ispec inc.ロゴ制作の背景とプロセス
「全ての人に、挑戦の機会を。」を掲げスタートアップ企業や大企業問わず"0→1のアプリ開発やサイト制作"を中心に展開しているフリーランスエンジニアチーム『ispec(アイスペック) inc.』のロゴ制作ついて、どんなことをしたのか、背景とプロセスをご紹介します。
はじめに
ispec inc.とは
2017年12月15日に設立されたispec inc.は、スタートアップ企業の案件を中心に受託開発事業やコンサルティング事業を行なっているスタートアップ企業です。
受託開発事業を通して、取引先の会社が何を求めているかをヒアリングし、作りたいサービスのサポートをしています。
受託開発事業では、WEBアプリケーション開発やEC・LPサイト作成、業務アプリケーションの開発などを行なっています。
コンサルティング事業では、ispecがスタートアップ時期を経験したという事もあり、取引先がどのような事業をやりたいのかヒアリングし、サービスの課題などを洗い出し、コンサルティングしています。
ここではispecのロゴリニューアルの背景とプロセスをお話ししたいと思います。
目次
1.ロゴリニューアル概要
1-1.リニューアルの背景
1-2.リニューアルの目的
1-3.制作フローとスケジュール
2.候補案出し→絞り込み
2-1.ロゴの方向性
2-2.Platform
2-3.Gilroy
2-4.TT Commons
2-5.Eina
2-6.Larsseit
2-7.FF Mark
2-8.候補案を評価し絞り込み
3.絞り込み案→最終案
3-1.Platform
3-2.Gilroy
3-3.FF Mark
3-4.最終案の選定
4.最終候補のブラッシュアップ→FIX
4-1.最終候補に決めた理由
4-2.字形の調整
4-3.カーニング
4-4.カラー
5.さいごに
1.ロゴリニューアル概要
1-1.リニューアルの背景
ispecは「全ての人に、挑戦の機会を。」を理念に事業を行っており、CEO島野の「関わる人を幸せにしたい」という思いを伝えられるようなロゴを制作したいと依頼を受けました。
1-2.リニューアルの目的
ispecがスタートアップ企業の案件を中心に受託開発事業やコンサルティング事業を行なっていることから、従来のロゴでは伝えきれなかった
①クライアントである起業家に「信頼」や「安心」を届けられるような
「あ、俺この人と一緒なら成功できるかも」「この人と一緒にいて落ち着いて物事を進められるという安心を提供したい」と思ってもらいたい。
②「公平さ」や「フラットさ」を伝えられるような
「公平さ」「フラットさ」を大切にしていて、上司でも部下でも関係なく意見を言い合える環境作りをしています。お互いの価値観を認め合い意見が言いやすいフラットな環境つくりをしていて、業務がスムーズに進む仕組みを整えており、その社風が伝わるようなロゴにしたい。
③「クオリティの高さ」や「最新技術を追求する姿勢」が見えるような
ispecでは、GoやAngularなどといったモダンな言語やフレームワークを使用することにより、スピード感のある開発を得意としています。
また、社員一人一人が技術に対して常にアンテナを張っている事で、最新の情報をキャッチし、SlackやScrapboxにそれぞれが学んだ内容をまとめ、共有して会社全体の技術力向上に努めています。
常に最新技術を取り入れより良いアウトプットを出せるよう日々努力しているispec社員の姿勢が見えるような、クオリティの高さが感じられるロゴにしたい。
④「若さ」や「青春感」を感じてもらえるような
ispecは年齢層も若く、スタートアップ特有の青春感を感じてもらいたい。
そんなロゴを制作していくこととなりました。
1-2.制作フロー
ロゴ自体の制作期間は2週間でしたが、コンセプト設計は3月末ごろから開始し、約1ヶ月半かけて大まかなロゴの方向性とシンボルなしロゴタイプのみの制作を決定しました。
基本的にロゴのデザインをするときはコンセプト自体の異なる複数案を提案させていただいていますが、今回はロゴの方向性が決まってからの制作となったため、全くコンセプトの違う案は出さないことになり、方向性は同じだが微妙に違う6案を提案させていただくことになりました。
2.候補案出し→絞り込み
2-1.ロゴの方向性
ロゴの方向性はispec CCOの堀さんと顧問との3者で詰めていきました。webフォントがあるもので、サンセリフで太め、eやcが円に近い幾何学的なフォントを選定することになりました。
そこで候補に挙げたのが以下の6フォントでした。
Platform
Gilroy Sans
TT Commons
Eina
Larsseit
FF Mark
それぞれのフォントを「ispecと合っているか」という点において比較しやすいように、10の評価項目を設けました。
最初は5段階などで定量評価しようかと思いましたが、なにせ項目が多いのと主観がかなり入ってしまいそうだったので、0/1の評価とすることにしました。
2-2.Platform
このフォントは、New York在住の日系人Berton Hasebeさんのデザインのもので、世界的に有名なフォントメーカーCommercial Typeのものです。
未来感がありつつも、ちょっと不揃いさがあるのがまたかわいいです。
Platform is a geometric sans-serif typeface designed by Berton Hasebe and released through Commercial Type in 2010.
It is Hasebe’s first typeface release and the design is fairly distinctive for the geometric sans genre with its exaggerated x-height.
Platform is available in five weights with matching italics.
