From Yugo 〜私が伝えたい裏庭のこと〜
世界地図を頭に浮かべてみる。
ヨーロッパはすぐに出てくるかもしれない。ロシアも浮かんでくるかもしれない。
では、その間にある国々をイメージできるだろうか。
おそらくすぐにイメージできる人は少ない。
私がどこよりも魅せられ、人生をかけて情熱を注ぎたいと思ったのはそんな国々だ。
「ユーゴスラヴィア」
今は存在しないその国の面影と、今の、かつて国があった「場所」の魅力を、伝えていきたいと思う。
ユーゴスラヴィア社会主義連邦は「7つの国境、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字、1つの国家」とよく形容される。つまり、世界のどこよりも複雑で、多様な人々が1つの国家の中で暮らしていた。
ユーゴスラヴィアは1999年にコソボ紛争が集結するまで、数多くの独立紛争を経て解体された。
現在は、セルビア、クロアチア、スロベニア、マケドニア、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、モンテネグロの国がそれぞれ独立した国として存在している。
今尚紛争のイメージが払拭されない旧ユーゴの国々。いまだにネガティブな民族感情を持っている人も多く、互いにけなし合う光景もしばしば目にした。
しかし、彼らは悪人なのか。この問いには断じてNOと言いたい。彼らは自分自身の国と民族を大切にする誇り高い人々なのだ。誰もが旅人を歓迎し、笑顔で迎えてくれる。
男は働かないことが多いが、陽気で、常に笑顔で、幸せそうだ。
女は誰もが美しく、語気は強いが、その丁寧な物腰には、昔の大和撫子を彷彿させる。
サッカーが盛んな旧ユーゴの子供達は、誰もがサッカーに熱中していた。私が日本人だとわかると「ホンダ、カガワ!」といって盛り上がっていた。(元サッカー日本代表監督のオシムはユーゴ出身である。)
未だ中世の雰囲気をそのまま残している旧ユーゴの国々は、他のどんな国よりも美しく、ノスタルジックな気分にさせられる。
そんな人々が民族の話になると、とたんに表情を変える。
相手の民族をただただネガティブな言葉を使って攻撃する。先ほどまでの和やかな空気はもうどこにもなかった。
私は日本人で、第三者だ。だから、彼らに「争うのはやめろ」とは言えなかった。「分り合え」とも言えなかった。
私はただ相手の民族を罵倒する、大好きな人々を見て暗い気持ちになったのだった。
結局私には何もできない。そう思っていた。
しかし彼らの話を聞いてると、どれも根拠のないものばかりで腹が立ってきた。
だから私は彼らに、自分が見た相手の真の姿を伝えたかった。
私は旧ユーゴの人々の争いを止めるつもりはない。止められるとも思っていない。
ただ、彼らが互いの真の姿を知らずに憎しみ合っていることを、私は黙って見ているわけにはいかなかった。
決して志が高いわけではない。ただ、私の友達のセルビア人と、私の友達のアルバニア人が、互いにどのように暮らし、どのように考え生きているかを教えてあげたいだけなのだ。
そんな思いから私はドキュメンタリーを作ることに決めた。
ドキュメンタリーを作るために3回も渡航したし、今年の夏も再び現地に足を踏み入れる。
何度も「ヨーロッパの裏庭」に来る日本人の若者を、彼らは酔狂な奴だとでもいうような目で見ながらも、徐々に心を開いてくれた。
私は私にしか作れない映像があると信じているし、その映像で革命は起こせなくても、自分の周りの何人かの価値観を変えられると信じている。
現在、ドキュメンタリー映像を制作中だ
本音を言えば、かなり厳しい。
何度も行き詰まっているし、一向に進まない日もある。
しかし、確実に完成までは近づいているし、内容も充実してきている。
そんな私の旧ユーゴへの思いを込めた作品は10月完成を予定している。
これを読んだ方には是非とも私の集大成を見に来て頂きたい。
そして旧ユーゴ、そしてそれに自分たち日本人に投影して、何かを考えてほしいと思っている。
きっと何かが変わり、そして旧ユーゴに行ってみたいと思って頂ければ、これほど嬉しいことはない。
慶應義塾大学公認国際問題啓発団体S.A.L.
7期 岡勇之介
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