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フィリピンで男性へ性教育事業が必要な理由
みなさんこんにちは!ソルト・パヤタス ボランティアの須多です。
前回の記事でご報告いたしました通り、2023年、ソルト・パヤタスは新たにフィリピンにおいて男性へ性教育事業を開始します。
2つ目となる本記事では、フィリピンにおける現状と男性への性教育事業の重要性についてお伝えできればと思います。
宗教と性教育
フィリピンでは、国民の83%が信仰しているカトリックの影響により長らく公教育の中で性教育が実施されてきませんでした。
2012年には性教育に関する法案(リプロダクティブヘルス法 )が可決されたものの、一部の私立学校を除き、現在でも性に関する教育はタブー視される傾向にあります。
このような背景もあって、フィリピンでは女性の早期妊娠が社会問題になっています。
実際に、ソルト・パヤタスで支援をしてきた奨学生の中にも、妊娠したために学校を退学してしまう子たちも多くいました。
しかしながら、社会的にもセンシティブな領域ということもあり今まで性教育の実施に踏み切ることができていませんでした。
性に関する知識の男女差
前述の通り、フィリピンでは一部例外を除き、近代的な性教育が学校で実施されていない状況にあります。
つまり、子どもたちが性に関する正しい知識を身につける場が不足しているのです。
しかしながら、パヤタスとカシグラハン地域で子どもを持つ女性数名にインタビューを行ったところ、以下の2点が判明しました。
生殖に関する一般的な知識は備わっている(低容量径口避妊薬・低用量ピルの服用、コンドームの使用、子宮内避妊用具の装着等)
妊娠・出産をコントロールしたいという意思がある
このように、女性たちは学校外で、母親や助産師、政府が実施する条件付き給付金のセミナー(フィリピンでは通称4Psと言われる国主導のプログラム)*などを通し、性に関する一定の知識を得ていることが解りました。
その一方で、男性の性に対する知識の不足は深刻です。
セミナーなどに自ら通わない限り、性に関する知識を身につけることができないのです。
以下の表は、フィリピンの性教育の現状をまとめたものになります。
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*現金を給付する代わりに、受益者は所定の条件を守らなければならないというもの
男性の性に関する知識と経済リテラシーの不足による問題
前述したような男性の性に関する知識の不足に加え、経済リテラシーの不足により、多産と家計の圧迫という新たな問題も生まれています。
私たちが活動を行っている貧困地域では、男性は家計を助けるために早い段階から学校教育を諦め、労働をすることが多い傾向にあります。
そのため、男性は子どもの頃に適切な算数スキルを身につけることができず、大人になった時に家計の収支をコントロールすることができません。
このような男性が家計の決定権を握っていることも多く、そのため、自らの養うことのできる範囲を超えた子どもを母親に妊娠、出産させてしまっているという状況にあります。
まとめ
このように、フィリピンにおける性教育の状況は、男女間で非常に差があることがわかります。男性が家庭内で意思決定権を有する、家父長制社会では女性だけがセミナーに通い、知識を性に関する知識を取得するだけでは十分な解決策にはならないと私たちは考えています。
次回の記事では、具体的な事業内容についてご紹介したいと思います。