手取りが増える公的制度「ふるさと納税」「iDeCo」について
ふるさと納税とiDeCoは所得控除が受けられるので、所得税と住民税が減額になって手取りが増えます。
ではここで、ふるさと納税とiDeCoの概要をおさらいしておきましょう。
●ふるさと納税とは、応援したい自治体へ寄附することで「寄附金控除」が受けられる公的制度です。寄附金のうち2000円は自己負担額となり、それを超える額は所得控除が受けられます。
また、寄附金の使い道は自分で指定することができ、寄附をした地域の特産品を返礼品として受け取ることもできます。自分の好きな自治体や災害を受けた地域を応援するのに活用できます。
寄附をする人の収入や家族構成などによる「控除限度額」があり、その限度額までなら自己負担額の2000円を除いた全額が控除されますが、限度額を超えた分は寄附金控除が受けられません。とはいえ、控除限度額までの寄附なら所得控除が受けられるので、手取りを増やすことができお得です。
●iDeCo(イデコ)は老後資金を準備するのに活用できる私的年金制度です。自分で運用する商品を選んで申し込み、毎月掛金を拠出して(積み立てて)いきます。
iDeCoには国民年金の種別や企業年金などの加入状況による「拠出限度額」がありますが、次の3つの税制優遇措置が受けられます。
①掛金全額は所得控除となる
②運用益は非課税になる
③年金で受け取ると公的年金等控除、一時金で受け取ると退職所得控除を受けられる
原則60歳までは引き出すことができませんが、これまでは60歳~70歳までだった受給開始年齢が、2022年4月からは75歳まで延長されました。
また、2022年5月からは、iDeCoの加入年齢が60歳未満から65歳未満(※)に引き上げられています。老後資金の準備に活用できるiDeCoは、ライフプランに応じて始める時期や老齢給付金の受け取り方の選択肢が広がり、利用しやすくなりました。さらに、現役時代も所得控除で手取りが増やせるメリットがあります。
(※)60歳以上65歳未満でiDeCoに加入するには、厚生年金の被保険者であること、または、国民年金に任意加入していることなどの要件があります。
iDeCoと併用するとふるさと納税の控除限度額はどのくらい減るのでしょうか?
実質、自己負担が2000円で済むふるさと納税の控除限度額は、課税所得を基準に計算されています。そのため、さまざまな控除を受けて課税所得が減ると、ふるさと納税の控除限度額も減ってしまうのです。ここは意外と知られていない盲点です。
iDeCoは掛金全額が所得控除になるので、ふるさと納税をしている人がiDeCoを併用したら、結果として課税所得が減ることになります。
では、iDeCoとふるさと納税を併用したら、ふるさと納税の控除限度額はどのくらい減ることになるのでしょうか?
そこで、年収350万円、450万円、550万円の場合を例に、ふるさと納税の控除限度額を試算してみました。
<各年収で共通する条件>
・独身
・扶養家族はなし
・社会保険料は年収の15%
・考慮する所得控除は基礎控除、社会保険料控除のみ
・iDeCoには満額加入
①企業年金のない会社に勤める会社員の場合:年間の掛金総額27万6000円
②確定給付企業年金(DB)に加入する会社員の場合:年間の掛金総額14万4000円
・ふるさと納税の控除限度額は、下記の計算式を使用
◎控除限度額=個人住民税所得割額×20%÷{100%-住民税の税率10%-(所得税の税率×1.021)}+2000円
(参考)
総務省「ふるさと納税ポータルサイト」控除額の計算
「和光市」ふるさと納税の上限額の計算方法
●年収350万円の会社員
○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:3万5336円
○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:
①(掛金27万6000円)2万8834円
②(掛金14万4000円)3万1943円
iDeCoに加入することによって、ふるさと納税の控除限度額が、
①の場合は6502円、②の場合は3393円減額となります。
●年収450万円の会社員
○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:5万3511円
○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:
①(掛金27万6000円)4万3911円
②(掛金14万4000円)4万7021円
iDeCoに加入することによって、ふるさと納税の控除限度額が、
①の場合は9600円、②の場合は6490円減額となります。
●年収550万円の会社員
○iDeCoには未加入の場合
・ふるさと納税の控除限度額:6万9803円
○iDeCoに加入した場合
・ふるさと納税の控除限度額:
①(掛金27万6000円)6万2885円
