見出し画像

I Love Rock 'n' Roll!! ~「金沢ナイトミュージアム:歌うビートルズカブミリアの旅」~

"Singing I love rock and roll
So put another dime in jukebox baby
I love rock and roll
So come and take your time and dance with me"

今日(9月30日)、金沢市市役所第二本庁舎エントランスで開催された「金沢ナイトミュージアム:歌うビートルズカブミリアの旅」を見に行ってきた。いったいそれはなんなのか、一言で説明するならば「ギター、シンセ、チェロなどいろんな楽器の演奏者たちが一緒になってビートルズの楽曲をセッションするライブ」だったのだけれど、

最高だった。
なんなら泣いた。ライブ中ずっと涙が止まらなかった。
20代前半の小僧が、ビートルズの曲を聴いて泣いちゃうなんて。なにしてんだか。

セッションメンバーが、大好きな音楽を、全力で、誰よりも楽しんで演奏している姿……ももちろんだけど、なによりも彼らの奏でるその「音」に感動した。
きっと、ビートルズのことが好きで好きでたまらないのだろう。
聞きに来ていた人たちも、そう。
みんな、体を揺らして、日々のあれやこれやをとりあえず手放して、ただその場の「音」にすべてを委ねているようだった。

あの空間をみんなで共有できたのは、サイコーの「トリップ」だった。
……途中からしか参加できなかったのがこんなに悔しいイベントなんて、そうそうにない。


改めて、自分が今まで好んで聴いてきた音楽を振り返ってみても、そんな、泣いちゃうほど、ビートルズに特別な感情があったとは思えない。

人生で一番最初に好きになったのは、Bay City Rollersの"I Only Want to Be with You"という曲だった、と記憶している。なんかのコンピ盤に入っていたのだろう。同じ頃(3歳)にはHall & Oatesなんかもよく聴いていた。"Private Eyes"だったかな。

そのあと、思春期の頃からはサザンオールスターズにどっぷり浸かっていたし(「人気者で行こう」と「さくら」は私のオールタイム・フェイバリットだ)、今となってはすっかりプログレ・ハードロック狂(教)に「入信」してしまっている。

だから、正直今まで「ロックンロール」ってピンときたことがなかった。
だってなんだか古くさいし。わかりやすく「ポップ」なわけでもないし、超絶テクニカルで聴き手を唸らせるわけでもないし、とりあえず音圧と勢いでゴリ押ししてくるわけでもないし。

でも、今日、生音でビートルズの曲を聴いて、わかった。
今までに取材させていただいたレコードショップの店長たちが口をそろえて「最初に影響を受けたのはビートルズ」と言っていた理由がわかった。
ある年代の人たち(特に音楽を聴いてきた人たち)がやたらと「ロックンロール」を標榜している理由もわかった。

ロックンロールは「世界は良くなる」という「希望」そのものだ。


・"Come Together"
桑田佳祐がやっていた「メリー・クリスマス・ショー」のオープニングとして印象に残っている。特に、吉川晃司のやけに「ねっちょり」とした英語の発音と、つづくアン・ルイスの最強なかっこよさの対比は、あまりにも鮮烈だ。
全体を通して歌詞が意味不明なところも、でも歌ってみるとなんだか気持ちいいところも、とてもいい。

・"Hey Jude"
誰でも好きになってしまう曲。
最後はやっぱりお決まりの”Na na na”の大合唱で、私も歌いながら泣いた。だって、みんな当たり前に歌えるんだもん。
あの時の会場はほんとうの意味で「一つ」になってた。

・"Get Back"
"Get back, get back
Get back to where you once belonged"
大学で人間関係に大失敗して、なかなかうつが治らなくて、でもちょっとずつ私の世界が「再構築」されていくなかで、
たしかに、いつも、なんとなくどこかに「帰りたい」と感じていた。
「私はどこにいたんだっけ?」
「帰るって、どこに?」
……最近になってようやくその「答え」が見えてきたからこそ、私は立ち直りはじめてるんだと思う。

・"All You Need is Love"
その通りだ。ほかにいうことは何もない。
※ちなみに
"There's nothing you can do that can't be done"
"Nothing you can sing that can't be sung"
みたいに、曲の中で繰り返し出てくるこの「ん?」となる文章の構造、解釈がかなり分かれるところらしい。
直感で、私は
「できないことなんてない」
「歌えない歌なんてない」
かな、と感じたけど、たしかに
「できないことはできない」
「歌えないもんは歌えない」
とも解釈することができる。そういうとこだ、ジョン・レノン。


さっき
「ロックンロールは「世界は良くなる」という「希望」そのもの」
なんてたいそうなことを書いたが、
・あのキング牧師のスピーチがなされたのは1963年
・ストーンウォールの反乱があったのは1969年
であることからもわかるように、60年代の世界は、けっして「良い」とは言えない。
多くの人にとっての60年代は、今と比べ物にならないくらいに生きにくくて、狭苦しい時代であっただろう。

じゃあなんでビートルズの楽曲たちは今でもあんなに輝いて見えるのか。
いろいろ考えてみたけど、今のところの「答え」としては、たぶん、
「俺たちがやってやるんだ」
という圧倒的な熱意、ただそれだけなんだろう。

だって、今私たちが聞かされている物語の中に、「希望」に満ち溢れたものなんて、あるだろうか?
はたして、だれが「君たちはできる」と励ましてくれるだろうか?
そしてなにより、私たちの世代のうちの何人が、「私たちは変えられる」と、心の底から信じられているんだろうか?

だから
「俺たちがやってるんだ」
なんて声は、聞きたくても聞こえてこないし、信じたくても信じられない。ものごころついてからは初めてと言っていいくらい、久しぶりに、身体の中に「直接」響いてきたその熱意に、私は涙した。


帰りにタワレコに寄って、さっそく赤盤と青盤を買った。
ついでにストーンズの新しいアルバムを買おうと思ったら、まだ発売前だった。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?