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映画日誌’21-27:シンプルな情熱

trailer:

introduction:

フランスの作家アニー・エルノーの自伝的なベストセラー小説をもとに、妻がいる年下のロシア人外交官との恋に身を焦がす女性教師を描いた恋愛ドラマ。レバノン出身のダニエル・アービッド監督が女性ならではの視点で、原作のスピリットを繊細かつ大胆に表現し、2020年カンヌ国際映画祭公式作品に選出された。『若い女』でリュミエール賞有望女優賞を受賞したレティシア・ドッシュが主演を務め、バレエ界の反逆者にして孤高の天才ダンサー、俳優としても注目を集めるセルゲイ・ポルーニンが恋人役を演じる。(2020年 フランス,ベルギー)

story:

パリの大学で文学を教えるエレーヌは、あるパーティでロシア大使館に勤める外交官アレクサンドルと出会う。エレーヌは彼のミステリアスな魅力に強く惹かれ、瞬く間に恋に落ちてしまう。今までと変わらない生活を送りながらも、自宅やホテルで逢瀬を重ね、心はすべてアレクサンドルにとらわれていた。年下で気まぐれ、既婚者でもあるアレクサンドルからの電話をひたすら待ちわびる日々を過ごすエレーヌだったが...

review:

「去年の9月から何もせず、ある男性を待ち続けた」と追想するエレーヌを嘲笑うことができる人は、恋に出会っていないのかもしれない。恋は人を愚か者にする。そこに理屈はない。ただそれだけのことを映し出した映画だった。年下男性との愛と性の実体験を赤裸々に綴り、アムールの国フランスの女性たちの深い共感を呼び、大ベストセラーを記録したアニー・エルノーの「シンプルな情熱」が原作だ。

恋に身をやつしたりするのが年取るごとにしんどくなり、もう面倒臭いからこのまま一人で平穏に暮らして恙無く人生が終わってくれたらいいや、と思っていた私ですら、若い頃には抗えない思いに身を焦がし、愚かしくひとつの思いに囚われていたこともあったような気がする。若気の至りとでも言うのか、そういう場合の相手は大抵ロクでもない部分があったりする。今思えば何故と思うけれど、そういうものだ。自分の思い通りにいかないから、囚われるのだ。

「世界一優雅な野獣」セルゲイ・ポルーニン(が演じるアレクサンドル)の魅力に囚われて自分を見失ったエレーヌは、実に愚かしい。子育てすら疎かになるその姿に共感できないばかりか、苛立つ人もいるだろう。でも、自分の「シンプルな情熱」の忠実な下僕となり、やがて解放されながらも生々しい「世界」と結びつくことができたエレーヌの姿は、どこか清々しい。その心情の移ろいや、感情の機微がリアルに描写されていたように思う。

Flying Pickets の Only You が甘い余韻を残し、まるでひとつの恋が終わったような感覚に陥る。と同時に、恋の高揚感とか幸福感とかヒリヒリした痛みだとか、そういうものに振り回されるのはもう2度とゴメンだと思ったりする。そして最後に、「世界一優雅な野獣」セルゲイ・ポルーニン が惜しげもなくモザイク無しで裸体を晒しており、白っ!てか皮!って思ったことと、彼の首にぶら下がってるコインが五円玉なのかどうかが気になって仕方がなかったことを記しておく。

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