを積み上げてビジネスにつなげていきたいみたいなところはよく考えています。

大場さん スピード感っていうのは、スタートアップの最大の強みなので、その戦略はいいですよね。あと、しぶといとこ。

モデレーター(井口さん) 大場さんに質問です。エネルギーテック事業がグローバル展開するときに各国の電力マーケットの規制がネックになると考えられますが、特に日本が他国のエネルギー業界に比べて厳しいという規制がもしあれば教えて下さい。
 
大場さん 海外資本のスタートアップが日本に来るときにという意味では、日本の今の電力ガス自由化における外資規制については、基本的に外為法しかないんですよね。つまりどこの国の企業でも日本の企業と扱いは同じとなっているんですが、その外為法っていうのが厄介で、安全保障上に懸念があると難クセを付ければなんでも断ることができるという運用になっていて、ある意味きわめて広い範囲でグレーということでもあります。なにをやっちゃいけないってことが明確に規定されていないという意味で、変わった規制になっています。日本のエネルギー産業の規制の特殊性という意味でいうと、がちがちの規制があるので石油産業はほぼ新規参入自体できないですね。電力はオープンなんで色々と入ることはできる。新電力ビジネスでいうと、エネルギー供給構造高度化法とか容量マーケットなどの新しい制度が入ってくると、新規の中小発電事業者ほとんど勝てないんじゃないかと言われていて、今の規制の方向性だと極めて厳しい戦国時代が始まると。これからの日本のエネルギーテックは、発電だけじゃなくて、どういうセクターを狙うのかをちゃんと考えないと大変な業界かなという印象はあります。これまでは順風だったのがこれから、ある分野に関しては逆風が吹くと思います。

モデレーター(井口さん) それに関連して2020年来年から送配電部門が独立する、いわゆる発送電分離が起こりますが、そのイベントはエネルギー業界のプレーヤーからするとどんなインパクトがあるんですか?チャンスになるんですかね?

大場さん それにお答えするのは難しいですね。例えばオーストラリアもかなり前に送配電分離をしているんですが、それによって電力価格を下げようという目的でやっていたんですが、まだ大きな変化が出ていないという認識なので。ヨーロッパもアメリカもそうですが、法的に送配電部門を分離すると何が起きるのかっていうのはいまいちよくわからないっていうのはありますね。

村中さん 結構そこが面白いのかなと思いますね。どうなるかわからないからやってみようが発生するから、それこそ新電力をみていると、相対で卸供給していくとかで、電源調達争いになっていて、これが発送電分離のときに発電所単位での収益性を求め出すので、どうやって発電所単位の利益率を高めていくのかというところにテックがすごい活きるんじゃないかなと思いますね。

大場さん そうですね、広い意味ではそうですね。ただ、東京電力と中部電力は発電と小売も分社化するスキームなので、今おっしゃったような状態なんですが、それ以外のところは、送配電部門は分社化しても発電と小売は同じ会社のままの予定なんですよね。送配電しか分離しないので、あんま変わらないっていうのがあって。東京電力と中部電力管内においては、発電と小売も分社化されるので全体をみてマネージメントする会社が大変になる。そうすると、どうすんのってことになって、そこをうまくテクノロジーでマネージメント解決して価値を出すっていうチャンスはあると思いますね。自由化なので参入がどんどん入ってくると、誰がどういう行動するか確実に読めなくなってくる。読めない中で挑戦する方法は、誰も今わからない状態なので、そこはわからないという意味でのチャンスはあると思います。

モデレーター(井口さん) 次の質問はブロックチェーン関連です。エネルギー分野のブロックチェーン活用に関して、これからインフラ整備が進む途上国では需要があると思いますが、日本国内で想定されるユースケースは何だと思いますか。

大場さん 最初期待されていた電力取引での応用では、一番考えられるのはグリッドを保有しているエリア内での売買ですね。それは当たり前なんですけど、ある程度閉じたグリッドで託送料金の設計ができないと、なかなか公平なP2P電力取引は難しいので、イオンモールの隣にマンションも立っていて全部のグリッドを誰かが保有しているというような場所があれば面白いと思うんですけど、なかなか地域をまたいでやろうとすると様々な問題が発生するので狭い中でグリッドを保有していることろがスタートですね。

モデレーター(井口さん) ありがとうございます。RECs(環境価値の取引)とかもあるかも知れないですね。

大企業とスタートアップの違いと勝算は?

モデレーター(井口さん)  村中さんに聞いてみたい質問が、国内でエネルギーイノベーションを起こそうとしたときにスタートアップで変化を起こすことと会社に所属しながら変化を起こすことの違いはなんでしょうか?また、スタートアップの勝算はどこにあるのでしょうか?

