米国ローン延滞率上昇!?
NY連銀が公表した、「家計負債と信用に関する四半期報告書」によると、米国の家計債務残高は2023年第4四半期(12月末時点)で17.5兆ドルに達し、過去最高を更新しました。
主な内訳をみると、住宅ローンが12.25兆ドル(前期比+1120億ドル)で全体に占める割合は約70%と最大。その他、自動車ローンが1.61兆ドル(+120億ドル)、学生ローンが1.60兆ドル(+20億ドル)と、ともに約9%。そして、クレジットカードが1.13兆ドル(+500億ドル)で約6%となっています。住宅ローンとクレジットカード残高の伸びが目立ちます。
米国経済は強さが続いており、賃金の伸びが続いており、その結果、家計の許容量は増えるので家計債務残高が伸びるのは当然といえます。
一方で、学生ローンを除くすべての種類の債務で延滞率が上昇しており、特に、シリアス(90日以上で、著しく毀損する恐れのあるもの)といわれる延滞債権の増加が明らかになっています。さらに、その中でも、クレジットカードの延滞率の上昇が目立ちます(以下、青)。
さらに、シリアスな延滞へ新規に移行している比率もクレジットカードが急上昇していることがわかります。
そのクレジットカード債務のシリアスな延滞への移行を年代別でみると、18〜29歳、30〜39歳の若年層で急増していることがわかります。
このような傾向は自動車ローンでも見られ、多額の学生ローンや自動車ローンを抱える若年層ほど、滞納に陥りやすい状況になっていることがわかります。また、ここ数年の不動産価格高騰による家賃高騰が、持ち家の比率の低い若年層のお財布事情を圧迫しているという側面もあるでしょう。
それでも、全体的な延滞率は依然としてコロナ前の2019年4Qに比べて1.6%も低い水準に抑えられています。にもかかわらず、上記のような延滞債務への新規移行が増加しているのは何をあらわしているのでしょうか?
コロナ以降に政府から支給された給付金による超過貯蓄や、ここ数年の賃金上昇によって米国の家計のバランスシートは急激に改善しました。その過程で健全なローンも大きく伸びているため、足元で延滞債務は増えているものの、全体的な延滞率は依然として低いままに抑えられています。
ただし、上記で見たように若年層を中心に延滞債務は増加してきており、これは家計の支払い能力に格差が出始めている可能性を示しています。
若年層を中心に貯蓄の減少から後払いできるカード消費を増やし延滞率が上昇、その結果として銀行の融資厳格化が消費に影響を与え、米国経済にネガティブな影響を与えるという経路は無視できません。
とはいえ、足元では堅調な株式市場が資産価格を支え、強い雇用による賃金上昇が家計には追い風です。このあたりに変化が出てくると、リスクが顕在化してくる可能性もあるため注視していく必要はあるでしょう。