②(掛金14万4000円)6万6194円
iDeCoに加入することによって、ふるさと納税の控除限度額が、
①の場合は6918円、②の場合は3609円減額となります。
どの年収でも、設定した条件下でiDeCoを併用した場合は、ふるさと納税の控除限度額が減ってしまうことがわかりました。
控除限度額が減るということは単純に考えると、iDeCoに加入することで、ふるさと納税で減額できる税金が減ってしまい、逆に損をするのではないかと思うかもしれませんが、実はふるさと納税とiDeCoの併用は、実際には損にはなりません。
結局、課税所得を下げたほうがお得ということです。
設定した条件のもと年収350万円、450万円、550万円のいずれの場合も、ふるさと納税とiDeCoを併用したら、ふるさと納税の控除限度額が減額されることがわかります。
しかし、ここで注目すべきなのは控除限度額が減額されたことではないのです。
iDeCoを利用すると「掛金全額は所得控除となる」ことをお伝えしましたが、今回の試算では、「①企業年金のない会社に勤める会社員がiDeCoに満額加入した場合(年間の掛金総額27万6000円)」「②確定給付企業年金(DB)に加入する会社員がiDeCoに満額加入した場合(年間の掛金総額14万4000円)」という2つの条件を設定していましたね。ここで注目したいのは、iDeCoへの掛金(27万6000円または14万4000円)です。
iDeCoでは掛金全額が「小規模企業共済等掛金控除」の対象となります。そのため、今回の試算では掛金の27万6000円、もしくは14万4000円は全額所得控除となるのです。つまり、iDeCoを利用することでふるさと納税の控除限度額にプラスして、iDeCoの掛金全額も所得控除に加わるため、税金がさらに減額されることになるのです。
では、どれくらいの税金が安くなるのか、年収350万円の場合で見てみましょう。
●年収350万円の税額を試算
①企業年金のない会社に勤める会社員の場合:年間の掛金総額27万6000円
○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:3万5336円
ふるさと納税では、自己負担額の2000円を除いた全額が所得控除となるので、3万5336円の寄附をした場合、所得控除となるのは、以下の金額です。
ふるさと納税による所得控除 3万5336円-2000円=3万3336円 …(A)
○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:2万8834円
ふるさと納税による所得控除:2万8834円-2000円=2万6834円
iDeCoによる所得控除:27万6000円
合計 30万2834円 …(B)
(A)と(B)の差額 26万9498円⇒(課税所得は1000円未満切り捨て)26万9000円
所得税(5%)1万3400円
住民税(所得割10%+均等割5000円)3万1900円
合計 4万5300円
②確定給付企業年金(DB)に加入する会社員の場合:年間の掛金総額14万4000円
○iDeCoには未加入の場合
ふるさと納税の控除限度額:3万5336円
ふるさと納税による所得控除 3万5336円-2000円=3万3336円 …(A)
○iDeCoに加入した場合
ふるさと納税の控除限度額:3万1943円
ふるさと納税による所得控除:3万1943円-2000円=2万9943円
iDeCoによる所得控除:14万4000円
合計 17万3943円 …(B)
(A)と(B)の差額 14万607円⇒(課税所得は1000円未満切り捨て)14万円
所得税(5%)7000円
住民税(所得割10%+均等割5000円)1万9000円
合計 2万6000円
つまり、ふるさと納税とiDeCoを併用することで、ふるさと納税のみの場合に比べて、iDeCoの掛金が
①27万6000円の場合:4万5300円
②14万4000円の場合:2万6000円
税金が安くなるのです。
なお、年収450万円、550万円の場合も計算してみたところ、次のような結果になりました。
・年収450万円の場合:①4万4900円 ②2万5500円 税金が安くなる
・年収550万円の場合:①4万5300円 ②2万6000円 税金が安くなる
いずれの場合もiDeCoを併用すると、ふるさと納税のみの場合に比べて税金が安くなる結果となりました。
まとめ
以上のことから、ふるさと納税とiDeCoを併用したほうが、より課税所得を減らすことができるので、所得税と住民税が安くなることがわかりました。所得控除になる公的制度を利用して課税所得を下げることができれば、手元に残るお金が増えるということです。
毎月の手取りを増やすことと老後資金を準備すること、2つを同時に叶えることができるふるさと納税とiDeCoの併用を検討するのは節税としては非常に有効な手段と言えます。
よろしくお願いします🥺