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村中さん 前職ででかい大企業の中で色々チャレンジした時と、今のやりやすさ的なことでいうと、とことん追及するアクションが正であることと、それは伝わらない文脈と、ここの違いはやっぱり企業に属すると属さないの違いですかね。ほんとに僕、「なんでそんなにエネルギーに熱いんだ」と言われ続け、だから、周りを動かさなきゃ、縦ラインでちゃんと意思決定しないと、儲かることを証明しないと、動けないという中で新しいビジネスを作るアクションは、やはり説明が仕切れない。しかも同じ目線の基準にみんなのレベルを上げるところにすごいコストがかかるので、それだったら自分が箱を作って、そこにわかってもらうところにとことん情報発信してその人たちに学んでもらって、新しい若い力とかを入れて、専門職を持った人たちがエネルギー面白いね、エネルギーでやることが、なんか社会的意義もあるし、新しいことに挑戦できてるからすごいやりがいあるよね、ていう文脈をとことん自分たちのなかに入れていく。

エネルギー業界では誰が語るかが重要

大場さん そこはすごい大事なところで、私も先程NewsPicksでエネルギーのコメントをしても全然集まらないという話をしたと思うんですけど、今日皆さんはすごい集まっていただいたのですが、なかなか盛り上がるのが難しいんですよね。電気の話しで盛り上がるのは。

村中さん 業界の人たちで話すとみんな同じ課題を持っていて面白いんですがね。

大場さん そうですよね。何が言いたいかというと、結局誰が語るかというのが非常に重要なんですよ。「あ、村中さんがやるんだったら面白そうだね」といかに思ってもらうか。あらゆるスタートアップでこれはそうだと思うんですが、このエネルギー業界で風穴を開けようとすると、誰の会社かというのが私は極めて重要なファクターだと思っていて、よくわからない業界だからこそ、あいつに任せれば大丈夫だっていかに思ってもらうかというのは非常に重要だと思います。こういうイベントで村中さんが全面に出てやられてるというのはすごい戦略的に正しいかなと思います。

村中さん あはは。笑 分析されてしまいましたか。

エネルギー領域で次に起こる変化は個人化、レイヤー化

モデレーター(井口さん) 日本のエネルギー業界におけるICOの位置づけはどうでしょうか。
例えば電力にトークンを紐付ける従来の発想から、再エネ設備やバッテリーにコインやトークンを紐付けることも可能性として出てくることについてはいかがでしょうか?

大場さん 私に聞かない方がいいと思います。私は極めて批判的なので。

モデレーター(井口さん) もう少しお願いできますか?

大場さん 非常に可能性があるがゆえに、怪しい人たちがたくさん集まって来てしまうので、良い事例以外の悪い事例がたくさん増えて、結果的に悪い評判が増えて共倒れしてしまうリスクの方が大きくなり、それを規制するのが非常に難しい。なので、魅力的だからゆえに難しいと思っています。

モデレーター(井口さん) 私の意見としては、PowerLedgerと今提携していて、PowerLedgerのアプリケーションの一つに発電所を作るときにいろんな方から出資を受け、それをトークンで行うアセットジャミネーションというアプリがあり、それはPoC的な位置づけなのかなと。将来的に用意はしているものの、今すぐではないのかな。

大場さん PowerLedgerぐらいメジャーで、ある程度社会的に認知されていると大丈夫なんですけど、それ以外の人たちが盛り上がってくるとめんどくさいということです。

モデレーター(井口さん) 電力市場は水道のようなインフラになるのか、それともネット回線や通信業界のようなインフラになるのか。人に対しての課金なのか、場所に対する課金なのか。どちらにシフトすると思いますか。

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大場さん 前半のご質問に対しては、水道事業のようになるかという意味ではそうだと思うんですけども、ネット事業になるかというと電力のハード面の違いがあるので、水道的にはなるけどネット的になるのはちょっと難しいと思っています。

モデレーター(井口さん) 違いというのはどういうところでしょうか。

大場さん 距離のスケールが効かないということですね。送電網の整備は光ケーブルとは桁違いにコストが掛かります。つまり、北海道から沖縄に「ぽんっ」と情報は送れるけど、電気を「ぽんっ」と送れないので、距離が離れるとスケールしないというのが一つの大きな違いです。そこは水道と近いというところです。

モデレーター(井口さん) 後者の人に対する課金なのか、場所に対する課金なのか。どちらにシフトしていくと思いますかについてはどうですか。

大場さん 今は場所に対する課金しかないので、シフトするとしたら個人の方向しかないですね。個人にいくと思います。

モデレーター(井口さん) 個人に対する課金とはちなみにどんなビジネスでしょうか?

