[ソウル暮らしのおと]パルリパルリ文化

現代の韓国の独特な特徴ともいえるこの「パルリパルリ」(빨리 빨리)文化。

「早く早く」という意味の言葉です。

とにかく急げ急げのこの文化、具体的にはどんな現象があるでしょうか。 実例をいくつか挙げてみましょう。

1.エレベーターに乗ったあと、「閉じる」のボタンを連打

2.インターネットのページが3秒以内に表示されなればパス

3.歯磨きしながら片手で別の用事を済ます

4.映画館でエンディングのクレジットが出てきた瞬間に全員退場

5.バスに乗ると、乗車ドアが閉まる前に発車してしまう

6.バスを降りるときは、一つ前の停留所を過ぎたとたんに席を立つ

7.結婚式、新郎新婦入場から退場までの時間は基本30分以内

ご存じでしたか?これらはけっこう、韓国「あるある」です。私も韓国で暮らすようになって初めて知ってびっくりしたものでした。

なぜこんなにパルリパルリ文化が定着したのか、諸説がありますが、1945年の解放後、そして韓国戦争後に、猛スピードの経済成長と、目まぐるしい政治体制と社会の変化が背景にあるのではないかと言われています。

つまり、現代になって一気に広まった習慣ともいえます。

ところで、このパルリパルリ文化が生んだ世界初の商品があります。何だかわかりますか?

それは、コーヒーミックスなんです。

1976年、韓国のトンソ食品(동서식품)が、一人分のインスタントコーヒーと砂糖、クリームが個別包装されたコーヒーミックスを、世界で初めて発売しました。

90年代後半、温水器の普及とともに爆発的に売れ始めたそうです。一袋をカップにいれてお湯を注ぐだけでパッとコーヒーが飲めるスピーディーさが、パルリパルリ文化には大いに受けたようです。

このように、韓国の暮らしにしみついているパルリパルリ文化は、スピードを求めるあまり、安全さや仕事の質などをおろそかにするという批判も常にあります。

一方で、今年の新型コロナへの素早い対応は、パルリパルリ文化のたまものだ、という声も聞こえます。

長所も短所も持ち合わせたパルリパルリ文化。時にはじっくり、時にはすばやく、というバランスのとり方が必要なようです。

何よりも、一人ひとりが自分のペースを大事にしながら、うまく付き合っていくことが必要なのかなと、私は思います。

[KBS World Radio「土曜ステーション」2020.08.22放送]

http://world.kbs.co.kr/service/program_main.htm?lang=j&procode=one