参照元:Type wolf What’s Trending in Type "platform"
https://www.typewolf.com/site-of-the-day/fonts/platform
2-3.Gilroy
GilroyはRadomir Tinkovさんのデザインで、安定感のある幾何学的なフォントです。Cのとんがり具合が可愛くて、ispecの前進感があっている感じがしました。
※図にはGilroy Sansと表記してしまっていますが、正式にはGilroyです。
2-4.TT Commons
TT Commonsは、コントラストを最小限に抑えたストロークで、幾何学的な文字が特長です。想定できるあらゆる業種の企業にも対応、利用できるように開発されたということもあり、いい意味でも悪い意味でも普通というか王道って感じです。
TT Commons was designed by Ivan Gladkikh, TypeType Team, Pavel Emelyanov, Marina Khodak and published by TypeType.
TT Commons contains 22 styles and family package options.
The font is currently #29 in Best Sellers. More about this family.
参照元:My Fonts by Monotype "TT Commons"
https://www.myfonts.com/fonts/type-type/tt-commons/
2-5.Eina
Einaは、スペインのデザイナーによって、デザインとアートの学校のために作られたプレーンな使いやすいサンセリフフォントです。
タイプフェイスを説明し、教えるためのフォントというコンセプトに基づいて作られただけあり、普遍的だけどスタイリッシュ、クリアな印象です。
Eina is designed as a corporate typeface for design school "EINA, University Centre of Design and Art".
Eina responds to an educational and divulgative concept that transcends the simple typographical use. Eina is a typeface to be explained and used to teach typography.
The whole process of design and development is reflected in the publication "Four nuances of a typographical standard. A typeface for EINA". In addition Eina is versatile & multipurpose sans-serif typeface, the family consist of 32 original styles, organized from four categories: rational, humanist, geometric & industrial, each contains four weights with their corresponding italics.
参照元:Fonts.com "Eina Font Family Typeface Story"
https://www.fonts.com/ja/font/extratype/eina/story
2-6.Larsseit
Larsseitは、コントラストの低さとクラシカルな形をミックスして生まれたフォントで、サンセリフの良いところを持ちながら、どこか古典的な雰囲気もあり、クリーンで読みやすい、使いやすいフォントって感じです。
わりと太めなのにも関わらず、どっしり感や重さがなく、スッとかっこいいフォントです。sとnが細めなので、ベタ打ちだとロゴとしては少し気になりますね。
Larsseit is a contemporary sans-serif typeface released through Swiss foundry Type Dynamic in 2013.
It feels like a fairly neutral and anonymous sans yet it still has some unique quirks to some of the letterforms, such as the lowercase g.
参照元:Type wolf What’s Trending in Type "Larsseit"
https://www.typewolf.com/site-of-the-day/fonts/larsseit
参照元:Font.news "Larsseit"
https://font.news/2066/larsseit/
2-7.FF Mark
FF Markは、合計61種とファミリー展開がはちゃめちゃに多く、可読性の良いジオメトリックサンセリフ。x-height が大きく字幅も広めに取られていてwebで本文用として使うときにも使いやすそう。
丸みと滑らかさがいいけれど、個人的にはもう少しSに幾何学みがあってもいいかもという気もします。
アップライト・イタリックの2種3幅10ウェイト、+レギュラー幅アップライトのみ Ultra ウェイトがあって合計61種があるビッグファミリー。
Std と Pro があるが、Pro は字種も1000種以上。
ウェイトも Hairline から Black まであり
本日時点で MyFonts ベストセラー7位という人気の書体。
参照元:Font for the Day "FF Mark"
https://fmstudio.jpn.org/font/sans-serif/ff-mark.html
2-8.候補案を評価し絞り込み
2-1で示した評価項目に基づいてそれぞれのフォントを比較検討しました。
CEOの島野とも話し合い、見せたいイメージとより近かった「Platform」「Gilroy」「TT Commons」を絞り込み案としました。
3.絞り込み案→最終案
3-1.Platform
3-2.Gilroy
3-3.FF Mark
3-4.最終案の選定
最終案はCEO島野だけでなく、ispecメンバーに見てもらい、どのロゴなら愛着を感じるか、自分たちのものだと思えるかを議論した結果、Gilroyを使用することになりました。
ただ、Gilroyそのままでは、ispecの "s" が i と p に挟まれてしまっている印象があり、「公平性」の印象と違ってしまったため、sのみ作字することにしました。
4.最終候補のブラッシュアップ→FIX
4-1.最終候補に決めた理由
Gilroyは、候補に挙げた幾何学フォントの中でも特に円形に近く、ispecが大切にしている "個の力" も感じられると考えたからです。
社員一人一人が自分で考えて行動し、
効率的な業務をすることができるので、独立しても通用する(中略)人材
参照元:Wantedly 株式会社ispec ホーム-価値観
https://www.wantedly.com/companies/tech7
4-2.字形の調整
"s" が i と p に挟まれてしまっている印象を緩和するため、幾何学フォントの中でも特に安定感があったFF Markの "s" を参考に作字を行いました。
4-3.カーニング
ispecメンバーの結束感の強さを表現したく、カーニングはあえて狭めに調整しました。
4-4.カラー
従来のロゴよりも色を濃く、少し青を混ぜた黒にしました。
青を混ぜたのは、ispecの「スピード感のある開発」や「クオリティの高さ」そして「若さ」を表現したかったからです。
また、営業資料などで多用することから、クライアント様のどんなコーポレートカラーにも違和感なく寄り添える黒にしました。
5.さいごに
ここでは、ispecのロゴリニューアルの背景とプロセスに絞ってお話しましたが、これ以外にも半年間所属させていただいたispecでのお仕事は様々な経験がありました。それらのお話は、また次の機会に…。
受託開発事業やコンサルティング事業を行なう『ispec inc』は、まだまだ設立3年目の新しい会社です。これからも日々成長を続けている(らしい!)ので、今後の彼らに、ぜひご注目ください。
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最後まで読んでくださりありがとうございました!