1. はじめに
コウメ太夫といえば、
といったように支離滅裂な2つの事象に言及した後にチクショー!!と発言するネタが有名です。これらは支離滅裂に見えて実際にはそれなりに筋が通ったストーリーが存在しています。
例えば今の例では本人曰く、朝起きる前は寝ていて立ち上がる(二足歩行)という様をペンギンと称しているようです。
既にネットではコウメ太夫のネタをChatGPTにやらせている事例を多く見かけていますが、それらは全く関係のない事象を羅列しているだけで上記のような裏側のストーリーが存在しておらず、またニョキニョキペンギンといったような独自性のある表現を出力させることもできていません。ただ単に「〇〇と思ったら〜、〇〇でした〜、」のフォーマットに対して単語をランダムに入れさせているだけです。より本物さを出すために創意工夫をしようとは思わないのでしょうか?
そこで本記事では
”一見、支離滅裂に見えるがネタの説明が可能”
という点を重視してChatGPTを教育します。使用バージョンはGPT4です。
2. 方法
2.1 本物のネタとその解説の学習
まずは本人によってネタの解説が行われている事例を学習させます。
特にスッキリで披露されたネタは番組内で説明を求められており、たくさんのサンプルを入手することができます。
以下にChatGPTに入力したネタと簡単な解説の例を載せます。
解説
加藤浩次はMCとして立って仕事をすることも多く、それによって膝が鍛えられ筋肉で包まれているという様を表現。
解説
高速で猫踏んじゃったを弾くということは高速で手が動いていることであり、空気がたくさん手に当たるということが起こり得る。
解説
主人公はクリスマスでケーキを買えずにお腹が空きキャンドルを食べてしまった。
解説
バリウムがたくさん含まれたフードコート(フードのついたコートを指すようです)はドロドロに溶けて必死にフンを転がしてるフンコロガシが誤って飲んじゃったらフンコロガシのフンも白くなっちゃうからさすがに逃げる。
当然解説ありのみのネタでは個数に限界があるため、それ以外のネタも解説なしで複数個学習させています。
そして出力させたものがこちらです。
さすが最新AI、あまりにも論理的です。初期のコウメ太夫だったらこのくらいの方があり得そうですね。
残念ながら現在のコウメ太夫はここまでの前後関係をもたせるようなことはありません。
2.1 支離滅裂の追求
より前後関係を支離滅裂にしてほしいと要望します。
だいぶいい感じになりましたが、まだ前後関係のイメージはしやすいため完全なコウメ太夫とは言えません。
一度これらの出力を本物のネタと比較し相違点を考えてみます。
例えばニョキニョキペンギンのネタの場合
朝ごはん→起きる→二足歩行→ペンギン
というように連想が複数回必要なことがわかります。一方でChatGPTの提案したネタは一回の連想でたどり着けてしまいます。この点を伝えて新たなネタを考えてもらいます。
まだ関連性の予想は簡単にできてしまいます。
2.3 本文そのものの意味不明さの付加
他にも本物と異なる要素を考えてみます。
ChatGPTの出力した文章は正しい日本語であるためそれだけでしっかりと意味がわかります。しかし本物のネタではニョキニョキペンギンというように本文自体の内容が意味不明である場合が多く存在します。
まだわかりやすいですがこちらの意図は理解してそうです。
2.4 フィードバック方式で改良
これ以上は私自身が感じた違和感を言語化し、指示をすることが難しいため「複数個の出力に対して私がフィードバックを行う」というスタイルで精度を高めて行きます。
すでに全体的にかなりいい感じです。たくさん出力させるアプローチの重要さを感じます。特に2つ目のネタは私の琴線に触れました。
以降、「何番目のネタはいい、何番目は微妙」と評価していき複数個のネタを出力させました。選りすぐりのは最後にまとめます。
2.5 独自言語の創造
ここまでのいくつかの出力と本物のネタを比較したときにニョキニョキペンギンやひざ掛けプロテインといったような独自の言語の使い方という要素がまだ再現できていないことに気づきました。
これもフィードバックを行い複数個出力させています。
3. 出力結果:選抜AIコウメ太夫
以上の手順によって得られたAIコウメの中から私の琴線に触れたものを紹介します。
※この中に本物のネタが複数紛れています。あなたはわかりますか?
答えは記事の最後
鮭のお刺身を食べようと思ったら〜、パラシュート雲でした〜。チクショー!!
新幹線で旅行に行こうと思ったら〜、カエルのケロリンパでした〜。チクショー!!
プールで泳ごうと思ったら〜、ゲノム編集でした〜。チクショー!!
人力車がこっちに来るかと思ったら~、 野生のウトヴァラヘルカイトでした~。 チクショー!!
午前中にジョギングをしようと思ったら〜、ダークマターでした〜。チクショー!!
熱いお茶を飲もうと思ったら〜、ゴリラのブランコでした〜。チクショー!!
ラインナップに入っているかと思ったら~、 パスポートケースないでした~。 チクショー!!
4. 今後の展望
この記事を書いているときに気づいてしまいましたが今回のAI小梅太夫は、「○○と思ったら~」に対してほとんど動詞(しかも、~しようとするという意味での使用ばかり)、後半は名詞のパターンばかりを生成しているようです。これもChatGPTに伝えればさらに最善が見込めそうです。人間側もコウメ太夫のネタへの理解を深めることでAIと本物の差を減らしていくことができるでしょう。
フィードバックの部分では人間側のセンスに影響されてしまうためもっと笑いのセンスに優れている人が行えばもっとよいAIコウメ太夫にすることができるのではないでしょうか。
5. 感想
単純に「〇〇と思ったら〜、〇〇でした〜、」のフォーマットに従ってください、と指示をするだけでもそのフォーマットに沿った出力を出してくれるのがChatGPTですが、こちらの希望との差を言語化したり言語化が難しい場合は複数候補を出してもらってフィードバックをするということをすることでかなり細かく複雑な要望にもしっかりと答えてくれることが確認できました。
つまり、最初に指示した〇〇の部分の穴埋めをさせるということだけではChatGPTの本来の能力を全く有効活用できていないと言えます。でもそれを知らない(or 目的に対して人間様の入力に誤りがある可能性を考慮してない)人は「なんだ、こんなもんか」と言うわけです。
現状この前者と後者の隔たりがかなりあるように感じます。
自分の宣伝
youtubeでこんなものを作ってます。
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