祓い師イツカ●第2話 男の子Ver[暗闇にあるもの]
●第2話[暗闇にあるもの]
「まだやるって決めてないからね 祓い師、
颯人の家の仕事」
そう言うイツカに、颯人は言った
『うーん、結構合ってると思うんだ イツカに』
「なんでだよ?」
『まあ もちろん 霊能力の高さ、あとは…性格?』
「へ?」
『あぁ後、言っとくと…
もうイツカの能力、元のように低くには戻らないよ』
「え!?颯人が離れたら、戻るでしょ?!」
『ここまで強くなるとさ、無理だね、
花開いたもの もう元には戻らな〜い』
「ふざけて言うなよ、そんな…そんなーーー」
『どう、やる気になった?』
なんかハメられた気がする
イツカは頭を抱えた
週末__
「こんにちはー」
イツカは八継颯人の実家を訪ねた
「こんにちは、いらっしゃい
颯人のお葬式、来てくれてありがとう」
颯人のお母さんが出迎えてくれた
穏やかで優しそうな人だ
「これ どうぞ」イツカは、手土産の袋を渡した「ありがとう、まぁ颯人とおばあちゃんの好物、芋羊羹ね
あの子、おばあちゃん子だったよ
どうぞ上がって」
颯人の家は、歴史のありそうな かなり広い一軒家だ
仏間で颯人の位牌に手を合わせる
お母さんが羊羹とお茶を仏壇に供え
僕の座っているテーブルにも並べてくれた
「イツカ君、颯人と上手くやってくれているみたいね」お母さんが言う
「え、あ、あの、視えてるんですか?」
イツカは返す
「ええ、まぁ、家は代々一応 継いでいるのでね
おばあちゃんや颯人ほどではないんだけど」
はぁそういうものなんだ…
「あっそうだ、颯人さんが遺してる、
お札とか知ってますか?」
「あぁそれなら、そこに」そう言ってお母さんは
仏壇の隣に置いてあった、四角い木箱を出してきた
「ありがとうございます」
イツカは開けるのを少し戸惑った
“どんなモノが入ってるのか…”
開けた箱の中には、お札、木の枝、水晶、ろうそく、お香、それに…
「この包み、何だろう」イツカは、小さな和紙の包みを取り上げた
『それは塩』さっきまで仏壇の羊羹に顔を近づけていた颯人が、いつの間にか隣に来ていた
「塩?食塩?」
『そう』
「これ、どうすればいいの?」
『うん、まぁ身につけておいたらええよ
お守り代わり』
颯人はにやりとした
「こんなの効くのか?」思わず言った僕に、颯人は
『当たり前やろ、オレが包んだからな』と自信ありげに答えた
『それよりイツカ、庭の納屋 ちょっと見に行ってくれない?』
「納屋?
お母さん、納屋になにかあるんですか?」
「あぁそうね、うん、うん」と、ぶつぶつ言い歩くお母さんについて一緒に外へ出る
「ここ開けるの 久しぶりなの」そう言いながら納屋の扉を開くお母さんの後ろから、イツカは中を覗き込んだ
「ん?え、え!まっくろくろすけ じゃん!」
扉から光が差し込んだ部屋の中で、黒いもさもさしたものが視界の端々に散った
「これ、イツカ君どうにかできたりする?」
そう聞かれた イツカだったが
「いや、無理です! 今の僕に そんな力ありません…」
そう返すしかない
「…颯人」
イツカは後ろを向いた
『掃除しろ』
「掃除?他に何かないの?ええい!みたいな、お祓いの呪文とか」
『バカかお前、今のお前には無理やろ』
『掃除は基本!オレが死んでから何もしとらんかったんやろ、空気が淀むと色々つきやすくなるもんや』
確かに、言われるとその通りかもと思う
「あの、僕も掃除、手伝います」
“今日の休みは潰れたな…
仕方ないか”
「ところで イツカ君の家系はうちと同じようなものなの? その 霊能力」
「え…僕の家はそんなことは」
そう言いながら イツカは あることを思い出した
「そういえば 母方の祖母は占いのようなことをやっていました
もうずいぶん前に亡くしたんですけど」
「そう、じゃあ颯人と同じような感じなのかもね、隔世遺伝」
「はぁ…」
「じゃあうちの仕事、イツカ君が継いでくれるって 事かしら?!よろしくね!
何かあればお手伝いするわ!」
「いや!お母さん!そんな何でそうなるんですか?!」
「違うの?颯人がとっても懐いてるみたいだし、
それにこの仕事 お金も いいわよっ」
お母さん、なんでそんなに、はしゃいでるんですか?!この家はどうなってるんですかー!
_3時間後
「やっと終わったー疲れたーー」
「にしても…颯人の家って広いね」
『うん、おじいちゃんが建てた家 なんだよね
敷地内に道場あるんだよ、おじいちゃんとお父さんがやってる
お前も通えば 体力つくと思うぜ』
「そうなんだ、、考えとくよ」
「…あのさぁ来週 進路相談でしょ?」
イツカは帰り道、颯人に話しかけた
「颯人は学校にどういう風に進路伝えてたの?
進学して仕事と並行しようとしてたの?」
『いや おばあちゃんも2年前に死んでるし仕事 1本でやっていこうかと思ってたよ 』
「僕どうしようかな…どう言えばいいんだろ」
『そや!オレの家の道場継ぐってことでどうや?
話つけとくで!』
さすが
能力一家、死者と家族会議出来んのかよ…
『お前んちって 両親は能力あるの?』
「お母さんはもしかしたら少しあるかも
父さんはないかな、僕の両親 再婚同士なんだ」
イツカは、住んでいるマンションのエレベーターを降り部屋へ向かった
「こんにちは」
隣の奥さんとすれ違い軽く会釈をする
『イツカ、誰に挨拶したん?』
「誰って、最近 引っ越してきた隣の奥さん」
『隣は、残された旦那1人暮らしやないの?』
ん?確かに、引っ越しの挨拶に来たのはイケオジ?ちょっと影のある男の人 一人だった…
「え!ええぇーー!」
『生きてる人間と区別がつかんとは、、
これからコントロール出来るようにみっちり修行やな!』
「そんなーー!……奥さん放っといていいの?」
『まぁ悪さはせんやろ、
あの奥さんが成仏できるかどうかは旦那しだい、かな』
「残されて落ち込んでる旦那さんが心配で居るってこと?」
『気になるなら、お隣さんと会った時 挨拶だけでも声をかけてみたら?』
颯人に言われたイツカは渋い顔をしながら
“僕が声をかけて、少しでも気持ちが動くのなら、そういうのも「人を上げる」っていう僕の仕事の一つか”と思った
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