Solanaでのイールドファーミング(原題:Yield Farming on Solana)
この記事は、Khor Win Win氏が2021年5月4日にCoingeckoに寄稿された記事を、Coingecko様の許可を得て翻訳したものです。Coingecko Japan様にも公開前にチェックしていただいており、これらの方々にこの場で深くお礼申し上げます。
元記事:https://www.coingecko.com/buzz/yield-farming-on-solana
概要
2021年第2四半期のブロックチェーン戦争が加熱するにつれて、イールドファーミングはもはやEthereumユーザーだけのものではなくなりました。より多くのトークンを稼ぐためにプラットフォームにあなたの資産をステークするという行動は、Binance Smart Chainや、直近ではSolanaのような他のブロックチェーンでも急速に人気を増してきています。
他のネットワークほどの参加者を集めるには未だ至っていないものの、Step FinanceやRaydiumがSolanaへの空前の注目を集めるのに寄与するなど、Solanaエコシステムは着実に発展しています。
初心者が現在利用可能な多くの農場に接続し利用するには、Solanaエコシステムはまだトリッキー過ぎるかもしれません。稲妻のような速さと安価なトランザクション手数料は、ベテランやリテール業者にとっては非常に魅力的ですが、それはMetamaskでネットワークを切り替えるだけ、というほどには簡単ではありません。初心者は、ユーザー体験や動作の大きな変化に尻込みしてしまうかもしれません。
ですが、あなたがSolanaブロックチェーンへ足を踏み入れる上での谷を越えられるよう、我々が用意したこのステップバイステップのガイドと共に耐えてみましょう。このガイドでは他にも、あなたがイールドファーミングの冒険を始められるいくつかのプラットフォームにも触れています。
始めるには
冒険を始める前に、まずあなたの資産を保管しておくウォレットが必要です。一般的なMetamaskや、Ledger、Trezorといったハードウェアウォレットを使ってアクセスできる多くのブロックチェーンとは異なった、Solana上での資産の保管に使えるウォレットがいくつもあります。SolletやSolong、MathWalletなどです。
これらのウォレットは完全に非中央集権的、つまりあなた自身があなたの資産の管理を担当しています。これらのウォレットはSOLやその他のSolanaプログラムライブラリ(Solana Program Library, SPL)トークンを送受信するのに使えます。これらはどれも問題なく使うことができますが、現在Solanaで利用できるほとんどのプロジェクトに対応しているという点で、私たちはProject Serumのチームによって作成された、Solletウォレットをお勧めしたいです。以下が、Solletウォレットを作成するためのステップバイステップのガイドです。
Solletウォレットの作り方
手順1:まずは https://www.sollet.io/ にアクセスしてください。Solletのページを初めて訪れた時は、新しいウォレットを作るよう促されるでしょう。ウォレットにアクセスできなくなった場合に復元するのに必要な、24語のシードフレーズが表示されます。
シードフレーズを正しく保存したことを確認したら、チェックボックスにチェックを入れ、「continue」をクリックしてください。もしどこかで作成済みのSolanaウォレットがあるなら、それを代わりに復元することも選択できます。
手順2:次に、さらなるセキュリティの確保のためにパスワードを設定することができます。設定するパスワードを入力し、しっかり確認してください。パスワードを設定せずすぐにウォレットを作成することもできます。しかし、資産を失うリスクを軽減するために、私達はパスワードを選択することをお勧めしています。
手順3:おめでとうございます、あなたのウォレットができました!資産の残高がそれぞれのアドレスと一緒に表示されているのがわかります。
手順4.注意していただきたい点として、Metamaskなどの従来のウォレットは一意のアドレスを持ちますが、Solanaブロックチェーン上では様々なアセットを送受信するために、それぞれ個別のアドレスを使うことになります。トークンを追加する時は、「+」マークをクリックしてリストから選択するか、項目を手動で入力します。
