映画日誌’21- 37:スイング・ステート
trailer:
introduction:
ブラッド・ピット率いるPLAN Bが制作する、選挙エンタテインメントコメディ。米大統領選でトランプに敗北した民主党選挙参謀が、起死回生を狙い大統領選挙の勝敗の鍵を握る激戦州「スイング・ステート」の町長選挙で大波乱を巻き起こす。監督・脚本は、16年間にわたりコメディ・セントラルの「ザ・デイリー・ショー」の司会を務め、アカデミー賞授賞式でも2度司会を担当したジョン・スチュワート。『フォックスキャッチャー』などのスティーヴ・カレル、アカデミー賞助演男優賞受賞の名優クリス・クーパー、『オデッセイ』『ブレードランナー2049』などのマッケンジー・デイヴィスが出演する。(2020年 アメリカ)
story:
アメリカ大統領選挙でヒラリー・クリントンが敗北した民主党の選挙参謀ゲイリー・ジマーは打ちのめされていたが、ウィスコンシン州の小さな町役場で不法移民のために立ち上がる退役軍人ジャック・ヘイスティングス大佐のYouTube動画を見て、彼こそが中西部の農村で民主党の票を取り戻す秘策だと確信。ディアラケンへと赴き、大佐に民主党からの町長選出馬を要請する。大佐の娘ダイアナや住民のボランティアたちと地道な選挙活動をスタートさせると、共和党は対立候補の現役町長ブラウンの選挙参謀としてゲイリーの宿敵フェイス・ブルースターを送り込む。小さな町の町長選をめぐって、ゲイリー対フェイス、民主党対共和党の巨額を投じた代理戦争の幕が切って落とされた。
review:
アメリカでは19世紀後半以降、共和党と民主党が二大政党として圧倒的な力を維持してきた。近現代の大統領は、いずれかの党から輩出されてきた。「スイングステート(Swing States)」とは、アメリカ大統領選の際に共和党または民主党が拮抗し、選挙毎に結果が変わる州のことなんだそうだ。勝敗の鍵を握っている州とも言える。
共和党は保守、中西部から南部、農業地帯の敬虔なキリスト教者や白人、労働者からの支持を集め、歴代大統領にはブッシュやトランプがいる。民主党はリベラル、東海岸や西海岸、大都市の富裕層や高学歴層、マイノリティの支持を集め、歴代大統領にはオバマやクリントンがいる。
2016年11月8日、トランプ氏がアメリカの第45代大統領に当選し、全米どころか世界に激震が走ったことは記憶に新しい。これは、トランプにまさかの大敗を喫した民主党ヒラリー・クリントン陣営の選挙参謀ゲイリーが、起死回生を狙ってスイング・ステートのウィスコンシンを足掛かりに地盤を広げるべく、田舎町ディアラケンの町長選挙に乗り込む物語だ。
到着した翌日には街じゅうに自分のことが知れ渡っていたりWi-Fiがなかったり、田舎町ならではの洗礼を受けながらもゲイリーはあの手この手でヒト・モノ・カネと情報を集め、共和党が送り込んだ宿敵、トランプの選挙参謀フェイス・ブルースターを相手に選挙戦を闘う。参謀ってサイコパスじゃないと無理だな。
架空の小さな田舎町の選挙が民主党と共和党の代理戦争になっていくストーリーをコミカルに描き、アメリカの政治システムを滑稽かつ辛辣に批判している。まさかの結末にゲイリーじゃなくても狐につままれたような気分になったが、アメリカの選挙の仕組みが解りやすく描かれており、面白かった。上映館が多くないのが残念だが、関心があれば観る価値あり。