映画日誌’21-56:キングスマン:ファースト・エージェント
trailer:
introduction:
スタイリッシュな英国紳士が過激なアクションを繰り広げる人気スパイアクション『キングスマン』シリーズの第3弾。第1次世界大戦を背景に、世界最強のスパイ組織「キングスマン」誕生の秘話を描く。監督、脚本、製作はシリーズ全作を手がけるマシュー・ボーン。『シンドラーのリスト』『イングリッシュ・ペイシェント』や『ハリー・ポッター』シリーズでも知られる英国の名優レイフ・ファインズ、『ブルックリンの片隅で』などのハリス・ディキンソン、個性派俳優のリス・エバンスらが出演する。(2021年 アメリカ)
story:
表向きは高級紳士服テーラーだが、実体は世界最強のスパイ組織である”キングスマン”。国家に属さないこの秘密結社の最初の任務は、世界大戦を終わらせることだった——1914年。イギリス、ドイツ、ロシアといった大国間の陰謀が渦を巻き、第一次世界大戦勃発の危機が迫ろうとしていた。戦争を回避すべく、世界情勢を裏で操る闇の組織に立ち向かう英国貴族のオックスフォード公と息子コンラッドだったが、ロシアの怪僧ラスプーチンらが立ちはだかり...
review:
大ヒットスパイアクション、”キングスマン” の始まりの物語である。ジャンルの異なる映画を3本、ぎゅっと押し込めてダイジェストにしたような濃密さ。取り止めがなく、言い換えればとっ散らかっている。いくらなんでもエピソード盛り込みすぎだろ。が、何と言っても”キングスマン” の始まりの物語だからね、楽しかったし面白かったしね、いいよね。という気分になるから不思議。
舞台は20世紀初頭のイギリス。オーランド・オックスフォード公爵はイギリス陸軍大臣キッチナーに請われ、当時イギリス国王だったジョージ5世の相談に乗る。ジョージ5世はいとこである、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世との関係が悪化し、戦争へと発展しそうなことに頭を悩ませていた。
そう、イギリス国王ジョージ5世、ドイツ皇帝ヴィルヘルム2世、ロシア皇帝ニコライ2世の3人はイギリス女王ビクトリアの孫にあたり、いとこ同士。第一次世界大戦は親戚同士でケンカしていたというわけである。特に母親が姉妹であるジョージ5世とニコライ2世は見分けがつかないほど容姿が似ていたと言われ、今作ではトム・ホランダーが一人三役で演じており、ちょっとした見どころとなっている。
イギリス陸軍大臣キッチナーは実在の人物であり、また、第一次世界大戦のきっかけとなった「サラエボ事件」の主犯格ガブリロ・プリンツィプ、ドイツとフランスの二重スパイとして暗躍し高級娼婦でもあったマタ・ハリらが登場。史実に基づいたエピソードに ”キングスマン” 誕生秘話を絡めていくストーリーテリング、歴史好きにはたまらない内容に仕上がっている。
オックスフォード公爵の息子コンラッドが父の反対を押し切って陸軍に入隊するのだが、『ハクソー・リッジ』か『1917 命をかけた伝令』かよと思うほど生々しい前線の様子が描かれる。あまりにもシリアスな展開に、さっきまでとはちがう映画観てるような気分になる。おかしい、さっきまでラスプーチンで笑ってたのに・・・!
というか、記憶のほとんどがラスプーチン。実在の人物で、シベリア貧農の出身ながら、ロシア皇帝と皇后の絶大な信頼を得て宮廷で影響力を持ち、ロシア帝国の崩壊を招いたとされる怪僧である。胡散臭い異様な容姿と、ロマノフ家にうまく取り入ったことで貴族たちの嫉妬を買い、たいそう嫌われていたらしい。しかしその一方で、圧倒的な精力と立派なイチモツで貴婦人方の熱狂的な信仰を集めていたという。13インチ(33センチ)ですってよ奥さん。
この強烈なキャラクターを体現したリス・エバンス最高だったし、コサックダンスから殺人技を繰り出す戦闘シーンも最高だった。ラスプーチンが辿る運命もほぼ歴史で伝えられている通り、というのも憎い。てかこれ、史実なんかい!という驚きもひっくるめて面白かった。所々思いっきりCGですやん・・・という仕上がりと多少の中弛みは片目をつぶるとして、大胆なカメラワークもキレッキレでこれぞ ”キングスマン” 。高所恐怖症の方は覚悟して観るがよろし。