「不思議な薬箱を開く時・薬種、薬剤編」
いらっしゃいませ。
歴史の片隅に息づく神秘の伝統薬をご紹介致します。
「不思議な薬箱を開く時・薬種・薬剤編」へ、ようこそ。
今回は、どの様なお薬が登場致しますか。
ささ、薬店内へ、どうぞ、お入りくださいませ。
「薬種、薬材としての人魚種の取り扱い及び製剤方法について」
一般的に、幻とされ、伝説上とされている海洋生物、
昔話でも、よく登場致します美しい人魚。
今回は、そんな人魚が、希少な薬効を持つ素晴らしい薬種の宝庫であることをご紹介いたします。
歴史的な人魚の説明をざて頂きますと。
mermaid[英]
さほど古語ではなく中英語までにしか遡れない。
“”mere":海
“maid”:乙女
合成語で、上半身が人間女性、下半身が魚鯨類の幻獣と定義される。
マーメイドまたはセイレーンという古語(死語)もあるが、
古英語męremęnenにまで遡ぼる。
語義は、
"mere-"「海」+"-męnen"「女奴隷」
直訳すれば「海婢」
中英語形”mereman”も、
「-man」は、「男」ではなく「女の従僕、下女」を意味する。
ゲルマン語族の諸言語で
“人魚”様の海洋生物を意味する現代語や古語が、
同じ語源(同根語)とされる。
となっております。
生息域の特定が難しく、捕獲例は稀であることもあり、
幻の薬種として珍重されてきました。
実際、優れた薬効を表す部位を持ち合わせておりますが、
フグ毒同様、抽出、摘出が、大変困難であり、
古来より、製薬の手段と方法を知る者、
その手段に失敗して死亡してしまう場合が多いようでございます。
捕獲が困難となる原因として、
非常に貪欲かつ獰猛であり、
人間を捕らえて食すという理由が挙げられるでしょう。
古絵のの王族や、貴族、富裕な商人は、
奴隷を買い、呼び餌として仕掛けていたそうでございますね。
<部位の採取について>
美しい女の上半身と、魚様の下半身を持つ姿に描かれておりますが、
上半身は、”擬態”であり、
獲物に対して、”擬態”を変えます。
獲物が男の場合、女の擬態をとり、
女の場合、男の擬態をとります。
南洋に生息する種と、
北洋に生息する種があり、
優れた効能を持つのは、北洋の固有種であるとされておりますね。
学名
Creaturae borealis oceanis mirabilis
(クレトゥアレ ボレアリス オケアノス ミラビリス)
英語名
Leviathans of the North
(レヴィアタン オブ ノース)
和名
北洋人魚
(ほくようにんぎょ)
南洋種に比べて、北洋種の体長は二倍近くにもなり、
鯨に見間違えられた例もございます。
鱗が金属のように固く、解体の際には、厚手の手袋を使用することをお勧め致します。
南洋種の中には、唾液腺に猛毒を有するものもあり、
細心の注意が必要です。
<主な薬種部位について>
薬種に適した部位は、幾つかございます。
解体し、薬種を採取する際の参考になさって下さい。
<毒袋嚢>
有毒の海洋生物を食する事で、
体内に毒素を貯める内蔵器官がある。
人間ならば、肝臓に等しく、大人の拳程の大きさで、
解毒の機能と共に、毒素を貯める機能がある。
魚類の部位と擬態する部位の中間にあり、
切開する際に、破らないように留意する。
破裂し、毒素が流出すると、
内蔵全体に広がり、
薬種として使用が不可能になる。
<in pulmone habitare>
イン プルモネ ハビタレ(肺に棲むの意)は、
固有の宿主を持つ寄生虫で、
肺胞の中に、宿主が死亡するまで寄生している。
体長は、大人の親指程の長さで、
肺胞の中に塒を巻くようにして寄生する。
体内の毒素を栄養分に転換し、
その転換後の成分は、テリアカの数倍もの解毒作用を有する。
<腸内珠>
腸管の内部で造られる球体で、
貝類、魚類の歯、骨などを主成分として、
20年以上の時間補かけて生成される。
100年を越えた腸内珠は、希少価値が高い。
それだけでなく、酢に溶かして服用すれば、
若返りの為の絶大な効果がある。
<臍嚢>
腹部にある親指大の嚢袋。
この臍嚢は、卵が生成される器官であり、
臍嚢ごと服用する。
女性の不妊に確実な効果を表すが、
男性の体内でも、同様の効果があり、
子宮以外の内蔵に胎児を有することが可能となる。
ただし、男性の場合は、死に至る場合が多く、
放置すれば、時間と共に生育した胎児に、
腹部を食い破られたという症例もある。
これは、この種に雌体が多い理由であると言われている。
<擬態部と魚部>
擬態の為に多く使用される部位である上半身と、
水中を移動する為に使用される部位である魚部は、
効能の相違がある。
滋養強壮、病気や怪我などの早期回復、
皮膚疾患の平癒などには、上半身部が効くが、
不老、皮膚の損傷を伴う症例、火傷痕の回復、
死病の平癒などに効果を発揮するのは、魚部である。
<血漿石>
緑色と透明の体液と共に体内を流れる微細な結晶で、
全血液を抜き、絹布で濾すと入手できる。
一体から採取できる量は、
小スプーン一杯程であり、
腸内珠と同様に、奇石としての希少価値が高いが、
薬種としての効果効能については、
特筆すべきものはない。
追補
捕獲に困難を極める為、
上記した薬種の全ては、希少となります。
効果効能についても、優れたものばかり。
国家的な予算を投じて捕獲しようとする者は、
歴史上でも後を絶たないのですから。
時代と共に、生息域の変化は考えられますが、
獰猛で、人肉を好み、猛毒を有するのです。
獲り尽くされ、絶滅したという事は考え難いでしょう。
北洋生息、南洋生息の2種があり、
人間にとっては、危険極まる人跡未踏の海域、水域の捜索が必要となります。
捕獲を果たしたとしても、
薬種の入手に際しても、生命の危険がございます。
そして、伝説上では、不死の効能を記されておりますが、
症例の確証は残されておりません。
言い伝えなどの、不確定な情報でしかない事から、
不死になるという効能は、信頼できるものではないと言えるでしょう。