林檎の妖精 #28
列車に乗り込むと、後ろを振り返った。
イシキュアマナムがこちらを見て微笑んでいる。
横には同じ顔の小さい子もいる。
「ほら、ちゃんとバイバイしないと。」
琴は覗くように見ているが、ぐしゃぐしゃに泣いてしまい喋れない状態だった。
私も辛い。本当はもっと長い時間、一緒にいさせてあげたかった。
またいつか会える・・・そう思いたいが、心のどこかで多分もう会えないような気がしていた。
あの小さい子が手を振っている。
琴も、一生懸命それに応える。
汽笛が鳴った。1回・・・2回。
ドアが閉まり、ゆっくりと走り始めた。
席に座ると、琴はまだ少し泣いている。
窓の外を見ると、周りの景色にどんどん亀裂が入り崩れ始めている。
これが、この世界の終わりか・・・。
琴は、少しずつだが落ち着きを取り戻してきた。
「お花、ちゃんと持っててね。お母さんにあげるんでしょ?」
「うん。」
(・・・何か元気を取り戻す方法は。)
向こうに置いてきた妻達は、私たちが急にいなくなって不安になっていないだろうか。
そもそも、どのくらいの時間が経ったのだろう。
(携帯、携帯・・・。)
・・・無い。
(あれ?・・・いや、こっち来てからは出していないから・・・車に置いてきたか?)
Created by Ryohei Osawa
こちらは、キングコング西野亮廣さんが現在制作を進めている【夢幻鉄道】という作品の「二次創作」となっています。