映画日誌’23-24:帰れない山
trailer:
introduction:
イタリアの作家パオロ・コニェッティの世界的ベストセラー小説を映画化し、第75回カンヌ国際映画祭で審査員賞に輝いた人間ドラマ。監督・脚本は『ビューティフル・ボーイ』などのフェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲンと『オーバー・ザ・ブルースカイ』の脚本を手がけたシャルロッテ・ファンデルメールシュ。山麓の小さな村を舞台に、都会育ちの少年と牛飼の少年の友情と成長を描く。『マーティン・エデン』などのルカ・マリネッリのほか、アレッサンドロ・ボルギらイタリア映画界の実力派俳優たちが出演する。(2022年 イタリア/ベルギー/フランス)
story:
北イタリア、モンテ・ローザ山麓の小さな村。山を愛する両親と休暇を過ごすためやってきた都会育ちの繊細な少年ピエトロは、同じ年で牛飼いのブルーノと出会う。まるで対照的な2人だが、一緒に大自然の中を駆け巡り共に過ごすうちに友情で結ばれていく。しかし思春期を迎えたピエトロは父親に反抗し、家族や山から距離を置いてしまう。そして時は流れ、父の訃報を受け村を訪れたピエトロは、ブルーノと再会を果たす。
review:
世界39言語に翻訳され、イタリア文学の最高峰・ストレーガ賞に輝いたパオロ・コニェッティの国際的ベストセラー小説を映像化。北イタリア、モンテ・ローザ山麓のアオスタ渓谷を中心に、トリノ、ヒマラヤ山脈で撮影を敢行し、『TITANE/チタン』の撮影監督ルーベン・インペンスによる圧倒的な映像美とカメラワークで豊かな自然の四季の移ろい、青年2人の友情と成長を映し出す。フェリックス・ヴァン・ヒュルーニンゲン監督は前作の『ビューティフル・ボーイ』がとてもよかったなぁ。
いい映画なんだろうな。いい映画なんだと思う。しかしあんまり好みではなかった。まあまあ長尺なんだが、とにかく余白が多過ぎて冗長。それにしてもシネスイッチ銀座のもわっと重たい空気は何なの・・・劇場内はややヒンヤリするくらいがちょうど良いんだが、シネスイッチは結構な確率で暑く、これが眠気を誘う。寝落ちこそしなかったが、作品のスローなテンポも相俟ってウトウトしてしまい、すんごい疲れた。
睡魔に負けた者の説得力の無さを棚に上げて何度でも言うが、素晴らしい物語だと思う。ピエトロと父、ピエトロの父とブルーノの関係が丁寧に紡がれる。そこでしか生きられず、山に根を下ろしたブルーノと、自分の居場所を探し続け、根無草のようなピエトロ。ピエトロが「8つの山すべてに登った者と、須弥山に登った者、どちらがより多くのことを学んだか?」という問いを投げるシーンがある。世界の中心には最も高い山、須弥山(スメール山)があり、その周りを海、そして 8 つの山に囲まれているという古代インドの世界観だ。
このエピソードは、ピエトロとブルーノの対照的な生き方を象徴する。ピエトロはブルーノと出会ったことで世界を知ったが、ブルーノはピエトロと出会ったことで山で生きることを選ぶことになる。正解はない。どちらが幸せということもないし、どちらが賢いということもない。そして時間は執拗に前に進み、知らず知らずのうちに失われるものがあり、それを取り戻すことはできない。私が睡魔に負けた瞬間を取り戻せないように。では、自分はどう生きるのか?ということを語りかけられているような気がした。それにしても、長い144分だった・・・。
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