男性への性教育事業開始のご報告
みなさんこんにちは!ソルト・パヤタスボランティアの須多です。
2023年、ソルト・パヤタスは新たにフィリピンにおいて男性へ性教育事業を開始します。
そこで3つの記事に渡り、当事業の実施背景や事業内容について紹介していきたいと思います。
1つ目となる本記事では、日本で会社員をしながらソルト・パヤタスの理事長を務める上田(ジョウタ)にパヤタスから届いたSOSのお話しとなります。ここからはより臨場感を伝えるため、上田目線で書いていきます。
パヤタスからのSOS
2021年4月、パヤタスで支援をしていた元奨学生のテレサさん(仮名)から日本で働いている私(上田)に久しぶりにメッセージが届きました。
その内容は、「パヤタスに住んでいるマリアさん(仮名)が大変なことになっているから助けてあげてほしい」というもの。
また、文章と共に、目も開けられないくらい全身の皮膚がただれてしまい、変わり果てた姿のマリアさんの衝撃的な写真が添付されてきていました。
確かにマリアさんの面影はあったものの、髪も抜け落ち、以前の彼女とは全く別人の姿でした。
この連絡に、私は「わかった。教えてくれてありがとう。なんとかする。」とすぐに返信し、フィリピン事務局長のTimにすぐにパヤタスに行って事実を確認してほしいと連絡をいれました。
その晩、やはりマリアさんの病状は写真通りだったこと、お金がなくて病院には通えていないことが分かりました。
マリアさんはまだ23歳ですが、2人の子どもがいて、母親と同居しています。
収入の安定していないパートナーの男性は過去に他の女性と結婚していたため、マリアさんとは籍を入れていません。
マリアさんは高校生までソルトの支援を受けていました。
私が現地で大学院に通っていた最後の年に高校2年生になったばかりだったので、担当していた大学受験プロジェクトには参加していなかったのですが、よく勉強の話や学校の話をしてくれる気さくな高校生でした。
しかし、妊娠をきっかけに学校を中退することとなり、学費を終了したという経緯があったため、病状の報告が現地の事務局にあがってきていない状況でした。
「個人的に医療費は全て出すから病院に連れて行ってほしい」
マリアさんはソルト・パヤタスが支援している奨学生ではないので、支援するための資金は団体にないことはわかっていました。
なので私が個人的に医療費を出すという約束をし、Timに病院に連れて行ってもらうように依頼をしました。
翌日、Timがコロナ患者ではない事を病院に説明した上で、ようやく診察と検査を受けることができました。
診断結果は免疫の病気でこれからも投薬しながら病院に通う必要があるということでした。
一旦は薬をもらい、マリアさんも家に帰って様子を見ることになりました。
私は、「よかった。快方に向かってほしい。」と心から願いました。
そして3週間後の5月半ば。
「急な体調悪化によってマリアさんが昨日の深夜亡くなった」と最悪の知らせが現地のスタッフから報告が入りました。
この知らせを受け、私は頭が真っ白になりました。
高校生の頃から勉強熱心で、将来有望な奨学生だったマリアさんが、なんで23歳という若さでこの世から去らないといけないのか。
そしてマリアさんの子どもはこの後どうするのだろうか。
同時に大学院卒業を期に日本に帰国をしてしまった私は、自分を責めました。
あの時に1年、半年でもフィリピンに長くいれば、マリアさんの大学受験の支援ができたかもしれない。
そしてもう少し違った未来を創ることができたかもしれないと。
「なんでこんな社会構造になっているのか」
マリアさんの体調不良は私が報告を受ける何日も前から続いていたはずです。
お金がない事を理由に病院に行くことができませんでした。
10代で妊娠し、2人の子どもを養わないといけない23歳のマリアさんは自分の子どもと同居している母親に負担を強いたくなかったのでしょう。
じゃあパートナーの男性は何をしていたのでしょうか。
若気の至りとはいえ、お金がない中でなんで2人も子どもをつくったの。
マリアさんの将来のこと考えていたのか。
怒りが込み上げてきました。
フィリピンのいわゆるスラム地域では、女性の早期妊娠が社会的な問題になっていることは以前から知られていましたし、私たちが奨学生のなかにもマリアさんのように早期妊娠が理由で学校を辞めていった女性が何名もいました。
ただ、こんなに悲しい別れ方をしたのはこれが初めてでした。
この社会構造をなんとかしないといけない。
せっかく機会に巡り合い、学校に通えるようになったのにも関わらず、早期妊娠で学校を辞め、また貧困のサイクルに戻ってしまう女性を二度と出したくない。
「自分達ができることは何か」
じゃあ、私たちができることは何か。
現状の解としては性教育事業を実施することだと思っています。
しかも女性に対する性教育ではなく、男性に対する性教育が必要だと考えています。
最後に
ここまでが、ソルト・パヤタスが新たに性教育事業を開始することとなった経緯になります。
この出来事から、私たちは事業実施のための資金を得るために奔走し、ついに今年2023年、一般財団法人日本国際協力システム様(JICS)からの助成金を得て、正式にローンチする運びとなりました。
次回の記事でも引き続き、性教育事業についてご紹介していきたいと思います。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?