ちなみに、トークンを追加する際には少額の(0.002039SOL)手数料がかかります。
これでウォレットの設定が完了しました。次は資金を追加しましょう。
「ワームホール」という、EthereumとSolanaネットワークを結ぶクロスチェーンブリッジが構築中ではありますが、アセットを移動させるのにもっとも簡単な方法はFTXを経由するか、Solletそれ自体を利用することです。
1.FTXから転送する
手順1:あなたのFTXアカウントにログインし、ウォレットに移動してアセットの残高を確認してください。もしアカウントに利用可能な資産がなければ、いずれかの資産の「Deposit」をクリックすることで入金することができます。
手順2:次に、FTXからSolanaネットワークに出金します。出金したいアセットの「Withdraw」をクリックしてください。例として、今回はUSDTを出金することにします。
手順3:USDTを出金するためのプロンプトが表示されるので、出金する量と出金先のUSDTアドレスを入力します。プロンプト上部に記載されているブロックチェーンへの出金に対応しており、どのチェーンへ出金するかは入力したアドレスからFTXが自動で判断してくれます。また、過去に出金したことがある、保存済みのアドレスを指定することもできます。これらが済んだら2段階認証のコードを入力し、「Withdraw」をクリックしてください。
Solanaブロックチェーンへの出金は無料です。また、ラップド(wrapped)トークンとネイティブトークンの入金アドレスは違うことも知っておく必要があります。例えば、ラップドUSDTとSolana上のネイティブUSDTは、以下で強調されているように別々のアドレスを持っているはずです。
手順4:「Withdraw」をクリックすると、出金リクエストが送信されます。リクエストの状況は「Withdrawal」タブから確認できます。リクエストが処理されたら、資金があなたの指定したアドレスに安全に着金していることを確認してください。
2.Solletを通じてイーサリアムから転送する
手順1:別の方法として、Solletウォレットを通じてイーサリアムから資金を持ち込むこともできます。転送したい資産を選び、「Receive」をクリックしてください。例として、USDCで進めていきます。
手順2:すると、入金オプションとしてSPL USDCとERC20 USDCの2つのタブが表示されるでしょう。後者をクリックすると、推定手数料とMetamaskに接続するオプションが開きます。
手順3:Metamaskに接続したら、転送したい数量を指定して「Convert」をクリックします。すると、2つのプロンプトが開きます。1つ目では転送トランザクションの承認、2つ目では実際に資産を送付します。これらのトランザクションを確認したら、Solletウォレットに資金が到着するのを落ち着いて待ちましょう。
これで完了です!Solanaでファーミングを始めるための準備が全て整いました。
ですがエコシステムは新しく、そして広大であるため、あなたはどこから始めたらいいのか分からないかもしれません。Solana上の様々なDappsに挑戦する前に、知っておくべきことを確認しましょう。
Solana以外のブロックチェーン上に存在する多くのDappsと同様、そのアプリケーションがサポートしているウォレットを接続する必要があります。同様に、トランザクションの承認や実行はEthereumやBinance smart chainで行うものとほぼ同じです。
トランザクションを実行する際には、SolanaブロックチェーンのネイティブトークンであるSOLで手数料を払うよう求めるプロンプトが開きます。これについて心配する必要はありません。手数料は極めて低く、時には1セント以下の場合もあります。
例えば、SOLが45ドルであるとすると、ウォレットにトークンを追加するのにかかるのは0.002039SOL、つまり0.09ドルです。Serum DEXで注文を出すのは約0.02SOL(90セント)、Raydiumを使った一般的なスワップであればわずか0.000005SOL(約0.0002ドル)です!単純な承認トランザクションでさえ10ドル以上になることもあるEthereumと比較しても、1SOLを保有していればかなりの時間持ちこたえられることが分かるでしょう。
イールドファーム
