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『アリスの服が着たい』子供服のヒントを探して

この記事は、2020年8月にインスタグラムアカウント(@sara.salonica)に投稿した内容を編集し再掲したものです。
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子供服を作るようになってから、海外子供服の可愛さに惹かれてその背景を知りたいと思うようになりました。

そんな頃に見つけた『アリスの服が着たい』という不思議なタイトルの本。イギリスの子供服の歴史とその背景について書かれた本です。

古い服やヨーロッパ子供服が好きな方には、きっと面白い内容に思いましたので紹介します。

タイトルだけ聞くと一体どんな内容なのか想像もつきません。
Amazonに書かれた概要を見て、何やら子供服の歴史についてかかれているようだとぼんやりとした興味で、まずは図書館から借りてみることにしました。

読んでみると、もともと古い服に惹かれていた私はみるみる吸い込まれました。何しろ、挿絵だけみてもノスタルジックで可愛らしい服を着た子供たちがたくさん描かれているのです。

私の感動はさておき…本の内容は洋服文化の発祥であるヨーロッパ、イギリスでのことで、”子供服”が歴史的な流れの中でどうやって生まれ変化してきたかということが書かれています。

序章の”子供服の歴史”から少し抜粋します。

坂井妙子 著『アリスの服が着たい』勁草書房、2007年
“西洋において、子供服はいつから存在するのだろうか。「子どもの発見」が社会的に自覚されたのが17世紀以降というから、それ以前には子供、そして子供服も倫理的には存在しないことになる。実際、非常に長い間、彼らは小さな大人として扱われ、成人服の縮小版を纏っていた。高貴な身分に生まれた子供は、窮屈で動きにくそうな正装で写真に収まり、下々のものは粗末な大人の服のミニチュア版を纏っていたにすぎない。幼い彼らの活動や、衛生面に配慮した服は存在しなかったのである。(中略)
それでは、子供の発見と共に、子供服も生産されるようになったのだろうか。答えはNoである。(中略)
子供が大人と異なる服装をするようになったのは、1770年代以降のようである。…


ここから少しずつ本題ですが、本格的には19世紀後半から子供専用の服が考案されていきます。
それと同時にこの頃、ミドルクラスが増えてきたことで子供に深い愛情を注ぎ(それまでは子供が成人になるまで健康に育てること自体難しかったのだろうなと思います)、子供を中心に家庭生活を送ることが主流になったといいます。
そして、当時流行した児童文学、『不思議の国アリス』や『小公子』などの登場人物の服装が商品化され、それを子供に買い与えるということにもつながっていきました。

物語の登場人物の服装を”キャラクター子供服”と表現しているのですが、キャラクターの絵がプリントされているとかいうものではなく、アリスが着ているエプロンや、物語にでてくる女の子が着ているハイウエストのワンピースやボンネットなど…です。
これが、今のヨーロッパ子供服ブランドでも見かけるものが多くあり、ものもとの文化の土台としてそのような可愛らしい子供服のデザインが受け継がれていることが感じられました。

そして私の強く印象に残ったもう一つのことは、急速な近代化で生活が豊かになる一方で、この変化に不安を覚える人々も多く、過去の時代(それほど遠くなく、親しみのある二世代ぐらい昔)を心のよりどころとする風潮もあったということ。

この子供の頃の”「黄金時代」の思い出”は、実はアリスのドレスをはじめ、他の児童文学にも反映されていたのだそう。

私自身、子供服を作るときにはなぜか、少し懐かしいイメージを投影しているように思います。

もちろん、今流行の子供服デザインもあると思うのですが、子供服となると無垢な子供らしさや、普遍的な懐かしさを思い描いてしまいます。

自分が子供だった頃の環境と我が子を取り巻く環境の変化に戸惑い、少し昔の時代のようにおおらかに育てたい、というのはいつの時代の親にも共通するものなのかもしれません。

初めは図書館で借りたのですが、手元に置いておきたくて(私の理解力では2週間でとうてい読みきれなかった...笑)、ユーズドを購入しました。
素晴らしい本なのですが今は絶版のようです。

この本に出てくるケイト・グリーナウェイという絵本作家のものも、とてもとても可愛い絵本でした。
そちらについてはまた改めて書きたいと思います。

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