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[ソウル暮らしのおと]韓国の絵本「月のシャーベット」

10月29日付の朝日新聞で、こんな記事が掲載されていました。

「ひとクセある人形、言葉のない物語…いま韓国絵本が熱い」https://digital.asahi.com/articles/ASNBX5W6QNBXUTFL00P.html?iref=pc_ss_date_article

韓国ドラマやK-POPだけでなく、最近、ユニークな韓国の絵本が日本でも人気なようです。

きょうご紹介するのは、この新聞記事でも取り上げられている童話作家、ペク・ヒナさんの絵本です。
ユーモラスなねんど人形で作られた独特の作風のペク・ヒナさんの絵本は、日本をはじめ世界中で紹介されています。
今年は児童文学のノーベル賞ともいわれるアストリッド・リンドグレーン賞を受賞し、話題になりました。

その中からご紹介する1冊は「月のシャーベット(달 샤베트)」です。
では、ページをめくってみましょう。

「月のシャーベット」

とっても暑くて寝苦しいある夏の夜。
マンションの住人たちはみな窓をしめて、エアコンと扇風機をかけて、暑さをしのいでいました。

すると「ぽたっ、ぽたっ」とおかしな音が聞こえてきます。
おおかみおばあさんが窓の外をみると、なんとお月様が溶けてぽたぽたと垂れていたのです。
おばあさんは慌ててたらいに月のしずくを受けました。
たらいにたまった黄色く輝く月の水を、おばあさんはシャーベット容器にいれて、冷凍庫にしまいました。

そのとき突然、マンションじゅうの部屋が真っ暗に。電気を使いすぎて停電になってしまったのです。
みんなは真っ暗ななか外にでましたが、たった一つ、 明るい光がもれている部屋がありました。
おおかみおばあさんの部屋でした。

おばあさんは、明るく輝く月のシャーベットをみんなに分けてあげました。
冷たくて甘い月のシャーベットを食べると、暑さはすっかり消えてしまいました。
マンションの住人達はその夜、クーラーをつけずに窓を開けてぐっすり眠りました。

ところがまた、おばあさんの部屋をノックする人がいます。
それは2匹のうさぎでした。

「月が消えてしまって、住むところがなくなっちゃいました。」

おばあさんは少し考えたあと、植木鉢に月の水を注ぎました。
植木鉢には大きな大きな月見草が育ち、夜空にむかって花がひらきました。
すると、暗い夜空にちいさな光がともり、その光はどんどん大きくなって、きいろく、まるい満月になりました。

2匹のウサギは踊りながら新しい月に戻っていきました。
おおかみおばあさんは今度こそ、ぐっすり眠りにつきました。

というおはなし。
この絵本は、ペーパークラフトをつかって実際にマンションの一つひとつの部屋や動物の住人たちがリアルに作られ、立体的な空間が描かれています。

たらいの中で明るく輝く月のしずくや、みんなの手の中で電灯のように光っている 月のシャーベットがとても幻想的。

暑さでとろとろ溶けてしまったお月様、
その月の水でシャーベットを作ったおおかみおばあさん、
月見草を育ててまた新しい月をつくる、など
なんともユニークで自由な発想ですね。

こちらの絵本は、まだ日本語翻訳版は出ていないようですが、韓国語の原書を取り寄せている書店もあるようです。

ペク・ヒナさんの絵本は、「ぼくは犬や」「あめだま」「天女かあさん」「天女銭湯」(以上、長谷川義史訳、ブロンズ新社刊)、「おかしなおきゃくさま」(中川ひろたか訳、学研刊)、「ふわふわくもパン」(星あキラ、キム・ヨンジョン訳、小学館刊)が日本語で出版されています。

[KBS World Radio「土曜ステーション」2020.11.14放送]

http://world.kbs.co.kr/service/program_main.htm?lang=j&procode=one