基本を押さえたところで、Solanaエコシステムの現状を見てみましょう。以下は、既に公開されているいくつかのプロジェクトのTVL(Total Value locked,プロジェクトへの総ロック額)です。
Defilamaのデータによると総ロック額は10億ドルを少し超えるくらいで、250億ドルのTVLを持つBinance smart chainと比較すると、まだまだ長い道のりです。この事実は、まだまだ多くの成長余地と、ファーミングすべき利益があることを意味しています。
というわけで、アセットをステークし今すぐ利益を得始めることができる、RaydiumやOrca、Oxygenといったいくつかのプラットフォームを見ていきましょう。現在SerumSwapは推奨されておらず、Serum DEXとMango Marketsは流動性マイニングプログラムを開催していません。
Raydium
Ethereumユーザーにとって、RaydiumはUniswapやSushiswapによく似ているように思えるでしょう。RaydiumはSolana上の分散型取引所であるSerumのための、自動マーケットメイカー(AMM)です。この2つのプロトコルは共生関係にあり、Raydiumはオンチェーンの流動性をSerumの指値オーダーブックに供給し、流動性供給者(LPs)がSerumの取引高や流動性にアクセスできるようにします。それと引き換えに、Raydiumのユーザーもまた中央の指値オーダーブックを通して流動性にアクセスし、ほぼ瞬時に取引を行うことが可能となっています。
Raydium swapのユーザーは、Raydiumの流動性プールとSerumのオーダーブックという2つの流動性のおかげで、あるSPLトークンを速やかに別のSPLトークンに交換することができます。それぞれのトークン交換トランザクションからは0.25%の手数料が発生し、そのうち88%は流動性供給者への報酬として流動性プールに再投入されます。同時に、残りはRAYトークンをステークしたユーザーへの報酬となります。
トークンの交換や流動性の供給だけでなく、単一のアセットや様々なLPトークンをRaydium FarmやFusion PoolsにステークしてRAYトークンを得ることもできます。RAYトークンとはRaydiun独自のガバナンストークンのことで、RAYそのものをプラットフォームにステークして追加の利益を得ることもできます。
Raydium Farmはプラットフォーム上の流動性プールのことで、流動性供給者は流動性を供給しているペアからの手数料収入に加え、RAYトークンをも得ることができます。そして、Fusion Poolsはいくつかのパートナープロジェクトと共同で創設された、新しい形の流動性マイニングプログラムです。この流動性プールは、Solanaエコシステム内での流動性を拡張するとともに、Raydiumと参加プロジェクト両方の発展を促進することを目的としています。
BonfidaやKin、Maps.me、Oxygenといった多くの注目を集めたプロジェクトは、Fusion Poolsに参加しています。これら4つのプロジェクトは現在、流動性供給者とトークンをステークしたユーザーに、デュアルイールド(二重利益)を提供しています。つまり、あなたはRAYトークンだけでなく、あなたが流動性を供給しているプールのトークンも得ることができます。しかし、Fusion Pool上の全てのプロジェクトがデュアルイールド報酬を提供しているわけではありません。Step FinanceやCopeはシングルイールドです。
元記事の執筆時点では、Fusion Poolは100%(OXY-RAYペア)~2400%(STEP-USDC)のAPRという、非常に魅力的な利益を提示しています。
Orca
Orcaは伝統的なオーダーブックの代わりに自動マーケットメイカー(AMM)モデルを採用し、自らを「人々のためのDEX」と称しています。ユーザーがETHやSOL、その他のトークンを適正な価格で取引できているかを明確にしているという特徴が、Orcaを他のDEXと差別化しています。この特徴は、適正価格インジケーターという機能で実現されています。
ユーザーがトレードを行おうとするとき、2つの要素によってトレードが適正かどうかがチェックされます。
1.トークンあたりの価格はCoingeckoのデータとの乖離が1%以下であるか?2.取引がもたらす価格へのインパクトが1%以内であるか?
