映画日誌’21-17:SNS 少女たちの10日間
trailer:
introduction:
幼い顔立ちをした3名の成人女性が12歳の設定でSNSに登録し、“友達募集”をしたら何が起こるかを徹底検証したドキュメンタリー。児童に対する性的搾取、現代の子どもたちが直面する危険を映し出したリアリティショーは、SNSと常に接しているジェネレーションZ世代やその親たちに恐怖と共に迎えられ、本国チェコで大ヒットを記録した。監督はチェコで活躍するドキュメンタリー作家のバルボラ・ハルポヴァーとヴィート・クルサーク。(2020年 チェコ)
story:
巨大な撮影スタジオに作られた3つの子ども部屋に、幼い顔立ちをした3名の成人女優が集められた。彼女たちは偽のSNSアカウントで12歳のふりをし、自分からは連絡しない、12歳であることを明確に告げる、誘惑や挑発はしないといったいくつかのルールのもと友達募集をする。精神科医、性科学者、弁護士や警備員など専門家の万全なバックアップやアフターケアを用意しながら撮影を続けること10日間。なんと2,458名もの成人男性が彼女たちにコンタクトを取り、卑猥な誘いを仕掛けてきたのである。彼らの未成年に対する容赦ない欲望の行動は徐々にエスカレートし...。
review:
12歳の少女がSNSで友人を募集するとどうなるか、という実験的なドキュメンタリーである。コンタクトを取ってきた男性の数は2,458人、未成年に下心と欲情を剥き出しにするおっさんのニヤケ顔とだらしない裸体が延々と映し出される。目元と口元が見える絶妙なモザイクで本当に気持ち悪いのである。じいさんが12歳に向かって「ちょっと年上すぎるかな」じゃねぇ〜よ〜。脱力。会話中の咀嚼音を強調したり生理的に気持ち悪い演出も相まって、嫌悪感だけが募っていく。
好奇心で見知らぬ大人とチャットし始めた子どもを、どんな風に言いくるめて心の隙間につけこんでいくのか、言葉巧みに追い詰めていく手口をもう少し掘り下げてほしかったのが正直なところ。ただ、監督がインタビューで答えている通り、想像していたよりずっと、大部分の男性が本能的で直情的で攻撃的だったのかもしれない。
このプロジェクトは多くの余白ある実験から生まれています。どんな行動が撮影されるか、一体どこまで行けるのか、撮影前は分かりませんでした。企画書の段階では、これらの男性を犯罪者として扱うのではなく、何よりもまず彼らが子どもたちを巧みに操ろうとするその手法や技術を明らかにし、社会的な議論へと発展させたいという目的でした。しかし、実際にカメラに映ったのは、恐喝と脅迫でした。数名の男性たちは幼児性愛や獣姦もののポルノ等を送り付けてきました。そこで、これは私たちのプロジェクトだけで済まされる問題ではないと判断しました。映像を確認した警察側は完全なプロでした。本作が性的搾取者に向けての強力な抑止力になるであろうと歓迎してくれました。——ヴィート・クルサーク監督
しかし、「12歳の少女」は役者が演じていると明らかにされているが、それ以外の登場人物はどこまでリアルなのか怪しいし、どこまでがフェイクなのか分からない。1人だけまともな青年が出てきて、少女を演じている役者も観客もホッとするシーンがあるのだが、ちょっとわざとらしいのだ。学校で配られるプリントに書いてありそうな紋切り型のセリフに、創作を感じる。下心はないんだとしても、見知らぬ12歳とおしゃべりしたがる時点で違和感しかない。
このドキュメンタリーに出てくるような、チャットし始めてすぐ自分の持ち物を晒したりする危険人物だらけなら、いくら幼い少女であろうと危険を察知するであろうし、身の守りようもあるだろう。一番恐ろしいのは、いい人のフリをして近づいてくる人物に絡めとられること。どうせ創作を入れるなら、「いい人もいますよ!」なんて中途半端なフォローじゃなくて、そういう人物であっても油断してはならないという警鐘を鳴らすべきだったんじゃないか。
とは言え、本能的で直情的で攻撃的などうしようもない大人がゴマンといるってことを知らしめるには、意義のあるドキュメンタリーであると、かつて少女だった私は思う。少女だった頃、気持ち悪い大人がいっぱいいた。ニヤニヤしながら声をかけてきたり、自分の持ち物を見せてきたり、後をつけてきたり。あんなにたくさんいたのに、どうして大人になるとそれを忘れてしまうのだろう。そしてインターネットが普及した現代は、もっとずっと接点が多いのだ。このおぞましい現実の目撃者になる価値はあるだろう。おすすめはしないけど・・・。
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