正攻法でボロ儲けできるサブスク型スクール事業のつくり方~相性の悪い業態で客単価を6.4倍にするビジネス設計
2021年10月、定期購読マガジン「スモールビジネス大全」が始まりました。早いもので創刊からもうすぐ1年が経とうとしています。
定期購読マガジンというサブスクリプションモデルの事業を約1年間運営してきたこともあり、サブスクというビジネスモデルの酸いも甘いも体感してきました。
本日の記事では以下の内容を解説していきます。
事業者から見たサブスクリプションモデルのメリット・デメリット
スクール事業がサブスクに向かない理由
成功しているビジネス系オンラインサロン・スクールから学ぶ、サブスクで成功するための条件
ビジネス系オンラインスクール、買い切り型・サブスク型どちらにすべき?
既存の成功例とは違う形でサブスク型オンラインスクールで成功するやり方
顧客単価を6.4倍にするビジネス設計
など、面白い内容です。
正直、詰め込み過ぎた感もありますので最後にある【理解度クイズ】を行って分かったつもりになるのを防ぎましょう。
大前提:サブスク=○○し放題モデルではない
本文に入る前に説明しておきますが、サブスクリプションモデル=○○し放題モデルではありません。
サブスクリプションモデルと言えばAmazon Prime VideoやNetflix、Huluなどの動画見放題サービスやSpotifyやAmazon Musicなどの音楽聴き放題サービスなどが有名ですが、それ以外にも月額や年払いで商品などを定期購買するモデルの事もサブスクリプションモデルと呼びます。
事業者から見たサブスクリプションモデル
大前提として、基本的にサブスクモデルは顧客優先のビジネスモデルと言えます。稀に顧客の方向を向いてないサブスク事業もありますが、そんな事業は例外なくうまく行っていません。
しかし、あなたは知っているはずです。いくらお金持ちが「売上はお客様に感謝頂いた量の事なんだよ」と嘯こうが、経営者は自社のメリットも考えているということを。
顧客のメリットだけを考えてサブスクモデルを提供するわけがないんです。
世の中にサブスクモデルの事業が増えているということは、それだけ儲かっている事業があることに他なりません。では、事業者から見たサブスクモデルのメリットとはなんでしょう?
事業者から見たサブスクモデルのメリット
サブスクモデルであれば、一度契約が成立すればユーザーが離れていかない限り、売上が立ち続けます。言葉を選ばず言うと「解約さえされなければ定期的にチャリンチャリンお金が儲かる」ビジネスがサブスク事業です。
事業主からすると、「新規獲得数>解約数」の式が維持され続けている限り、売上は増加していきますし、データが蓄積されてくれば「この顧客は今後1年間でどの程度の売上をもたらすか?」なども予測することができるようになります。
予測ができるとどうなるか?→投資が積極的にできるようになる。例えば広告を考えてみてください。Facebook広告で獲得したユーザーが今後1年間で4.8万円(月4千円)の売上をもたらすことが予測できていれば、「どの程度の積極性をもって広告費に投入するか?」を選ぶことができるのです。
「よし、今はキャッシュも十分あり、ユーザー獲得が何よりも大事なフェーズだから10か月での回収を想定して顧客獲得単価(CPA)4万円までOKだ!」と、回収期間を長くしてでもユーザー獲得を優先するのか?
「まだキャッシュも安定していないし、できるだけ早く回収したいからCPAは1万円にしておこう。」と、回収期間を短く、手元の資金を増やしていくのか?
それぞれの経営判断によって、アクセルの踏み具合を調整することができます。もし、データが無く正確な見積もりができていなければ「今、どのくらいの広告費までは許容できるのか?」、「何か月で回収できるのか?」などを把握しないまま投資をしなければなりません。※
はっきり言って、そんな投資はもはや投資ではありません。博打です。断言しますが、計測もしないまま「このくらいで売れるかな?利益が出るかな?」と希望を抱いて広告を出したとしても回収できることはありません。
親指を立てながら溶鉱炉に沈んでいく事業が増えるだけです。
また、ユーザーとの関係性が構築されるため、ユーザーの利用状況に応じてサービスの改善ができます。サービス改善により、ユーザーから「このサービスはクソだ!詐欺だ!」とヘイトを集めずに済みますし、より多くのユーザーに利用される機会が得られるのです。
顧客からみたサブスクの良いところ「費用を抑えられる」は、事業者から見た場合、顧客の新規獲得のハードルを下げるというメリットもあるでしょう。
実際に運営している立場からしてみても、これらサブスクビジネスのメリットは感じることができます。
しかし世の中を見まわしたとき、全てのサービスにおいてサブスクモデルが覇権を握っているか?と言われるとそんなことはありません。
牛丼は月額制の食べ放題になりませんし、通い放題の整体がそこら中に溢れていることもありません。
「飲食やサービス業は定額使い放題と相性が悪いからだろ。」という考える方もいらっしゃるでしょうが、ネット上を見回せばいまだに1講座30万円以上もする売切り型の動画商材などがドンドン売れています。
安価にコピーできるデジタルコンテンツですらサブスクリプション化されていないのです。それはなぜか?
当然ですが、サブスクモデルにはデメリットがあるからですよね。
事業者から見たサブスクモデルのデメリット
「月1万円のサービスが1000人のユーザーを獲得できればそれだけで月商1千万円、年商は1億円を超える!利益率90%、マルチプル10倍で10.8億円でM&Aだ!税金も約20%で済むから手残りも凄い!後は資産運用で暮らしていくぞ!」
なんて物語を考えるのは大変たのしいことでしょう。
しかし、地に足を突けて考えてみると、色々気になってきますね。まずは集客です。1000人のユーザーをどこから集めるのでしょう?
