#5 ヨーロッパ研修記 〜Oedipusの影響力と変化〜
2019年、コロナ前にアムステルダムを訪れた時、Oedipus(エディプス)は新進気鋭のブルワリーの空気をつよく纏っていた。ビールの高い品質はもちろんのこと、自由を感じる親しみやすさと洗練された雰囲気が両立していて、個人的にとても好きなブルワリーだ。そして4年経った今、久しぶりにアムステルダムを歩き、驚いたことの一つに、Oedipusの変化が挙げられる。
2019年にHeinekenが買収し、大手傘下に入ったOedipus。彼らの流通網を活かして販路を拡大しているのだろう。特にHeinekenが強いアムステルダムだからか街中を歩いていると、Oedipusのビールを見かける機会がとても多い。それはボトルショップはもちろんのこと、どこにでもあるような街中のスーパーや自分がステイしていたホステルでさえ、Oedipusのビールを買うことができる。
またローカルのビール好きに聞いてみると、最近になって経営の体制が本格的に変わったよう。ブルワリーの見学のため、事前に連絡をしていたのだが、残念ながら返信がなかった。しつこく連絡してみようと試みたもの、やたらと問い合わせ先も多く、役割や部署が細かく分割されていた。変化の過程だからか、あるいはこの辺りも大企業のグループ化ゆえなのだろうか。また明らかに製造されるビールの種類も増え、以前では見かけなかったカンニングされたビールも販売していた。
なお、この日はOedipusのタップルームとブルワリーに平日の夕方前に訪れたが、席は満席に近くOedipusの人気を感じる。またフードもバーガーやフリッツを提供していて、老若男女がビールを片手に楽しそうに時間を過ごす。
個人的には、小さくも、強い個性を持ったブルワリーが大手のグループに入ること、そのことは決してわるいことでもないと思う。(それは、ビールに関わらず、資本主義と経済合理性の中にいれば、あらゆる領域でこの類のジレンマはある。ビールであっても、音楽であっても、会社であっても。)
現に、Oedipusはアムステルダムの中心地からやや離れたところにあるにも関わらず、多くの人たちが絶え間なく訪れ、皆、変わらず高品質なビールを楽しんでいる。そして久しぶりに飲んだMannenliefdeは相変わらず美味しかった。
アムステルダムと、この後に訪れるWild Festival Groningenで多くのブルワーと話したが、Oedipusにポジティブな影響を受けたブルワリー・ブルワーがとても多く、彼らに対してリスペクトを持っていることが伺えた。
ただそんな彼らでもOedipusの変化に対しては、何とも言えない複雑な表情をしていたことが印象的だった。
salo Owner & Director
青山 弘幸
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