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[ソウル暮らしのおと]韓国の絵本「すいかのプール」

「土曜ステーション」では毎月3週目のコーナーで、韓国の絵本や童謡、詩を紹介します。

今回紹介する絵本は、「수박수영장 (すいかのプール)」。
(アンニョンタル著、創批刊、2015)

この絵本、まっさきに表紙に目がひきつけられます。
まっ青な空色の下地に、真っ赤なすいか。そのなかにぷかっと浮かんでいる男の子。

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ページを開いて物語に入ってみましょう。

じりじりと日差しの強い真夏、大きな大きなすいかがすっかり熟しました。

どれくらい大きいかというと、おじさんが 真っ二つに割れたすいかのへりに 長いはしごを立てかけてよじ登るくらいです。
そう、すいかのプールのプールびらきの日です。

村のこどもたちはさっそく、水着に浮き輪をもってかけつけます。
はしごをよじ登って、すいかのへりから真っ赤なすいかにそっと足を踏み入れます。
「あっ、つめたーい!」

一足一足、「석석석석석」と足音を立てながらすいかの中に飛び込んでいきます。最初はサクサクと音をたてていたすいかは、足を「철퍽 철퍽 (ぴちゃっぴちゃっ)」と踏み入れていくと、あかくて透き通ったすいかジュースになります。

太陽があまりにもあつく照り付ける時間になると、雲さんの出店が登場します。
ふわふわの「くも日傘」ともくもくの「雨雲シャワー」を配り始めて、これが大人気。

夢中で遊んでいるうちに、いつのまにか日がかたむき、一人ふたりと帰りはじめます。

最後のこどもが帰ったころには、すいかプールの上に、 同じくらい赤いもみじの葉っぱがひらりと落ちてきて、すいかのプールは店じまいです。
でも大丈夫、すいかのプールは来年もオープンしますからね。

というお話でした。

この絵本の最大の魅力は、子どもの頃にだれもが一度はあこがれた、「おっきなすいかの中で泳いでみたい!」という夢をかなえてくれたこと。

そして、絵に添えられた擬声語、擬態語も、お話にリアルさを加えてくれます。
すいかを最初に踏みしめる「석석…(さくっさくっ)」とか、ぴちゃぴちゃという「철퍽철퍽」とか、すべり台を싹~(さーっ)とすべって、퍽!(ぽすっ!)と着地とか。絵のなかに散らばっている言葉たちがなんとも楽しいんです。

私は夏が大好きですが、今年はコロナと大雨とでどこにも行けず、夏を満喫できませんでした。それで、この絵本をたびたび見ては夏気分を味わっていました。

作者はアンニョン・タルさん。こんにちは月、という意味のペンネームです。2015年に本作を発表して以来、数々の素敵な絵本を世に送り出しています。
日本語版は2018年に斎藤真理子さんの翻訳で岩波書店から発刊されています。

あっつい太陽、ひんやりしたすいか、そんな真夏のかおりを運んできてくれる1冊です。

[KBS World Radio「土曜ステーション」2020.09.19放送]

http://world.kbs.co.kr/service/program_main.htm?lang=j&procode=one