「自分の頭で考える」ということ~月商13万ドルの不動産投資用PFビジネスの成功について
定式化が好きな人はいつも大事なことを教えてはくれない。
ある人は言う。
成功回数=成功確率×試行回数だと。
だからこそ、沢山学んで成功確率を高めて何度も打席に立てば成功するんだと。
ある人は言う。
ユニクロやジーユーなどの衣料品会社を立ち上げたファーストリテイリングの柳井正さんもビジネスは「一勝九敗」だと述べているんだよ、と。
だから、9回失敗しても1回の成功さえあれば大企業が作れるのだと。
なるほど確かに。言っていることに間違いはなさそうだ。
成功確率を高めて試行回数を増やせば成功回数は増える。論理的に正しい。9回の失敗を打ち消す1回の成功で大企業を作ることもできるだろう。なんせ実例があるのだから。
でも、このような分かりやすい主張にはワナが潜んでいる。そして、それを教えてくれる人は中々いない。
たとえば成功回数の方程式
たとえば成功確率を高めるためのアプローチと試行回数を増やすためのアプローチは更に細分化できるし、トレードオフの関係のモノもあるでしょう。
たとえば、時間を掛ければ成功確率を高めることができますが単位時間当たりの試行回数は減らす必要があります。
それに変数の中で最大のインパクトを持つもの、つまり投資対効果が最大となるモノはなにか?についても考えなければなりません。
アメリカの政治家であり、外交官であり、著述家であり、物理学者であり、気象学者であり、実業家でもある偉大なベンジャミン・フランクリンは良いことを教えてくれています。
私自身、この主張はとても賛同しているし実行しています。
ただ、どの知識に投資すれば”最も安く”、”最も早く”、”最も効率よく”成功確率を上げることができるのか?までは教えてくれませんでした。教えられるものではない、というのが正しいのでしょうか。
粗悪で高価な情報商材への投資が最高の利息をもたらしてくれるわけではないことは確実に言えることでしょうか。
たとえば一勝九敗の成功哲学
周りを見渡したときに99%の人が成功している事業があったとします。例えば簡単な転売などは”やりさえすれば”成功します。当たり前ですが、この事業で10%の成功しかしなかったらファーストリテイリングのような企業はできません。
逆に0.01%の成功確率しかない環境で一勝九敗の成績を残せばどうでしょう?一勝九敗は神のごとき成績です。ファーストリテイリングが作れるのもさもありなんというところでしょう。
つまり、一勝九敗が許容されるのは「それが許容される環境においてのみ」ということです。
私たちは分かりやすさと引き換えに細部を捨てている
成功の方程式にしろ、成功哲学にしろ、私たちの興味をひくものは例外なく”分かりやすい”のです。
コンテンツに溢れた現代社会において、分かりにくいものを頑張って理解しようとする暇はないのです。分かりづらいコンテンツを我慢して理解するよりも理解する必要もないくらい分かりやすいコンテンツを消費する方が楽なのです。
過去の記事で「認知していないものは存在していない」ことをお伝えしました。それと同様に「分かりづらいコンテンツは読まれない」のです。
そして分かりやすいコンテンツを作るために、分かりづらい部分は捨てられる傾向にあるのです。
たとえば正確性。とある行動経済学の論文をまとめて一つの記事を書こうとしましょう。
全ての参照論文の実験条件、結果をずらーッと書いた無機質な記事
複数の論文を参照した結果から読み取れるキャッチーな主張を書いた記事
どちらの方が読みたいでしょうか?当然多くの方は後者のキャッチーな記事を選ぶでしょう。しかし、正確性という点では前者の方が勝るでしょう。
私自身、だらだらと長い学会発表よりも参加者が分かりやすくまとめたレポート記事の方が読みたいです。
"神は細部に宿る"とは誰が言った言葉か知りませんが、この言葉が正しいとするならば私たちは分かりやすさと引き換えに神を失っているのかもしれません。
分かりやすさを追求するのが問題ではなく
分かりやすさを生み出すためには”要約”、”編集”の作業が必要になってきます。私は決してこの作業が悪いとは思いません。
人志松本のすべらない話で芸人が「事実をありのまま、時系列に沿って」話したとして今ほど面白い番組はできなかったでしょうし、Youtuberの生配信が切抜きchの協力なしで今ほど流行っていたとは思いません。
要約や編集は「本質を抜き出して伝えるために必須な作業」であり、決して忌むべきものではないのです。
問題にすべきは「与えられた本質しか知らない脳みそが作られること」なのです。
たとえば上で登場した成功回数の方程式や一勝九敗の成功哲学、個人的にはとても気に入っています。単純化されていることを加味してもです。
なぜなら、成功回数の方程式は更に細分化でき、トレードオフの関係にある変数が存在することなど少し考えれば分かることだからです。
