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映画から学んだ世界の人権問題#1 【The Birth Of A Nation バース・オブ・ネイション】


まず最初に。
私は、生まれてからずっと日本に住んでいて、
決して貧乏でも裕福でもない、ほんとにいわゆる平凡な生活をしてきました。
両親も兄弟もいて、今まで出会った人たちにも本当にいい人たちはかりで、どちらかというと幸せな生活をしてきました。
日本の戦争の歴史も習ってきたけど、自分の先祖の時代のことで今後普通に生活していくには支障がないだろう、ぐらいの考えでした。
だからこそ、大人になって南アフリカやジャマイカに行った時や
こういった映画を観るたびに衝撃が大きすぎて、それが現代にも続く問題になっている事実を知ってただひたすら
「同じ人間なのにどうして?」
と思う事ばかりでした。

専門的に学んでいないミジンコぐらいの知識の私がおこがましいですが、
私なりに感じたこと(映画なので、映像や音楽などの感想も含む)などを綴っていきます。



The Birth Of  A Nation バース・オブ・ネイション(2016)

『バース・オブ・ネイション』より © 2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

■あらすじ(映画)

1831年にアメリカで起きた黒人奴隷反乱の指導者ナット・ターナーを描いた、実話に基づいた映画。

1800年初頭奴隷制の時代。
ナットはバージニア州サザンプトン郡に住むターナー家の奴隷として綿畑で働いていました。
ナットには特別な才能があり、学習していないのに文字を読むことができました。

当時は、黒人に学習させることは違法だったが、
ナットの才能を見出したターナー家の婦人はナットに読み書きを教えてあげました。さらに同じ奴隷のための説教師として聖書も学ばせられました。

ターナーの主人は彼の説教で金を稼ごうとアメリカ巡業に連れ出します。そこでナットは奴隷制度の現実の悲惨さを知ったのでした。

また、ナットは信仰がとても強くしばしば幻視をみては神の声を何回も聞いていました。

1831年バージニアで金環日食が観測され、ナットはこの現象を反乱の準備を始めるべき神の知らせだと捉えたのでした。

■ナット・ターナーの反乱

写真=easy science fo kidsより

1831年8月21日 総勢50名以上の仲間たちを連れて反乱を始めます。
(日本だと江戸時代の出来事)

ナットは仲間に”全ての白人を対象にする”ことを呼びかけ、老若男女問わず村の約60名の白人が殺害されたのでした。

この反乱は、黒人奴隷が初めて起こした反乱だといわれています。
反乱自体は48時間以内に鎮圧されました。
その年の10月30日に捕らえられ、11月11日に絞首刑となります。

■作品情報

【監督】ネイト・パーカー 
【製作】 ネイト・パーカー ケビン・チューレン ジェイソン・マイケル・バーマン アーロン・L・ギルバート プレストン・L・ホームズ
【脚本】 ネイト・パーカー
【撮影】 エリオット・デイビス
【キャスト】 ネイト・パーカー アーミー・ハマー アヤ・ナオミ・キング ペネロープ・アン・ミラー

映画.comより

内容は非常に辛いです...。
映画作品としては、映像がきれいだし、取り入れてる音楽も民族的な太鼓のビートやゴスペルとかすごくよかったです!

ナット・ターナーの幻視をみる描写も、神秘的な表現で引き込まれました。

 脚本、製作、監督がナット・ターナーを演じているネイト・パーカーというのもすごい。

『バース・オブ・ネイション』より © 2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION

この作品は、2016年1月25日にサンダンス映画祭で、米劇作品コンペティション部門で観客賞と審査員賞を受賞しています。
配給権を巡っては、サンダンス史上最高額となる1750万ドルで、Netflixをおさえてフォックス・サーチライトが獲得したことも当時話題になっていたようでした。

■印象的なシーン<映画ネタバレあり>

この映画では奴隷の悲惨さの描写も多かったけど、
あいまにあるチェリーとのピュアな恋愛の表現がすごく素敵で癒されました。
おそらくこのチェリーは架空の人物なのでしょうか。

『バース・オブ・ネイション』より © 2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION


しかし、その愛する妻にもなったチェリーが暴行されてしまいます。

顔がボコボコになったチェリーをみてナットは
"誰にやられたんだ、おれが仇をとってやる"
と言うんですが、

そこでチェリーは

「剣をさやに納めなさい、剣を取る者はみな剣で滅びる」
(マタイによる福音書 26章52節)


ナットが説教していた聖書のことばを言います。
あなたが必要だから戦わないでそばいにてほしいと伝えます。

もちろん仕返ししたらナットは殺されてしまうので、こういう場合でも、今まではずっと泣き寝入りするしかない状況だったんでしょうか。

ここの部分は架空かもしれないけど、
奴隷制の時代はきっとこんな悔しくて辛い思いをしてきた人が沢山いるんだということが、他の作品を観ても感じとれます。
(ほんとに信じられません...)

