林檎の妖精 #1

七月七日。

織姫と彦星が、一年にたった一日だけ会うことを許された日。

「七夕」まで、あと数日。

夜の20時過ぎ。改札を出て家までの道のりを歩いている。東京とはいえ、郊外のこの時間は人通りもまばらだ。日中に比べると、気温もだいぶ落ち着いている・・・むしろ涼しいくらいだ。

今日は金曜日。今週も疲れた。明日は休みだし、今日はお酒でも飲みながら録画してある番組でも見よう。家が見えてきた。

玄関を開けると、その音に気が付いたのか部屋の奥から走ってくる足音が聞こえる。長女の琴(こと)だ。

「あ、父さんお帰り~!はい、これお手紙だよ。」

そう言って折り畳んだ紙を渡してくる。今年で5歳になる琴は、まだしっかり字を書くことは出来ない。この「お手紙」に書いてあるのも、文字でなく絵だ。様々な色を使って、沢山の絵が描いてある。

「沢山描いたねぇ~、これは何?」

「これは太陽で、こっちは木だよ。」

毎日のように絵の描かれた「お手紙」をくれる。娘とのこのやりとりに、一日の疲れが癒されていく。

「あ、お父さんだ!お父さんだよ!」

元気な声が部屋の奥から聞こえてくる・・・どうやら次女も起きているようだ。この娘たちの笑顔で、毎日頑張れている。

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Created by Ryohei Osawa

こちらは、キングコング西野亮廣さんが現在制作を進めている【夢幻鉄道】という作品の「二次創作」となっています。

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 私が提供した案を作品にして頂きました^^


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