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真珠のピアス
真珠の、一粒の真珠の、とことん上質な真珠のピアスがほしい。
結婚のお祝いとして、祖父が「真珠のネックレスを買いなさい」とまとまった金額をもたせてくれた。
真珠のネックレスというと、冠婚葬祭の装いに不可欠とも言えるもの。
まさに花嫁の支度品である。
祖父の気持ちはありがたかったものの、その存在に込められた格式と使いどころのなさ、そして大きい買い物に怖気づいていたことから、お祝いをいただいてから半年近くはうだうだとしていた。
真珠といえばMIKIMOTO。
日本が誇るこのジュエラーに憧れがあった私は、夫にエンゲージリングを贈ってもらう際にも、MIKIMOTOを候補の一つとしていた。
いろいろな理由があってMIKIMOTOのダイヤの指輪は断念したものの、銀座四丁目にある本店のたたずまいの美しさにはくらくらしたし、真珠のアクセサリーを購入するなら絶対MIKIMOTOに行こうと思っていた。
そういうわけで、春に母が上京した際、2人で銀座四丁目のMIKIMOTOに乗り込んだ。ついに。
ただこのときは連休中ということで在庫が少なく、急ぎでなければ休み明けの再訪を勧められたため、急ぎでなかった私はその翌々週、今度は夫を引き連れて再訪した。
一口に真珠といっても個体差が大きく、同じ品質のものでさえ、並べてみるとテリや色味が全く違う。どれも魅力的。
うんうんと悩み、夫に助言を求めるも「みりんちゃんが好きなのにしなよ」と言われ(そりゃそうだ)、店員のお姉さまに「おすすめは?」と聞いては苦笑され、一度店を出て東急プラザのタリーズで熟考し、再度訪れてやっと決めたのが、今手元にあるネックレスである。
美しい。この上なく美しい。
最初は桃色かかったものがいいかな、と思っていたのに、肌に合わせるとなじんだのは、ホットミルクのようなまあるい白にうっすらと碧くひかるこの方。
やはり本物のチカラはすごい。
この方を身につけるだけで、どこか「高級な女」になれた気がするんだから。
結婚式本番でももちろん身につけたが、まあ美しい。写真を見てもドレスより首元のネックレスに視線がいく。
鎖骨に沿って優雅な弧を描く、まばゆい珠よ。
そして控えめに、しかししっかりと主張する「M」のチャーム。
非の打ちどころのない、完璧な美しさである。
この方、フォーマルでよく使われているものより一まわり小さいので、ちょっとお出かけ、くらいでも身につけやすい。
真珠は汗や皮脂に弱いので、暑い時期に身につけるのははばかられたが、めっきり寒くなった最近、黒いタートルネックのセーターに合わせてみた。UNIQLOのセーターがピンと背伸びをしたように美しくなった。
とはいえ、ゴージャスでいて繊細なこの方。普段使いさせていただくには気が引ける。
しかし真珠のとりこになった私は、どうしても毎日つけたい。
そこで目を付けたのが、タイトルの真珠のピアスである。
一度ほしいと思うと、もう居てもたってもいられなくなった私は、自前のネックレスを携えていそいそとMIKIMOTOに向かった。
せっかくなので色味が合うものにするためだ。
「普段使いしたいんです!!!真珠を!!!!!」と主張したら、店員さんがおすすめしてくれたのが5.75mmと6mmのもの。
あいにくどちらの大きさも似た色味の在庫がなかったので、いいものを入荷できたら連絡していただくことになった。5.75mmにするか6mmするか悩みつつ、ホクホクと待っているところである。ちょうどいいことに、12月に入るとボーナスも出る。
年明けから、新しい会社で働くことになっている。
新しい会社、新しい仕事、新しいスーツ、そして耳元で楚々と輝くパール。
うーん、妄想するだけで楽しい。