そして、何か行動を起こさないと何も変わらないこの状況にナットは反乱を企てました。

ただその内容が、奴隷をもっている白人の老若男女、お年寄りも子供もすべて殺害するというものでした。


これが正しいと断言できるのか。

子供はただ単にその家に生まれてきただけなのにひどい!
でもこの反乱がなければ永遠と奴隷解放につながらなかったかもしれないじゃないか!
と、両極端の思いが私の頭の中にありました。

白人が黒人を支配するのは報復を恐れていることからともいわれているので、実際この反乱によって後に無関係の黒人もたくさん殺害されてしまった。

この問題ってほんとに何が正しいのかほんとにわからない。

非常に難しいです。

なので、ナット・ターナーに関しても
"ヒーロー"と呼ぶ人もいれば、"殺人鬼"と呼ぶ人もいるそうです。

『バース・オブ・ネイション』より © 2016 TWENTIETH CENTURY FOX FILM CORPORATION



■もうひとつの The Birth Of  A Nation


この" The birth of nation (國民の創生)"というタイトルは過去に、南北戦争からの二つの名家の出来事を白人目線から描いた映画があり、差別的要素があって上映の反対運動とかもあったが結果大ヒットしたらしいです。

國民の創生』(こくみんのそうせい、原題: The Birth of a Nation)は、D・W・グリフィス監督による1915年公開の無声映画。監督・脚本はD・W・グリフィス、主演はリリアン・ギッシュヘンリー・B・ウォルソール英語版)。アメリカ映画で最初の長編映画となった。

引用=「國民の創生」wikipedia

主演兼監督の ネイト・パーカーは、それを以って意図的にこのタイトルをつけたようです。

原題が巨匠D・W・グリフィスの『國民の創生』と同名なのは「あの映画はトーマス・ディクソンの小説『クランズマン』を基に描かれ、(南北戦争の)南部連合軍の子息によって脚本は記され、南北戦争とその後の連邦再建の時代が描かれていた。その後、有色人種が政府の役人として就任することが増え、白人の特権が失われ、国がひっくり返った。そこでD・W・グリフィスは、あの映画で白人至上主義を容認して描いた。現在も(有色人種を)映画で描くと、あの『國民の創生』に縛られている気がして、真のアメリカの英雄(ナット)を通して洗い落とす必要があった」と明かした。

引用=シネマトゥデイ


ネイト・パーカーの意図通り、
" The birth of nation (國民の創生)" とネット検索すると、
白人目線と黒人目線で両方の作品が出てきます。

私はDVDをレンタルして視聴しましたが、DVDには特典で、ネイト・パーカー監督の短編映画「アメリカに変革を」も収録されていて、そちらも現代の差別問題を表している内容でした。

ネイト・パーカーは、人権問題について強い思いや訴えがある人だと感じました。


■ちょっと残念な話


この作品は日本でも公開予定であったが、作品がアカデミー賞ノミネートを期待されていたことから、ネイト・パーカーの過去の疑惑(大学時代に関わっていたとされる強姦疑惑)が浮上して日本の公開が中止になったそうです。
疑惑は無罪になっており、当時のコメントで「双方同意の上で」と語っているが、実際のところ被害者の女性は自らの命を絶っていたことが発覚しています。

映画にも暴行などの描写があるので、日本の映画レビューのコメントでも賛否の意見があるのが見受けられます。

私もこの事実を後から知った時は非常に残念な気持ちになりました。

疑惑と作品は別ではあるけど、映画の内容が内容だけに・・。

日本以外でも多くの国で公開中止になってしまったようです。

その3年後に、ネイト・パーカーが再度監督兼主演で映画「アメリカン・スキン」を制作。

ヴェネチア映画祭で上映された『アメリカン・スキン』は、無実の息子を警官に射殺された父親が、法廷で裁かれることのなかった警官に、独自の裁きをほどこす社会派映画。米国で多発する警官の発砲事件に対する深い心理的アプローチが評され、ヴェネチア上映時にはスタンディング・オベーションを受けた。

ヴェネチアで彼は、「3年前の私は、自分が置かれている状況について、正しい判断ができていませんでした。今まで時間をかけて考え抜き、周りの人々からたくさんのことを学びました。当時の無神経な反応によって傷つけた、たくさんの方々に謝罪します」と語った。そのパーカーと同作のためにヴェネチア入りした監督スパイク・リーは、「ネイトは隠れず表に出てきた。質問にも答えている。だから、我々も前に進むのだ」と独自の表現でサポートを表明。米「バラエティ」紙のオーウェン・ギルバーマンは、同作レビューにて「観客が彼の作品を観る気になるのか、これが彼にとって真のカムバックになるのかは、まだわからない。ただ、同作が観るに値する作品であることは確かだ」と綴っている。

Oricon News「#MeToo波及から2年、作り手と作品は切り離して考えられるものなのか?」より


過去の疑惑は許されることではないですが、ネイト・パーカーがこういう作品を作り続けるということは、過ちと向かい合いながら、もっと一般の人たちにも悲しい歴史や、悲しい現実があるを知ってもらいたいというものすごく強い意志を感じます。

現に私はこの作品で衝撃を受けた一人でもあるので。

受け取り方は人それぞれですが、私はこの作品は多くの人が観るべきだと思いました。
未視聴の方にはぜひ観ていただきたいです。



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