大場さん 今プラグに挿すだけだと個人には紐付かないので、電気を供給するときにID認証して電力量を計量するような電気プラグが出てくれば、私が今どれだけ充電してますというのがわかるようになります。また、非接触で認証すると充電する充電プラグが出てくると個人課金に変わるかなと。

村中さん 僕はちょっと目線を変えて、電力のレイヤー構造をもっと明確に意識しましょうという発想をここに対して思っていて、水のレイヤーもあります、設備側のレイヤーもあります、データレイヤーがあって、小売のレイヤーがあってと、この階層がどんどんミルフィーユ的に積み上がっていって、とことん上に流れれば、他業界と連携できるレイヤーが出るはずなんですよね。ありがたいことに、今自動車業界がめっちゃ動いているし、金が発生しているので、彼らのライドシェア文脈とかEV化文脈にフィットするレイヤーにまでエネルギーを昇華させちゃえば、エネルギーがそちら側に貢献してるよというところまで倒せるはず。

大場さん 理論的にはそうなんだけど、かなり頑張らないといけない。つまり、よく電気自動車のバッテリーをグリッドの調整に使うという話しがあるんですけど、あれをやるためには相当余裕を持ったバッテリーを積まないといけないんです。テスラのモデルXぐらいのバッテリーを積んだ1台2,000万円近いEVが世の中に何百万台、何千万台の時代がくるとたぶん大きく変わるんですけど、そのためにはコストもそうですけど、そこに投資する人がいるか、巨大バッテリーを積んだEVを社会に投入するための投資をどうつけるか、時間がなくて話せませんがそこに別の革命が必要かなと思っています。

エネルギーテック業界への意気込み

モデレーター(井口さん) 最後にそれぞれ30秒ほどエネルギーテック業界の今後に対するご意見や意気込みをいただいて終わりたいと思います。

村中さん 今日、こういう場で話せてすごい満足度高いんですけど、やっぱり第3回、第4回、第5回とこれをどんどん続けて、ホントにこのエネルギーテックを定義づけようから入っているので、みんなで議論して、今日もいろんな学びとかグローバルの視野で切り口だったり、ここ(エネルギーテック分類表)にカテゴリを一つ追加するとか今日達成できたし、じゃあどういう形のプレーヤーが今後出てくるかなというのをみんなで考えながら、僕たちが学んだ新しいノウハウはどんどん提供してみんなの次の知見になっていってもらえればいいし、またそこでチャレンジした人たちがこの場とかで僕たちにフィードバックもらえたりしたら、規制のところのルールだけに縛られない、アクションとしてのアウトプットをみんなで共有していこうねというようなこういったコミュニティが生まれてくると、少しは動くんじゃないかなと期待しているので、ぜひ積極的な取り組みをしていきたいなと思っています。宜しくお願いします。

大場さん 正直、エネルギーテック業界でイベントをやって、これだけお客さん集めるのってなかなか大変だと思うんです。なのでこのイベント自体がすばらしいなと思っています。それとやっぱりこういうエネルギーテックにしかできない社会解決はたくさんあると思うので、じゃあ何ができるかといったときに必ずしも何かありそうというフワッとした期待感の方もたくさんいると思うんですけど、これとこれは確実だよね、みたいなものがだんだん結晶化していったりしていくといいなと思っていて、こういう活動が将来の未来の社会のプラスになっていくこと期待しています。今日はありがとうございました。

モデレーター(井口さん) ではパネルディスカッションは以上とさせていただきます。お二方にもう一度大きな拍手をお願いします。

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第2回エネルギーテック勉強会は大企業、投資家、メディア関係者、
ベンチャー経営者、官公庁、学生と多様な計65名の方にお集まり頂きました

大手電力会社、大手新電力会社、建設会社、エネルギーVC、太陽光システム販売会社、メディア、大手メーカー、不動産仲介会社、研究所、大手通信会社、エネルギーベンチャー、省庁、リース会社、メガバンク、大学、エンジニアリング会社、石油会社、コンサルティング会社、カード会社、マーケティング会社 等

参加者の皆様にはエネルギーテック勉強会のSlackコミュニティにもご案内しております。エネルギーテック、コミュニティ志向、グローバルの3点をテーマにオンライン上での情報共有やディスカッションを通じて、ビジネスの示唆を得たり、新たなコラボレーションの機会創出に繋がることを期待しています。

※ エネルギーテック勉強会第3回は2ヶ月後の10月に開催できるように調整しています、開催が確定しましたらPeatixにてお知らせさせていただきますのでぜひフォローをお願いします。

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エネルギーテック勉強会で共有した資料は上記のSpeakerDeckにて無料にて公開しています。個人の勉強の範囲を超えて利用する場合は、エネルギーテック勉強会の事務局までお願いします。
その他、エネルギーテック勉強会への質問、参加希望、メディア取材等がございましたら以下の問い合わせフォームまでご連絡お願いします。


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エナーバンクCEO 村中 健一
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