広告でしょうか?しかし、サービス開始初期はデータも溜まっていないため中々積極的に広告投資をすることは難しいですよね。大手のように広告費がドンドン投入できる資本的背景があれば別ですけど……。
SNSのフォロワーから集める?いいですね。毎月1万円をポンと払えるような方たちばかりがあなたをフォローしているのでしょうか?
口コミで地道に増やしていくのでしょうか?確かに、最初に数人だけ頑張って集客し、評判によって広がるほど素晴らしいことはないですよね。では、初期のユーザーが少ない時期を少ない収益で乗り越える覚悟はあるのでしょうか?
また、先ほど挙げたヘイトが溜まらない・多くのユーザーを獲得する機会があるといったサービスの改善によるメリットを考えてみましょう。
これは裏を返すと「サービスを改善し続けていかなければいけない」ということにもなります。売切り型のビジネスであれば、購入者が完全に満足しなくても「悪い評判さえ広まらなければいいや」というスタンスの事業者も居ます。
しかし、サブスクモデルであればそんなことは通用しません。顧客が満足しなければ「はい、解約。」と離脱するだけです。
サブスクモデルの金銭的な旨味は「継続してくれることによるLTVの増加」に起因することが大きいのです。解約率が高くなってしまえば、「結局売切り型のビジネスモデルの方が儲かる。」なんてことが容易に起こりえるのです。
え?なになに、「解約するためのフローを複雑にしているから大丈夫。」ですって?
…
…
…
稀に、本当に極稀に、解約までの道のりを長くして数か月、契約期間を延そうとするサービスがありませんが、害悪です。顧客からの信頼を一瞬で失う最悪の施策でしかありません。
ポチ。っと解約できるようにしておくべきです。自分のプロダクトが及ばなかっただけなのに顧客に負担を強いるようなことをしてはいけません。
話がそれてしまいましたが、サブスクリプションモデルにもデメリットがあるのが分かっていただけたでしょう。
上では、「解約率が高くなると売切り型の方が儲かる」と述べましたが、解約率が高くなくとも売切り型のビジネスモデルの方が儲かる事例というのが存在します。
意外かもしれませんが、スキルの習得を目的としたスクール系事業というのはサブスクリプションモデルに向いていません。そのことについては次章説明します。
顧客が○○してしまうスクール系事業はサブスクに向いていない
顧客が「卒業」してしまう事業は本質的にサブスクモデルに不向きです。
例えば、動画編集スクールを考えましょう。スクールに通う顧客の直接的な目的は「動画編集スキルを身に付けること」です。
つまり、スキルを身に付けてしまえば卒業してしまうのです。もっと言うと、スキルを身に付けさせる系のスクール事業では"短期間で"スキルが身に付くことが顧客価値につながります。
ただでさえ卒業してしまうのに、その上さらに”短期間”で習得するのが顧客価値につながるんです。
前章では、サブスクモデルの(金銭的な)旨味は継続によるLTVの増加によるところが大きいという話をしました。言い換えると、LTVの増加が見込めない事業内容である場合、サブスク化するべきではないということです。
そう。つまり、スキルを身に付けさせることを目的としたスクール系事業は、サブスクモデルに向いていないのです。
事実、オンライン完結型のプログラミングスクールを考えてみると分かると思いますが、ほとんどが数十万円以上かかる売切り型で運営されていますよね。
学習塾がサブスクなのに成功している2つの理由
「あれ、学習塾はサブスクモデルだけど相当成功しているなぁ。」
たしかに、おっしゃる通り学習塾も(リアルな意味での)卒業という仕組みが組み込まれています。しかし、学習塾が目的としているのは、定期考査で点数をよくすること、更に言えば良い学校に進学すること、です。
決して「微分積分スキルを身に付けさせる」ためのものではないのです。
そして、日本の制度上、進学できるタイミングが決まっている以上は、どれだけ個人が努力しようと「高校1年生で東大に合格したから塾を辞める!」なんてことはできないのです。
だからこそ、スクール系事業のように”短期間で”身に付けられることは普通の学習塾には求められません。
「短期間で難関大学に受かる受験英語が身に付く!」などのサービスもありますが、そういったサービスはサブスクリプションモデルで提供されていません。単発の購入型になっています。
学習塾がサブスクモデルとして成功しているのは「顧客はスキルを身に付けることを目的としていない」、「最終目的を達成するタイミング(受験)が決められている」という二点によるものなのです。
サブスクでも成功しているオンラインスクール(サロン)は存在する
ここまでの話を聞いて、「なるほど、基本的にスクール系事業はサブスクが向いていないことはわかったし、学習塾がサブスクで成功する理由も分かった。」と思っていただけたでしょう。
しかし、世の中を見回してみるとサブスクリプションモデルでうまく行っているオンラインスクール・サロンがあるのも事実です。著名人が開催しているものを除いても
人生逃げ切りサロン(約4,700名、月額2,480円)
StockSunSalon(約1,900名、月額4,400円)
UR UNIVERSITY(約13,000名、月額8,980円)
など。
確かにこれらのオンラインサロン・スクールは一見すると”スキルの習得”を目的としたスクール系事業のように思えるかもしれません。しかし、成功しているオンラインサロン・スクールは「卒業しない仕組み」を設けているのです。
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