一勝九敗の成功哲学についてもそうです。隠れている(言及されていない)真実について、少し考えれば分かるのであればわざわざ説明する必要はありません。まさに蛇足です。
しかし、分かりやすいコンテンツのみを消化することに慣れた人はいずれ自分の頭で考えることを辞めてしまいます。そして搾取される。
スモールビジネスの教科書では分かりやすさを追求しつつも、「自分の頭で考える癖」がつくようなコンテンツを提供していければと思っています。
海外スモールビジネスのケーススタディ(具体的事例)とそこから得られる教訓(抽象的)、プライシング大全などの体系的な知識などバランスよく投下していくつもりです。
是非ともスモールビジネスの教科書を「自分の頭を使う」道具としてお使いください。
そんなこんなで今週は不動産投資家用のデータサイト「PropertyData」
今回紹介するPropertyDataは不動産投資家やデベロッパーが不動産を購入する際に、より良い情報に基づいた意思決定ができるようにするためのサブスクリプションサービスです。
PropertyDataは、投資家の不動産市場のリサーチや、購入候補のデューデリジェンスを行うのを支援するサービスです。
2017年4月に事業を開始し、2022年1月現在、毎月128,000ドルの経常収益を上げています。
投資用不動産購入のためのリサーチをしていた友人を見て着想を得る
創業者Michael(以下創業者)はPropertyDataを手掛ける以前から収益性の高い10人規模のWeb制作会社を経営していました。しかし、Web制作のビジネスモデルに疲れ、SaaSプロダクトに移行するための方法を探していたのです。
そんなある日、友人と遊んでいるときに投資用不動産を買いたいから地元の不動産市場をリサーチしている様子を見せてもらいました。各地域の相場を把握するため、スプレッドシートを作成し、物件の住所、価格、面積などを手作業で入力し、平均価格、単位面積当たりの平均価格、一般的な賃貸利回りなどを算出していました。
ソフトウェア開発者(創業者)の感覚からすると、このリサーチ作業は馬鹿馬鹿しく思えたのです。
手間がかかるし、時間もかかるし、何よりミスが起こりやすい。もし、データを入力するときに桁を間違えたら、その損失は10万ポンド(約1500万円)を超えるかもしれません。
全てを自動化するのはムリにしても、少なくともこの分析の一部を自動化する方法があることに確信を抱き、PropertyDataの構想が生まれました。
既に競合製品が存在しており、市場は見つかった
実際、競合調査をしてみるとイギリスの不動産市場のデータ分析用のプロダクトが見つかりました。
少なくとも「ボクのかんがえたさいきょうのビジネス」ではなさそうです。
しかし、それらはすべて大企業向けに設計されたもので、月々500ポンド(約7.5万円)以上かかり、英国の典型的な一人社長的な不動産投資家にはコストが大きいものでした。
そこで創業者は、大企業が使っているようなデータを民主化し、英国のあらゆる不動産投資家やデベロッパーがその恩恵を受けられるように、月額50ポンド以下の不動産市場データ&分析ツールを立ち上げることにしました。
ここから有料
導入部分が長くなってしまいましたが、ここからは定期購読者(購入者)限定の記事になります。
単品購入もできますが、定期購読(初月無料で980円/月)がおすすめです。いつ購読を始めても今月分の記事が全部読めるのでお得です。
現在、海外スモールビジネスのケーススタディだけでなく値決めに関する知識を体系的にまとめた「プライシング大全」も連載中なので購読月が早ければ早いほどお得になります。
内容をちょこっとだけ
経営経験が活きた初期のプロダクト開発における要点
MVPを素早く安く作ると何がよいのか?
成功回数の方程式に隠された重要な真実
PropertyDataから学ぶ初期戦略
意外なことがめちゃくちゃ重要だった話
コンセプト検証の時のプライシング
集客や顧客維持に効果があったこと
現在と今後の展望
使用しているプラットフォームやツール
最も影響を受けた本
この記事をより楽しむために
無料部分で厳密に言うと間違ってる部分があります。
「自分の頭で考える」って口で言うのは簡単ですが、実行に移すの難しいですよね。
実際、それっぽいことを書いた導入部分(「たとえば一勝九敗の成功哲学」の章)で分かりやすさを重視して厳密に言うと正しくないことを伝えてますし。
「明示されていない事実が理解できているか」という話なので、嘘を述べているわけではないのですがほとんどの人にとって違和感はなかったと思います。
気になる方は是非とも最後までご覧ください。
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