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[散文日記] 筋トレの師匠を見つけました.人類の標準とは何か.
齢58にして、最強に近い肉体を持つ男に出会ってしまった. 僕はこの男を師匠と呼ぶことにした. アイアンマンやウルトラ・スパルタン・100マイルレースとことごとく人類の限界を試すかのようなレースに出ている強靭な肉体の持ち主である. 今回は師匠のパーソナルトレーニングを受けてきたので感想を残したい. そして、師匠が再三口にしていた「俺が人類の標準」という言葉について考えてみたい.
初めてのパーソナルと懐かしい悲鳴
本格的に走り始めて約1ヶ月が経とうとしている。8月に走った総距離は28日地点で172km。100キロを目標にしていたので、かなりオーバーして進捗している。
長い距離を走ると後半には腰や左足首など自分の弱点に痛みや違和感が出てくることを実感していた。走るための筋肉の強化の重要性を感じた僕は、鎌倉は材木座にあるOSJ湘南クラブハウスの地下室の門を叩いた。
ちなみに、OSJはトレランのレースを主催していたり、トライアスロンやスパルタンレースのチームがあったりアウトドアスポースが好きな人なら知っているであろう団体である。(気になる人はこちら)
家からウォーミングアップを兼ねてランニングで材木座海岸近くにある、お店に向かった。初心者コースを予約していた僕は、トレーニング後にアフタージョグとして10kmぐらい走ろうかと企てていた。
店内には、オーシャンスイム用の道具やトレランシューズ、補給食が陳列されており、街の小さなスポーツ店といった装いである。
店の奥で、50代くらいの夫婦(と思しき2人)が商品をダンボールから出す作業をしている。
「こんにちは〜、パーソナルトレーニングで来ました。」
振り向いた男は、真っ黒に日焼けした肌と、外見で分かるほどの丸太サイズの強靭な体幹を持っていた。
「あ、トレーニングね。もうちょっと待ってね。鍛える目的は、バーチカルの瞬発系?100マイルとかの長距離?どんな感じ?」
まず、選択肢が可笑しくないだろうか。初心者コースで訪れた僕に、予習していないと全く分からないであろう選択肢を提示してきた。
Youtubeを見てアウトドアスポーツの種類の知識はある程度身につけていた僕は、澄まし顔で「どちらかというと100マイル系の長い距離ですね〜」と答えていた。改めて、ちょっとデキル男に見せようと癖を今すぐ辞めたほうが良いと思う。そんなことをしていると痛い目に合う。
「長距離系ね!了解。じゃぁ地下室に行こうか」
案内された地下室は、”1人で鍛えること”を前提に作られている感じがする。コンパクトに最低限の器具が揃っていた。
僕の筋トレのバックグラウンドは、学生時代にトレ室で程々に鍛えていたのと、社会人になってからジムに数ヶ月ほど通っていた程度で、パーソナルレッスンを受けたことはなかった。
限界まで追い込めたり、トレーニングの知識を教えてくれることを期待して荷物を整理していると、何やら大きな器具が運ばれてきた。
「エルゴメーター」だ。高校生のときの体力測定でやったことのある筋持久力系のけっこう全身を追い込むマシンである。アップがエルゴメーターの時点でちょっと嫌な匂いがする。いい意味でこれは初心者向けではない。
出力ワット数をキープすることだけを告げられ、維持できていないときには声掛けが飛んでくる。1,000mほどを漕いでエルゴメーターは終了。
気持ち良い具合に呼吸が乱れ、全身の筋肉が目覚める感じに僕のなかでトレーニングスイッチが入った。これだ、トレーニングって感じがするぅ!
だが、
ここからが、
地獄だった。
体は動かなくなり、
声も出なくなった。
コア・体幹トレーニング
腹筋トレーニング
ケトルベルトレーニング
ボックストレーニング
バーベルトレーニング
こいつらを、ほぼインターバルなしで倒さなければならなかった。
師匠が示すメニューは、複数種目のサーキット系で「筋持久力」がテーマだったように思う。
メニュー詳細は省くが、とにかく体が動かなくなっていく。
上げたいのに上がらない、動きたいのに動けない。
58歳の師匠が見せるお手本の動きにどうしてもならない。僕と3周りぐらい違うオヤジのような年齢の男の動きは強くて綺麗だった。屈辱である。
キレイなフォームでできずにもがいている僕に、師匠はこんな言葉を頻繁にかけてくる。
「俺が人類の標準だよ。これぐらいできなきゃ。」
このトレーニングを毎日やってるというから、この男の基準は狂っている。
90分みっちりしごかれた僕は、もともと企画していた10kmランを決行する体力が残っておらず、家までトボトボ歩いたのである。
ここまで追い込まれたトレーニングは久しぶりだ。全身から血が吹き出そうな感じ、吐き気がする感じ、めまいがする感じ。なんだか懐かしい。
きっちり来月も予約していた。
いや、師匠は本当に標準=中央値なのかもしれない
トレーニング終え、1階のお店スペースで喋っていると、師匠はUTMBも何回か完走しているし、スパルタンレースも2度優勝しているらしい。
世界レベルを見ている彼から言わせると、もっと上がいるよってことなのだろう。
そう考えると、「俺が人類の標準だよ」という言葉の意味がちょっと分かった。彼は人類の中央値なのかもしれない。もちろん、平均ではないし最頻値でもないだろう。中央値なのだ。(多分、アスリートの中でも上位数%とかの人だろうけど. UTMBでAge別で5位とか言ってたし.)
まだ僕は27歳だ。肉体は20歳がピークとはいわれるが、彼の年齢まであと約30年ある。どこまで肉体的に強くなれるのだろうか。
パーソナルを経験した僕は完全に筋肉脳になっていた。タンパク質とアミノ酸を摂取しまくることしか頭にない。なんだか部活を再び始めたみたいだった。
結論:師匠の体幹に近づきたい。