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それ、エクセルで良くない?副業で24万ドル稼ぐテンプレート販売

起業家志望の人間が罹患しがちなのが”自作でなんかいい感じのSaaSを作りたがる病”。

確かに、「課題を解決するサブスクリプション型のWebサービスを開発しているんです」というのは格好よく聞こえます。

少なくとも「エクセルで定常業務を簡便化するマクロ書いてます」よりは耳障りが良い。

でも実績も人脈もない状態からスモールビジネスを始めるのであればエクセルツールの方が合理的だな、と思うのです。

今回紹介するケーススタディでは「自作サービスではだめだったがエクセルテンプレートなら副業なのに24万ドル売れるようになった」という実例をもとに、なぜエクセルテンプレートなら売れたのか?という解説をしていきます。

副業で年間24万ドル稼げるならかなり美味しいですよね?

起業家が財務予測を作成するのをサポートする「ProjectionHub」

今回紹介するProjectionHubは、起業家が投資家や金融機関から資金を調達するため、または単に社内のプランニングのために財務予測を作成するサポートをしています。

主力製品は公認会計士が開発した財務予測のスプレッドシートテンプレート。SaaS・EC・ハードウェア・飲食・歯科医院・運送など幅広い業界で使用されています。

2012年に23歳と17歳の兄弟が始めた副業が、2021年12月時点では毎月2万ドルの収益を叩き出しています。

それっぽいデザイン

創業当時の本業は中小企業向けの小口融資プログラムの担当者

2012年、当時23歳だった創業者のAdamは中小企業向けの小口融資プログラムの担当をしており、融資を希望する起業家に財務予測の提出を求めていました。

その年に、Turbotax(freeeみたいな確定申告をするソフトウェア)で税金を納めていた時にふと気づきます。

「どうして財務予測を作成するためのTurbotaxがないんだ」と。

このひらめきを実行に移すために弟へ電話する

アダムからすると「これは億万長者になれるでい!」と思ったのでしょう、すぐに独学でソフトウェア開発をしていた弟に電話しました。

「財務予測を作成サポートするウェブアプリ作れない?」

「出来らあっ!」と言ったかは定かではありませんが、これがきっかけとなってProjectionHubはスタートしました。

ひらめきを逃さないのは大事だし、すぐ動くのはとても良い

普通の人であれば、日々の不満や疑問を追求することはありません。そこまで暇じゃないので。

日々のタスクに追われてしまうし、ふと思いついたアイデアもSNSで時間をつぶしているうちに忘れてしまうのです。

日常のひらめきを逃さないようにするためには、常にアンテナを張っておく必要があります。恐らくAdamは今の仕事が退屈で面倒だったので起業したいなぁと考えていたのでしょう。

だからこそひらめきを逃さず、すぐさま弟に電話して行動を始めたのです。

プロトタイプ開発までのプロセス

最終的な目標はウェブアプリだったのですが、まずはじめにエクセルで財務予測のテンプレートを作成。

そして出来上がったテンプレートをウェブアプリへと変換していく。

この順番でプロトタイプ開発を進めていきました。

当時17歳だった弟のBrandonは専門的なソフトウェア開発をしたことが無く、フレームワークやツールを使用せずにゼロから構築していきました。ツライ。

※全然関係ないんですけど兄がAdam(A)で弟がBrandon(B)って日本で言う一郎・次郎みたいな感じなんですかね?知ってる人コメントで教えてもらえればうれしいです。

【重要】知っとけばめちゃくちゃ生産性が上がるのに…ということは頻繁になる

知っていればめちゃくちゃ効率が良くなる情報というのは世の中に溢れています。

今回のケーススタディでは開発フレームワークやツールを知らなかったことで少し遠回りしたことになります。

しかし、それでいいんです。行動するまで生産性はゼロです。「最高の生産性」という有るかも分からない概念を求めて永遠に情報を求めるのは愚の骨頂。

「あいつ効率悪くね?ダサ…」と思われるのが恥ずかしいのかもしれません。しかし、ダサい姿を周囲に見せることで、「こっちの方が効率良いぞ」と教えてくれる人が現れます。本当に。