もしいずれかの条件に合致しなかった場合、以下のように対応する通知が表示されます。しかしそれは単に、取引から最高の価値を引き出せているかを示す大まかな指針なので、あなたは依然として自由に取引を行うことができます。
他のブロックチェーン上の多くのAMMと同じように、ユーザーは取引手数料を得るためにOrcaに流動性を提供することができます。今のところ、Solanaネットワーク自体の手数料に加え、毎回の取引額の0.3%がトランザクションに関連する各流動性プールに送られています。
例として、2つの流動性プールを経由しなければならない取引の場合は、それぞれのプールで一度ずつ、つまり全体で2度0.3%の手数料を徴収されます。これが流動性提供者の収入となります。しかし開発者たちは、ORCAトークンがローンチされた後は流動性提供者の取り分は0.25%となり、0.04%はOrcaの準備金となるだろうと述べています。残りの0.01%がどうなるかは明らかにされていないため、この点については想像するしかありません。
Orcaの流動性プールはRaydiumの標準的なプールと比べてペアは少なめ、利益率も低めとなっています。一方、ROPE-SOLやBTC-ETHといった取引ペアが存在するため、特殊なリスクを抱えているような人々に訴求できる可能性があります。いずれにせよ、将来的に行われるかもしれないエアドロップイベントに際して流動性を提供する場所としては、Orcaは最適であるかもしれません。
Oxygen
7百万ドル超の総ロック額(TVL)を誇るOxygenは、自らをSerumのインフラストラクチャとオンチェーンのオーダーブックを活用した、DeFi仲介サービスとして売り込んでいます。このプロトコルはユーザーが幅広いアセットを貸借したり、レバレッジを掛けて取引したりして、受動的に、またはより積極的な方法で利益を上げることを可能にします。
Oxygenの最大の売りの1つは、担保を多目的利用できることです。言い換えると、預け入れた資産を貸し出して利回りを得ることができ、さらにそれが様々な資産を借りるための担保として機能するということです。また、担保はポートフォリオ全体に分散させることができ、貸出・借入資産の特定ペアに限定されないため、清算リスクはきわめて低くなっています。
ユーザーが貸し借りの条件を設定すると、Serumのオンチェーンオーダーブックを利用して、取引相手が自動的にマッチングされます。また、同じアセットでも貸出・借入金利の異なる複数のプールを作ることもできます。つまり、Oxygenは個人間ローンの分散型マーケットとして機能するのです。
OXYトークンはプロトコルのガバナンストークンで、プラットフォームに徴収される手数料を減額するのに利用できます。OXYトークンを持たないユーザーは貸し借りに15%の手数料が発生します。例として、あなたが借り手に5%の利率を課した場合、あなたはそこから手数料が徴収された後の4.25%を受け取ることになります。この割合は以下のように、OXYトークンの保有量に応じて徐々に減少していきます。
Oxygenを使い始める際の注意点として、Oxygen Walletをダウンロードし、既存のSolanaウォレットをインポートするか新しく作成する必要があります。それが完了したら、利益を上げるためにプールを作成し、アセットを入金して貸出を始める準備が全て整ったことになります!
結論
Solanaエコシステムにはまだ依然として手つかずの部分が多いですが、Solana Seasonハッカソンのおかげで多くのプロジェクトが紹介され、また公開の準備を進めています。SolFarmやPsyOptionsといったプロジェクトのような、高い手数料や遅いトランザクション承認時間といった障壁に阻まれることのない、万人に開かれた流動性マイニングやイールドファーミングの機会には、すばらしいポテンシャルがあります。
しかし、イールドファーミングは100%安全というわけではないことに注意が必要です。そこには依然として現実的なリスクが存在するため、イールドファーミングに投じる金額はよく考えなければなりません。それと同時に、このガイドがSolana上のイールドファーミングという未知の領域を進むための基本をあなたに伝えられたことを願っています。
気をつけて、そして楽しいファーミングを!
この記事のPDFコピーはこちらからダウンロードできます(原文)
https://assets.coingecko.com/reports/Research/Yield-Farming-on-Solana.pdf
著者:Khor Win Win
彼は熱心なゲーマーで、NFTの世界やクリプトバースを調査しています。彼をTwitterでフォローするにはこちらから:https://twitter.com/0x5uff3r
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