LNFSチームを対象とした位置情報システム(LPS)を用いた研究
研究紹介シリーズ。今回は、世界最高峰と言われているスペインフットサルリーグ1部のチームを対象にした研究です。
Carlos Serrano, Jose Luis Felipe, Jorge Garcia-Unanue, Enrique Ibañez, Enrique Hernando, Leonor Gallardo and Javier Sanchez-Sanchez. (2020) Local Positioning System Analysis of Physical Demands during Official Matches in the Spanish Futsal League. Sensors 20(17):4860
https://www.researchgate.net/publication/343959532_Local_Positioning_System_Analysis_of_Physical_Demands_during_Official_Matches_in_the_Spanish_Futsal_League
この研究は、
・ 対象が1チームだけ(倫理的配慮からチーム名は伏せられている。)
という点を考慮すると、これがLNFS全ての実力とは言い切れませんが、実際の試合をリアルタイムで測定した研究として、革新的ですね。(対象チームはバルサっぽいけど...)
ちなみにこの研究で、用いられたLPS(Local Positioning System)は、屋内用の位置情報システムです。ベストに装着するのは、ほかのウェアラブルデバイスと同じですが、サッカーやラグビーの研究で用いられているGPSとは違うので注意してください。大事なことなのでもう一度言います(笑)。GPSとは別物です。(別の機会に解説します)
以下、内容を少しだけ紹介。ざっくりとした訳なので、研究する場合はしっかりと読み込んでください。
研究方法
1)研究対象
2019-2020シーズンLNFS1部のチームにおけるホームゲーム10試合を対象とした。
対象選手は14名。1試合につき、少なくとも1分以上出場した選手を対象とした。(ゴレイロは含まれていない)
※本文中のポジション
・Pivot:ピヴォ(←わかるって)
・Winger:アラ
・Defender:フィクソ(ベッキ)
2)使用器材
トラッキングシステムはWIMU PRO LPSを使用。サンプリング周波数は18Hz(と思われる)。
受信器(アンテナ※)については、Figure 1.の位置に設置します。(これがGPSと一番異なるところ)
※ 受信器ではなくて、発信機ですね(2021/5/27修正)。
結果
結果はTable1の通りとなります。
用語は、
・Relative Distance (m/min):単位出場時間当たりの走行距離
・Explosive Distance (m/min):1.12m/s^2以上の加速を行った距離
(単位出場時間当たり)
・HIBD (m/min):2m/s^2の減速を行った距離
(単位出場時間当たり)
・HSR (m/min):15.1km/h以上の速度で走った距離
(単位出場時間当たり)
・zone1:ウォーキングと低強度のランニング(0-10 km/h)
・zone2:中強度のランニング(10.1-15 km/h)
・zone3:高強度ランニング(15.1-18 km/h)
・zone4:スプリント(> 18.1 km/h)
・ACC:加速 (m/s^2)
・DEC:減速 (m/s^2)
・V:速度 (km/h)
前後半の違いによる有意差は見られなかったようですが、ポジションの違いによる有意差は何点か見られるようです。
考察
詳細は本文を読み込んで欲しいのですが、走行距離に関しては、先行研究よりも小さい値が出ているとのこと。ウェアラブルデバイスのサンプリング周波数の影響もあるのですが(別の機会に解説します)、もうひとつ、選手の出場時間が均等になったためと筆者は考えています。
まとめ
LPSシステムは、今のところ研究室の予算だけでは賄えないくらい高額です。他の屋内競技と合わせて、予算を組んだり、補助金(科研費など)を利用するのが良いでしょう。
逆にこのテーマをやりたい方は、LPSシステムを持っている、または研究している研究室を探して入ったほうが話は早いと思います。
大学生チームやFリーグのチームと比較すると何が見えてくるのか?とても興味深くありますね。