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陶芸窯を人力で運んだ話 #2

到着から帰宅までの作業

到着した所は普通の一軒家でした。家の裏手側にコンクリートブロック造の小屋があり、そこが陶芸のアトリエになっていました。

70才ぐらいの奥さんにご挨拶して作業を開始しました。申し分ないアトリエなのに何故陶芸をやめられたのかお聞ききしたところ、ご主人が脳梗塞で体の自由がきかなくなって陶芸が出来なくなったそうです。

窯の製造年から察するにここで陶芸をされていたのは15年ぐらいでしょうか、なにか他人事ではない気がしました。

アトリエが家の裏側にあり、搬出経路の幅は1メートルも無いくらいで、さらに敷地が少し傾斜しているのか6段ぐらいの階段までありました。

これではクレーンでは運べませんし、手動のリフトも使えません。分割出来る窯を人力で運ぶしかありません。

解体の前に動作確認をしました。と言っても40℃位までですが、やらないよりはずっといいと思います。

次にブレーカーを落として配線を外していきます。配線はCVT14sq で配管に通して床に埋め込んでました。迂闊にも金属管の径を測るのをわすれました。30ミリはあったと思います。60Aのブレーカーに繋いでありました。

3分割と聞いていましたが実際は蓋を含めて4分割でした。それ以外にマイコン部分もあります。全部車に積めるのか不安しかありませんでした。

レンガ部分のパーツはただ乗せているだけでなんの引っ掛かりもありません。レンガとレンガの間に耐火ブランケットのような物が接着してありました。これがこのあとの運搬の際に見るも無惨なことになります。

解体していて持ち上げる為の手掛かりがどこにも無いことがわかりました。よく見ると窯の外壁に15ミリのナットが幾つも埋め込んであって、どうもそこに持ち手を接続する仕様のようです。しかし15ミリのボルトなど持ち合わせていません。事前の下見をしなかったことを激しく後悔しました。

しかたなく、片方を浮かせて指を差し込んで持ち上げる事にしました。大人3人でなんとか持ち上がりましたが、階段や幅の狭い所では2人で持つしかなく、腰が死ぬかと思いました。

重量物を人力で運ぶ時は、態勢や持ち手の有無で感じる重さは1.5倍かそれ以上になる気がします。そして耐火レンガが主体の陶芸窯は、重いくせにとても割れやすく置く、時に細心の注意が必要です。

最大の難関は車への積み込みでした。軽の箱バンに不自然な態勢で重量物を積み込むのは恐ろしく大変です。

そして窯を重ねないと乗らないので、仕方なく重ねたのですが、レンガ部分は確実に痛みます。間に挟んでいる耐火ブランケットは到着する頃にはズタズタになりました。

9kw程度の窯でも分割するなら、トラックなど床面積の大きな車で、重ねないで運ぶ必要がありそうです。もしくはテーブルのような架台を用意してレンガ部分に荷重がかからないようにして重ねるべきでした。

窯の耐火レンガは脆く割れやすいので、慎重に運転する必要があり、高速でもそれ程スピードは出せません。特に振動には要注意です。

自宅に到着したころにはすっかり日が暮れていました。二十歳の息子に手伝ってもらってとりあえず雨のかからない所に下ろしました。

車の中に散らばったレンガの粉を掃除機で吸い取ってレンタカーを返しにいきました。

長かった一日が終わりました。

窯の運搬まとめ

その1 窯の運搬は事前に下見をすること

その2 窯の解体前に動作確認をすること

その3 窯は運搬時に重ねてはいけない。

その4 運搬計画は車への積込み積下ろしを最優先に考える。


 




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