なので、最初の内はひたすら行動していきましょう。

最高効率を求めていいのは情報が整理されているゲームだけにしてください。スモールビジネス、事業において最高効率はUMAのようなものです。

最高効率を求める姿をエンタメとして傍から楽しむのは良いですが、自分が追い求めるものではありません。

”最高効率”はこんな感じ

2,000ドル未満で初期のサービスが開発完了

創業者Adamによると初期のアプリの開発費用は2,000ドル未満、Brandonが百時間以上コードを書き続けて完成したようです。

正直、自分で作ってるのに2,000ドルかかるかな?と思ったのですが、Brandonにお小遣いをあげていたのでしょう。

そうして、プロトタイプが完成し数人の有料ユーザーとMVP※が完成した後の2014年初頭にテイラー大学のビジネスプランコンテストに参加しました。

そこでProjectionHubは見事1位と7,000ドルの賞金を獲得しました。

コンテストでピッチしている創業者兄弟

MVP(Minimum Viable Product)開発について

※MVP(Minimum Viable Product):
実用最小限のプロダクトのこと。
コアとなる機能をローコスト・ハイスピードで作り上げるのが重要。

実用最小限のプロダクト(MVP)という考えはスモールビジネスだけでなくスタートアップにおいても重要です。

MVPを説明するときに下の画像がよく使われます。

モビリティのMVP。上はMVPとして適していない

たとえば徒歩しか移動手段がない時代に「歩かずに済む移動手段があれば売れるのでは?」という仮説を検証するとしましょう。

ダメな例

まず自動車のタイヤだけを開発します。

この時点で顧客に見せても「で、何を判断すればいいの?」としか思われません。

次にタイヤをシャフトでつなぎます。まだ動かすことはできません。顧客からの反応は全く変わりません。

続く3でボディを付けました。まだハンドルも屋根もなく動く状態ではありません。顧客はそろそろ飽きています。「いつまで待てばいいの?」

そして4でエンジン・ハンドルが取り付けられ、ようやく動くようになりました。

顧客の反応はどうでしょう?

よかった、反応は上々なようです。これまで費やした時間とお金を無駄にしなくて済みそうです。

これが、ダメな例です。最終的なプロダクト(自動車)が完成するまで顧客の反応を見ることができず「歩かずに済む移動手段」というコンセプトを検証できるのは最後の最後、取り返しのつかない時点になってからです。

偶々反応が良くて助かりましたが、現実では競合が存在しており、競合が正しいMVPを実践していれば恐らくこの企業はつぶれていたでしょう。

良い例

モビリティのMVP。下側が正しいMVP

正しい例では、まずはじめに「スケボー」を開発しています。

素早く「歩かずに済む移動手段」というコンセプトを検証したところ、顧客から「うーん。なんか行きたい方向に進まないなぁ」とのフィードバックがありました。

続く2ではフィードバックを参考にハンドルを付けて「キックボード」を開発しました。顧客は1の時よりも満足していますが、「うーん、思ったよりも楽じゃないな」というフィードバックを貰いました。

そして効率よく移動できるように「自転車」を開発します。顧客の反応はあまり変わりません。どうやら自動で動けるようになりたいらしい。

4の段階で「バイク」が誕生しました。顧客は満足しています。「ナニコレ凄い!ひねるだけで進むなんて神かよ!」

そして、4でも満足しない「安定性に欠ける」という顧客が居たので四輪で動く「自動車」を作りました。顧客はこれ以上ないほど喜んでいます。

これが、正しいMVPです。

「歩かずに済む移動手段」というコンセプトを検証するのに最小限のプロダクトは「スケボー」です。タイヤではありません。

この企業は素早く顧客の反応を見ながら開発を進めることができたので顧客を育成しながらプロダクトを洗練させています。1~4までの間も多少の利益は生み出せるでしょう。

このように正しいMVPというのは「検証したいコンセプト(仮説)」を満たすように作るべきです。

【重要】全てのビジネスは仮説検証が必要である

これまでのケーススタディでも「仮説検証」が上手な企業は成功しています

特に素晴らしかったのは「謎解きビジネス」「二日酔い対策サプリ事業」の事業。これらの商品開発前にコンセプトを検証しました。めちゃくちゃ素晴らしいです。

この時点で負けるわけがない勝負を挑んでいるのです。

他にも「ネタ事業なのに月商250万円」や、「カラフルな地図」「おばあちゃんのアダルトグッズ事業」「アジアの伝統衣装をウェディングに」の事例も仮説検証を素早く行っています。

起業において最も重要なポイントは小さく、素早く仮説を検証することです。

ほとんどすべてのビジネスは何かしらの仮説の元に成り立っています。この仮説を検証するためにMVPが存在しています。確かに、上で紹介したケーススタディのように商品開発前に顧客の反応を見ることもできます。しかし、MVPがあれば顧客の反応をよりリアルに観察できるのです。

ProjectionHubはこうすればもっと良かった。

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